書評『キャッシュレス革命2020』

本書は電子決済化するメリットや現状と課題をあげ、東京オリンピック・パラリンピックに向け、キャッシュレス決済の促進を展望している。著者は野村総合研究所金融ソリューション事業部の宮居雅宣氏を含む、5名のキャッシュレス研究会である。この本を手に取ったのは、電子決済の利用を全面に押し出しており、そこまで急速に発展させる必要があるのか疑問に思ったためである。序章を含む全8章で構成され、キャッシュレス決済のメリットをあげながら今後の在り方について言及している。

序章から第二章までは決済の現状と課題について述べられている。現金は銀行にある「データ」として保存されているものを、ATMで引き出すことによって「現物」にする。そして各店舗で利用し売上金として再び「データ」になる。現物化することで、リスクや無駄なコストを発生させている。キャッシュレス決済は現金と違い透明性があるので、犯罪に巻き込まれにくく、紛失しても利用停止にすることができる。現金を持ち歩くのは日本人くらいで海外では電子決済が主流だ。電子決済は装置産業であるため、海外への遅れを取り戻すためにもインフラ整備と運用が最大の課題になるとしている。

第三章ではキャッシュレス化によって得られる効果についてまとめられている。2014年4月に鉄道やバスに乗車する際の、二重運賃を国土交通省が認可し運用が開始された。これにより端数分、IC決済の方が安い運賃が設定されるようになった。一円単位の価格設定が出来るようになったことのほかに、迅速性、経済性、安全性といった基本的メリットがあげられている。また応用編として、透明性、情報収集性、機動性、コントロール性、市場創造性、国際性といったメリットがあるとされている。

第四章では消費者心理について触れられている。消費者の心理は足し算型と引き算型の二つに分かれる。日本人は古くから「封筒管理」といわれる引き算型を好むため、カード決済には抵抗があったが、プリペイドカードの登場で決済の選択肢が広まった。

第五章では政府や行政の取り組みについて述べられている。税金や公共料金の徴収、生活保護費の支払い等をキャッシュレス化することによって、事務処理にかかるコストが削減され事業効率が上がる。マイナンバー制度を利用し安心・安全な国を目指している。

第六章では第五章までに述べてきた課題と解決策についてまとめている。可能性のある犯罪や取引の安全性を確保するための要素、また消費者トラブルで起こり得ることについて説明し、キャッシュレス決済を促進するべきであるとまとめている。

第七章では2020年キャッシュレス社会としてのあるべき姿をフィクションで語っている。一つ目はオリンピック観戦のために日本にやってきた外国人の例である。現金は持たずに入国し、ネット決済で列に並ぶことはない。お寺のお賽銭のみ現金で、近くにある海外カード対応のATMから日本円を少額引き出す。キャッシュレス化が進み、ストレスや不安を感じることなく快適に過ごすことが可能になった。二つ目は日本に住む四人家族の例である。家族カードで全員決済にはカードを利用している。ネット決済はトークン化や虹彩認証の導入で安心して利用できる。二つの例からキャッシュレス決済の必要性を提示し、今後更に推し進めていくべきだと締めている。

本書を読んで、キャッシュレス決済を促進するメリットや課題について理解することが出来た。観光立国を目指す日本は海外にも通用するよう、決済インフラを整備していくべきだと思う。しかし、筆者らの想定していたほど現状進んではいない。今後はキャッシュレス決済が進まない原因や解決策についてさらに深く調べていきたい。また、お賽銭の例であったような、守っていくべき現金の文化についても考えていきたい。

 

『キャッシュレス革命2020 電子決済がつくり出す新しい社会』「キャッシュレス革命2020」研究会(2014)日経BP社

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書評 「TRUST」

本書は「シェア」においてシェアリング・エコノミーの到来を予見し、タイムズ紙の世界を変える10のアイデアに選ばれ、2013年にはWEF(World Economic Forum)のヤング・グローバル・リーダーにも選ばれたレイチェル・ボッツマン氏によって書かれたものである。

著者は信頼とは「結果の予想であり、物事がうまくいく可能性が高いと期待すること」もしくは「既知のもの(確実なもの)と未知のもの(不確実なもの)のすき間を埋めること」と定義している。

第1章から第3章では信頼の変遷について説明している。産業革命が進展し、都市への人口集中が進むにつれて、全ての人と親密な付き合いをすることが物理的に不可能となった。そこで人々は契約や法律といった仕組み、企業ブランドなどの権威などを媒介し相手の信頼性を判断するようになった。このおかげで小さなコミュニティを超えた取引が可能になり「制度への信頼」が確立された。しかし近年金融危機を招いた金融機関やそれを防げなかった政府当局・専門家への不信の高まりや、パナマ文書に代表されるような権力を持つ人々の不正が明らかになってきたことで、制度そのものへの信頼が揺らいでいる。このような状況で生まれたのが多数の個人の経験や評判などの多様な情報を共有し、相互評価することによって、自分にとって未知の相手の信頼性を判断するという「分散された信頼」だ。

第4章から最終章までは「分散された信頼」の課題を2つ指摘している。1つ目は結果に対する責任と損害に対して補償する主体が曖昧な点だ。全くの他人同士が取引しようとする場合、彼らはサービスの提供者とユーザーをマッチングさせる仕組みを利用することが多いだろう。しかし、そうした仕組みを提供する企業は、自分たちはあくまで「場」を提供しているだけであり、そこで提供されるサービスの品質の保証や、そこで生じた損害に対する責任は、提供者が負うべきであると主張する。提供者が個人の場合、企業に比べて発生した損害を補償する能力が限定され、被害者が十分に救済されないことも考えられる。本書はレーティングの高いUberドライバーによって6人が殺害された「カラマズー事件」を例に挙げて、「場」を提供するという仕組みだけでは信頼の確立は不完全であると指摘している。

2つ目は「分散された信頼」を用いたサービスを提供する企業が社会的に影響力を持ちやすい点だ。分散された信頼」は、多数の個人によるレーティングで支えられているが、そのためのプラットフォームを構築できるのは、資金・人的リソースを持つ企業(CAFAやアリババ・テンセント)などの組織に限られる。だがその仕組はブラックボックスで、権力が特定企業に集中している。レーティングの重要性が増す以上、その仕組みがブラックボックス化することは、ユーザーに対して情報の非対称性を引き起こす。その結果特定企業がますます影響力を伸ばすためルール整備が急務であると締めている。

本書を読み、シェアリング・エコノミーの拡大に代表される社会変化に制度が追いついていないことがわかった。エアビーアンドビーに代表される「分散された信頼」をもとにしたサービスは便利であるが危険性の孕んでいる。その中で信用スコアは安全の不完全性を補完するような制度や仕組みになれると感じた。今後はシェアリングエコノミーの急拡大が進むアフリカの事例研究後、信用スコアが果たせる役割について調べる予定だ。

 

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書評 「WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?」

本書は2016年後半頃から北海道を拠点にブロックチェーン事業を手がけているベンチャー創業者の著者が、その経験と実践からブロックチェーンをビジネスの手段として捉え執筆したものである。多くのブロックチェーン関連書籍が仮想通貨を初めとした金融についての言及が多い中、本書は金融に縛られることなく、ブロックチェーンが既存産業にどのような影響を与えるのか、どのようなビジネスモデルが現れるのか、そして社会組織がどのように変化していくのかを説いているのが特徴である。

第1章「ITの進化」では、1990年代のITの普及段階からITバブル、現在までの変遷を説明している。携帯電話の普及からスマートフォンへの移り変わりや3G通信から5G通信への進歩を通して、人は常にオンラインに接続できる状況になり、ITはtoBからtoCへ進化している。これからのポストスマートフォンの時代では「ウェアラブルデバイス」のような人の機能に近づくITが重要視されていく。そしてIoT・クラウド・ブロックチェーン・AIを現在のITでの四種の神器とし、これらを取り入れられないレガシー産業はいずれ衰退していくと示している。

第2章「ブロックチェーンの正体」では、ブロックチェーンが①暗号化技術 ②コンセンサスアルゴリズム ③ピア・トゥ・ピア(P2P) ④DLT(分散型台帳技術)の4つの技術を組み合わせたものだと説明したのち、ブロックチェーンの最大の運用例としてビットコインを挙げ、その仕組みブーム、通貨としての価値について語る。後半部には、ブロックチェーンを語る上で欠かせない要素として「バンドル/アンバンドル」と「パブリック/プライベート」を取り上げている。

第3章「普及を阻むもの」では、主にブロックチェーンの進歩が遅いように感じられている理由について論じている。法律や既得権益の強さ、経営と現場のギャップなどが挙げられているが、特に筆者がこだわっている部分は、「Whyブロックチェーン?」である。これまで問題なく動いてきたシステムをわざわざブロックチェーン技術で作り直す意味は無いと断じ、ブロックチェーンの得意不得意や限界を把握した上で、ブロックチェーンでしか実現できないことでの利用の重要性を強調している。

第4章「ブロックチェーンが拓く未来」では、前半はブロックチェーンによって実現される自立分散型組織(DAO/ダオ)について触れていく。DAOの世界を実現するための重要なテクノロジーとしてスマートコントラクトとRPAを説明したのち、DAOを分散型というよりも非中央集権型とし、全てが完全に分散するのではなく、中央集権のコミュニティがたくさんあって繋がり合うというイメージだとしている。また、組織はヒエラルキーからホラクラシーへ移り変わるとし、ルールやレギュレーションがプログラムされている中に人間が参加していく、というようなフリーランスを組織化したようなものになるという。後半は価値を定量化する手段である「トークン」ついて論じる。トークンはコミュニティ内の価値を表すものであり、通貨と同様の機能を持つ。価値交換の手段としてトークンが金融を成り立たせ、その上に経済(エコノミー)ができ、そしてそれらを土台にスマートコントラクトによってルール化された社会(コミュニティ)が実現されるとしている。また、この社会は超競争社会となる可能性があるため、都市では民主主義・資本主義、地方では社会主義を取り入れるといった社会制度の使い分けを提言している。

第5章「実験例と想定ケース」では、筆者が代表取締役を務める株式会社INDETAIL(インディテール)がパートナーと共に行ってきた医療関係の実証実験の概要と結果を説明したのち、発展したものとして、テレビ視聴のネットワーク化、EV充電スタンドのネットワーク化、クラウドファンディングの一種であるソーシャルレンディングへのブロックチェーン応用などの想定ケースを挙げている。そして最後には、既存の技術をどう使うのかではなく、考えられたサービスを実現するためにはどうすればいいのか、という思想ドリブンが未来を切り拓くとし、それに向かうための不可欠な道具がブロックチェーンであるとしている。

本書の第1・2章は既知の内容が多かったが、第4章にてDAOによる組織の変化や、トークンによるコミュニティの形成について深く理解出来たことがとても大きかった。しかし一方で未だ実証実験段階で本格的な導入事例は少ないことが強調されており、現在の中央集権の社会における適応が難しいこともわかった。本書ではビットコインと著者が関わる事業以外のブロックチェーン事例があまり見当たらなかったため、今後は現在時点での実証実験や導入事例を調べつつ、考察を深めていきたい。

「WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?」 坪井大輔 2019年7月 翔泳社

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書評「Smart City5.0 地方創生を加速する都市OS」

アクセンチュア株式会社にて、行政、公共事業体、民間企業の戦略立案から大規模トランスフォーメーションプロジェクトまで多く携わる海老原 城一氏、中村 彰二朗氏による著書。
前回の書評にて、5G環境の求められているといわれるSmartCity5.0に着目し、その実施例を通して現場に利用され、求められる技術やテクノロジーを探ることによってより詳細を掘り下げることにした。

第1章「地方都市が抱える課題の共通点とSmartCity」では、会津若松市を舞台にスマートシティ化を行う理由と課題を説明する。
地方創生を目的とし、高付加価値産業の仕事を通して地方都市の復活を図る。その土台としてスマートシティ化によって人と仕事の流入を促す。同時に市民の理解を得ることを通じて市民、社会、企業の「三方善し」を目指す。
第2章「SmartCity AIZUの実像」では、スマートシティ化において構成される要素を具体的に「デジタル・コミュニケーション・プラットフォーム(DCP)」と「データプラットフォーム」として紹介する。上位レイヤーのDCPは、市民や観光客、事業者向けの情報ポータルであり、都市機能を「エネルギー」「観光」「教育」「農業」「ものづくり」「金融」「移動手段」の8領域に分類し、パーソナライズして各個人に提供する。下位レイヤーデータプラットフォームは、データを収集・蓄積し、そのデータを活用してイノベーションを生み出すレイヤーであるとする。
第3章「SmartCity5.0が切り拓くデジタルガバメントへの道程」では、スマートシティをはじめとするSociety5.0は、既存組織が既得権益を手放してアンバンドルし、イノベーションによってサービス本位のコラボレーションとリバンドルの実現をめざし、IoTプラットフォーム「都市OS」を開発することによって改革を狙う。
第4章「世界に見るSmartCityの潮流」では、一概にSmartCityといっても世界の地域や時代によって定義は異なることを指摘し、改めてここでいうSmartCityとは、環境改善やエネルギー産業の振興だけでなく、自動運転やロボットなどに代表される産業技術やIoTの進展を背景に、幅広い領域でのスマート化による市民生活の質の向上や、それに伴うイノベーションの創発による経済的な成長と定義している。また、SmartCityの事例として、藤沢、トロント、アムステルダム、ヘルシンキ紹介し、改めて会津若松で目指すSmartCity展望を描く。
第5章「会津若松の創生に賭ける人々」では、対談方式をとって会津若松で行われるスマートシティのプロジェクトの成り立ちについて語る。ものづくり産業からICT関連産業へ移行するために官民共同となりプロジェクトを進行する必要性を説く。また、再生可能エネルギー100%の社会を目指し、市民中心の街づくりを行うことがスマートシティプロジェクトの本質であるとし、話を締めくくる。

本書を読んで、地方創生において重要なポイントとしてその地域で行うことのメリットが示せるかどうかによって大きく結果が変わることが分かった。そして今後の動きとしてICT関連産業を誘い込むためにも、地方こそデジタルトランスフォーメーションを推し進め、デジタルインフラを整えること、すなわち5G環境を整えることによって、企業が地方を選択する理由になりえると感じた。

「Smart City5.0 地方創生を加速する都市OS」海老原 城一・中村 彰二朗(2019)インプレス

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書評「ブロックチェーン革命」

本書は仮想通貨から注目を集めつつも、複雑でわかりにくいとされるブロックチェーンを解説するものである。ブロックチェーンの仕組みを説明したのち、仮想通貨での活用開始からその変遷、フィンテックやIotでの応用について触れ、組織構造のイノベーションまで解説する。そして終盤にはブロックチェーンに基づく分散自立型社会についても著述している。
序章・第1章では、新しい技術が出現した際の人々の反応と現在までのブロックチェーンに対する認識の変化を述べた後、ブロックチェーンという技術の基本的な仕組みや優れている点、なぜ今注目を集めているのかが描かれている。本書の概論にあたる部分であり、仮想通貨を起点としたブロックチェーンがフィンテック、IoTにも応用されていき、そこで既存技術では起こせなかった革命的変化を起こす可能性について示唆している。
第2・3章では、仮想通貨関連での法規制や仮想通貨界隈の今までの情勢変化を述べ、その後に銀行での仮想通貨発行や中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)について言及している。管理主体のいないビットコインなど従来の仮想通貨とは違い、銀行が発行する仮想通貨は銀行が管理者となっており、ここでパブリック・ブロックチェーンとプライベート・ブロックチェーンで分かれる。銀行が適用するプライベート型は、ブロックチェーンの最大の特徴である「管理者が不要で改竄がほぼ不可能」という性質が捨て去られることを指摘し、コスト削減の利点も挙げている一方でパブリック型との大きな違いを示している。
第4章では、在来技術型のフィンテックを送金・決済、「ソーシャルレンディング」、ビッグデータを用いる投資アドバイスや保険、の3つに分類し、PayPalなど代表的なサービス名を挙げつつ、各々の仕組みを説明している。しかし、これらは日本では規制や法制度の縛りが強く、世界から遅れていることをフィンテック・ベンチャーへの投資額を比較して指摘している。
第5章では、第2~4章の総括として、ブロックチェーンが通貨と金融をどう変えるのか改めて説明している。その上で、送金コストがゼロ近くまで下がることの重大性を説き、マイクロペイメントと国際送金の分野で大きく変革が訪れるとしている。また、ブロックチェーンを用いた決済手段を提供する主体が、(1)ビットコインのような仮想通貨 (2)銀行が運営する仮想通貨 (3)中央銀行が運営する仮想通貨 であり、各々が通貨の覇権を握った場合に想定されるシナリオやリスクを述べている。
第6章では、現在まで公的機関の信頼性に頼ってきた真正性の認定を、ブロックチェーンが代替することが出来ると説いている。また、商品の履歴トラッキングや個人のデータ管理をブロックチェーンで行うことで、低コストでその真正性を証明できる。第7章では、IoTの分野のブロックチェーン活用について述べている。現在の中央集権型のIoTの最大の問題点を、システムの運営コストが高いために経済的採算が取れないことだと指摘し、これをブロックチェーンを用いた「モノの分散型インターネット(DIoT)」に移行することで、コスト面などの諸問題を解決できるとしている。
第8章では、「分散型自立組織(DAO)」が紹介される。DAOは中央に管理者が存在せず、多数のコンピューターが運営する組織で、意思決定、実行、紛争解決は人が行うのではなく、プロトコルにあらかじめ定められたルールに従って行う。また、この章の後半では「分散市場」も紹介される。これはブロックチェーンを用いてさまざまな資産の取引を分散的に行う市場で、従来の市場と比較して、セキュリティ向上・コスト削減・決済時間の短縮を実現しており、流動性を増大させる。
第9章・終章では、ブロックチェーンによるDAOが社会的に普及した際の未来について語られている。これまでは人間によってしかできなかった仕事をブロックチェーンが代替するようになり、DAOは失業を生むディスラプター(破壊的革新者)の側面があるとしている。プロトコルに定められた規約に則り、意思決定や実行・問題解決はDAOが行う。しかし、これらの事は中央集権の支配者がいなくなることを意味し、社会構造の変革をもたらす。IT革命の際に人々が期待したフラットで、信頼を必要としない社会が実現できるとしている。その事により人々の直接的な取引が実現し、また、組織のフラット化によって人々はより柔軟に高い自由度で働くことができると説いている。
本書を読む中で度々繰り返されるものとして、法規則の整備が挙げれる。特に金融分野においてはもともと厳重な規制が多いために参入障壁が高く、日本はその傾向が強い。銀行など金融機関の利害に拘泥するのではなく、利用者や経済全体の立場から考えなければ技術進歩が遅れ、海外からより取り残されることが強調されている。
金融に限らず、さまざまな場面での応用が期待されるだけに、法や規則の整備が間に合っていない現状はなんとも歯がゆく、今後の迅速な対応が求められているように感じる。その技術を十全に力を発揮するようになった際にDAOがどのように社会を変え、人々の生活や働き方が変わっていくのか更に深く考察していきたい。
「ブロックチェーン革命[新版] 」 野口悠紀雄 日経BP

 

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米、G7でランサムウェア防衛で連携を目指す

サリバン米大統領補佐官は7日、今週始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)でランサムウェア(身代金要求型ウイルス)への協調対処に向けた行動計画の策定を目指すことを明らかにした。ロシア政府に対しハッカー集団の摘発を強化するよう協調して要求するだけでなく、ランサムウェア防衛での協力に加え、身代金の支払い手段に使われる暗号資産(仮想通貨)も議論のテーマになる。ロイター通信によると、司法省はランサムウェア攻撃に関する捜査の優先度をテロ対応に近い水準へ引き上げ、情報収集もテロ対策に使う手法を採用した。ロシアだけでなく、中国やイラン、北朝鮮もサイバー犯罪者に対して安全な隠れ家などを提供しているという見方を示している。

日本経済新聞(2021/6/8)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN030DI0T00C21A6000000/

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米fastly、大規模システム障害によって1500億円以上損失

8日に起きた米fastly(ファストリー)による大規模システム障害によって、WEBサイトの閲覧不可や取引一時停止に見舞われた企業や政府機関のサイトは数千件に上った。AmazonなどのEC企業のサイトも含まれ、世界の小売業に与えた損失は1500億円を超えるという試算もある。日本でもフリマアプリのメルカリや動画配信のHulu(フールー)にも影響が及んだ。2011年創業のfastlyは欧米を中心に世界各地に配置した高速サーバーを通じたコンテンツ・デリバリー・ネットワークサービスを提供している。高い利便性が評価され、利用が広がる一方で今回の障害により一部の技術に過度に依存する危険性が示された。

日本経済新聞(2021/6/9)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08FC50Y1A600C2000000/

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書評「幸福な監視国家・中国」

本書は現代中国の監視社会をめぐる日本国内のやや偏った見方に一石を投じるため梶谷懐氏と高口康太氏が現在の中国で起きていることを多角的に掘り下げたものだ。スーパーアプリや監視カメラを用いて個人情報を収集するのは中国にとっては当たり前だ。これを監視社会として日本とは遠い世界と捉えるのではなく、日本も同様の問題に直面すると著者たちは述べている。
本書の第一章から第四章では中国社会におけるテクノロジーを実装することが社会に与えた変化を解説している。中国ではテクノロジーへの信用が高く、米企業による調査では27カ国で1位だった。ECの利便性や、監視カメラによって実現した犯罪抑止、信用スコアの運用とフィンテックとの結合といったことが進み、中国社会の利便性は格段に上がった。そのため中国国民が進んで個人情報を企業に明け渡し、結果的に中国共産党による社会統治が強化されている。ウイグル自治区における自由の剥奪が悪い例として上がる。「最大多数の最大幸福」を原理を盾に政府が暴走するときもある。少数民族への弾圧は激しく、強制収容所のような施設さえある。ただこの施設がある名目は治安のためだ。イノベーションに対する法の緩さは、人権保護に関する法の弱さの反面でもあると指摘している。
第五章から第七章では中国における公共性の議論が展開されている。テクノロジーで安心・安全で便利な社会である現状から世に溢れる中国の自発的な民主化や分裂を期待する論調が如何にナンセンスなものとなっているかを示している。つまり「アルゴリズム公共性の暴走」である。しかしこのような社会は一党独裁体制の中国だけではなくすべての国で起こる可能性があると指摘している。それは功利主義に基づいて道徳的判断が人間からAIに取って代わるのは避けられないからだ。具体的な理由としては1.一般大衆が利便性のためAIを用いたアルゴリズムによるセグメント化を進んで受け入れる素地は功利主義的社会(資本主義社会)が本質的に内在していること、2.テクノロジーの理解は一般大衆にとってますます困難になっていること、3.テクノロジーと公共性を両立させる議論にはまだ時間を要することの3つである。著者たちは常にテクノロジーが社会実装されたときの変化の方向性が正しいかを問い続ける姿勢を持つべきだとまとめている。
本書を読みテクノロジー社会において利便性と権利での葛藤をどのように処理していくかが今後の日本におけるテクノロジーの社会実装が進む道をめると感じた。テクノロジーの社会実装が極端に遅れている日本では中国社会のどの部分は手本にして、どの部分は真似をしないといった取捨選択が重要であると考えるようになった。

歴史では、近代化以前の信用の形から、近代化を経て、現代のフェーズへ移行しようとしていることがわかる。また海外の先進事例から日本とは状況が異なるとはいえ、その成功と失敗から日本における信用サービスのあり方(テクノロジーの社会実装)を考えていきたい。

「幸福な監視国家・中国」 梶谷懐・高口康太共著

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書評「決定版 5G: 2030年への活用戦略」

総務省にて、広く情報通信・ICT行政に携わり、2018年4月から2019年7月まで携帯事業者への周波数割当てやローカル5Gを含む日本の5G推進戦略を担当する片桐 広逸氏による著書。
いまだ身近そうでまだ手の届かない印象のある5G。この5Gは、今までの携帯電話や移動通信と何が違うのか。新たに手に入れた技術を何のために使い、どう使いこなすのかを解説する。

第1章「5Gとは何か 携帯電話40年の集大成」では、初めに5Gとはいったい何であるかを詳らかにし、我が国衙5Gに対して持つ強みや課題にに触れつつ、我が国での5G展開の狙いや方向性について触れている。
第2章「5G周波数割当ての狙い」では、5G周波数割当ての狙いや結果の概要について説明し、総務省の制度設計や政策の含意について、読み解き、政策的な狙いを解説している。
第3章「「静かなる有事」とsociety5.0」では、5G利活用の本質とともに、現愛我が国衙直面している数々の経済社会上の問題について「静かなる有事」と「society5.0」というキーワードを用いて5Gを活用した新ビジネス創出や地域課題の解決が、いかに深刻であるとともに必要なことかを解き明かす。
第4章「5Gの利活用に向けた総力戦」では、政府や携帯事業者が先導的に推進している5Gの利活用の動向について説明しつつ、今後10年間で早期の実現が期待される各種ユースケースのイメージを示している。
第5章「誰でも使えるローカル5G」では、全国をカバーする大手携帯通信事業者とは別に、小さなエリア単位でだれでも手軽かつ柔軟に5Gサービスを提供できる新機軸である「ローカル5G」の導入と、その意義やスマート工場などの代表的な利活用方法例、政府の支援等について紹介する。
第6章「持続可能な2030年の未来社会に向けて」では、企業、自治体、大学等の研究機関、通信事業者、ベンチャー、地域団体、NPOなど「垂直セクター」と呼ばれる利活用分野の当事者、地域住民などの関係者が、どのように手を結び5Gと向き合うことで利活用方法が広がっていくのかについて考察されている。

本書を読んで、5Gがより身近なものとなり、生活を支えるインフラになることを確信させられた。技術を利用する立場からではなく、政策として普及させる立場の見解であったことから、5Gによる地方創生、産業・社会再生など認知していなかった新たな使命を知ることができた。本書でも活用事例は多く掲載されていたが、今後より一層具体的な活用例、実施例などを調べていき、5Gの可能性について見識を深めていきたい。
「決定版 5G: 2030年への活用戦略」 片桐広逸 東洋経済新報社

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書評「電子マネー革命」

2000年代になり普及してきた電子マネー。現金が絶滅する日が来るかもしれない。本書は電子マネーやポイントの仕組みを解明し、今後それらが私たちの生活にどう影響してくるのかを展望する。著者は法律事務所にて電子マネーや決済ビジネスの法務を担当し、法的な課題解決に取り組んでいる。この本を手に取ったのは、「現金絶滅」という言葉に衝撃を受け、本当にそんな日が来るのか疑問に思ったためである。また、急速に発展しているキャッシュレス化で抱えている課題とは何かを明らかにするためである。全五章で各章SIDE-AとSIDE-Bの二部構成となっている。SIDE-Aではある夫婦が現金を駆逐する「おカネ革命」をめぐる事件に巻き込まれる姿を描いている。SIDE-BではAでの事件の背景を読み解き、解説する。

第一章では、クレジットカードや電子マネーの利用でポイントを貯める夫婦の日常が描かれ、電子マネーの普及した理由について述べられている。20年前までは電車に乗る際は駅員が切符を切っていて、買い物は消費税の導入により清算に時間がかかっていた。それが数年たち、国民皆電子マネーの時代へと推移していった。①高い利便性、②発行者間の競争、③クレジットカードに対する優位性、④デビットカードに対する優位性、⑤ポイントとの相乗効果、これら五つの点が電子マネー普及の要因とあげられている。

第二章では電子マネーの不正利用事件を描き、電子マネーの抱えるリスクについて言及している。電子マネーの二大リスクと呼ばれるのが、サーバー上でのデータ改竄、発行会社の倒産である。上記のリスク解決策として、2010年4月にサーバー管理型の電子マネーにも適用される「資金決済法」が制定された。この法律により、会社は新たに発行する際の登録手続きが厳格になり、倒産に備え国に供託することが義務化された。だが、データ改竄を防げないことやポイントとの関係性については課題が残る。

第三章では商店街での不正ポイント発行の事件を描き、ポイントの価値について説明している。電子マネーは消費者が現金をチャージして利用するのに対し、ポイントは発行主体が負担しているため、消費者を守る資金決済法の対象外とされた。発行側はポイントをオマケとして認識しているが、利用者は財産として認識している。ポイントの価値は将来の課題にも繋がっており、発行者、消費者の双方がプログラムに対する意識を高めることでトラブル防止になるとされている。

第四章では筆者が今後出ると予想する電子マネー口座を基にしたサービスについて説明されている。海外のウエスタンユニオンやPayPalのいいところをとった、サービスの提供が望ましいとしている。即時送金が可能でオンライン決済や現金無しで入金できるサービスを備えたものである。少額決済が可能になることで、CtoCの取引が今後さらに伸びていく。それにより、世の中のお金の流通速度が上がる可能性があるという。

第五章では、第四章で筆者が想定した電子マネー口座の国際決済の事例を描き、世界共通マネー実現の可能性について述べている。共通マネーが発行されれば為替変動に影響されることなく、一定の通貨交換が可能となる。銀行での取引は高額な手数料がかかるが、共通電子マネーでは抑えることが出来、CtoCのやりとりが国内外関係なく増えていく中で、需要は高まる。おカネは人々の信用で成り立っており、おカネの未来を決めるのは利用者のニーズであるとまとめている。

本書を読んで、電子マネーの普及した背景や今後の展望、またポイントの意義については理解することが出来た。だが、この電子マネーの普及が現金絶滅に直結するかというと疑問である。国際的な取引の観点で観たときには、共通電子マネーが発行されればCtoCのやりとりが増加し便利になる。しかし、ここでそれは少額決済に限った話であり、高額な決済の際には電子マネーだけでは不十分なところがある。筆者がおカネの価値は信用で成り立っていると述べていたように、現金に信頼を寄せる日本では完全になくなり絶滅することはないのではないかと思う。今後は更に進んだキャッシュレス決済の抱える課題と解決策、またその中での現金の役割について深く調べていきたい。

 

「電子マネー革命 キャッシュレス社会の現実と希望」伊藤亜紀(2010)講談社

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