月別アーカイブ: 2021年7月

英、19日にロックダウン解除決定

英国は19日にイングランド地方のロックダウンを解除することを決定した。ワクチン接種が進んだことで死者を重症者が抑えられていることが理由だ。しかしデルタ株の流行で感染者は増加傾向にある為、反対意見も少なくない。英国では成人の66%が2回目のワクチン接種を受けており、死者や重症者はこれまでのようには増えていない。その為、政府は巨大な免疫の壁が出来つつあるとし、ウイルスとの共生路線を進みたいようだ。だが、1日の感染者は3万人を超えており、夏には10万人に達する可能性もあると指摘されている。最大野党のスターマー党首も「専門家はマスク着用や在宅勤務を推奨している。一度に規制を解除するこの計画は無謀だ」と述べている。 日本経済新聞(2021/7/13) 新型コロナ: 英、コロナ規制巡り国論二分 19日の解除決定: 日本経済新聞 (nikkei.com)

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ワンクリックで被災地を支援

土石流被害にあった静岡県熱海市に対し、12日時点で約1.7億円の寄付が集まっている。寄付に使われているのはふるさと納税の仲介サイト「ふるさとチョイス」だ。ふるさと納税は自分が納める住民税の一部を別の自治体に移す仕組みであり、お礼として返礼品が届くことが一般的である。災害時の寄付では返礼品はないが、支援の輪は広がりを見せている。当初は自治体の窓口から始まったものであるが、専門の民間サイトが登場したことで利便性が一気に増した。少額からの寄付も可能であり、ワンクリックで済ませることが出来る為、災害時の寄付の1つの手段としてこれから広がっていくかもしれない。 日本経済新聞(2021/7/13) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1250Z0S1A710C2000000/

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書評『キャッシュレス革命2020』

本書は電子決済化するメリットや現状と課題をあげ、東京オリンピック・パラリンピックに向け、キャッシュレス決済の促進を展望している。著者は野村総合研究所金融ソリューション事業部の宮居雅宣氏を含む、5名のキャッシュレス研究会である。この本を手に取ったのは、電子決済の利用を全面に押し出しており、そこまで急速に発展させる必要があるのか疑問に思ったためである。序章を含む全8章で構成され、キャッシュレス決済のメリットをあげながら今後の在り方について言及している。 序章から第二章までは決済の現状と課題について述べられている。現金は銀行にある「データ」として保存されているものを、ATMで引き出すことによって「現物」にする。そして各店舗で利用し売上金として再び「データ」になる。現物化することで、リスクや無駄なコストを発生させている。キャッシュレス決済は現金と違い透明性があるので、犯罪に巻き込まれにくく、紛失しても利用停止にすることができる。現金を持ち歩くのは日本人くらいで海外では電子決済が主流だ。電子決済は装置産業であるため、海外への遅れを取り戻すためにもインフラ整備と運用が最大の課題になるとしている。 第三章ではキャッシュレス化によって得られる効果についてまとめられている。2014年4月に鉄道やバスに乗車する際の、二重運賃を国土交通省が認可し運用が開始された。これにより端数分、IC決済の方が安い運賃が設定されるようになった。一円単位の価格設定が出来るようになったことのほかに、迅速性、経済性、安全性といった基本的メリットがあげられている。また応用編として、透明性、情報収集性、機動性、コントロール性、市場創造性、国際性といったメリットがあるとされている。 第四章では消費者心理について触れられている。消費者の心理は足し算型と引き算型の二つに分かれる。日本人は古くから「封筒管理」といわれる引き算型を好むため、カード決済には抵抗があったが、プリペイドカードの登場で決済の選択肢が広まった。 第五章では政府や行政の取り組みについて述べられている。税金や公共料金の徴収、生活保護費の支払い等をキャッシュレス化することによって、事務処理にかかるコストが削減され事業効率が上がる。マイナンバー制度を利用し安心・安全な国を目指している。 第六章では第五章までに述べてきた課題と解決策についてまとめている。可能性のある犯罪や取引の安全性を確保するための要素、また消費者トラブルで起こり得ることについて説明し、キャッシュレス決済を促進するべきであるとまとめている。 第七章では2020年キャッシュレス社会としてのあるべき姿をフィクションで語っている。一つ目はオリンピック観戦のために日本にやってきた外国人の例である。現金は持たずに入国し、ネット決済で列に並ぶことはない。お寺のお賽銭のみ現金で、近くにある海外カード対応のATMから日本円を少額引き出す。キャッシュレス化が進み、ストレスや不安を感じることなく快適に過ごすことが可能になった。二つ目は日本に住む四人家族の例である。家族カードで全員決済にはカードを利用している。ネット決済はトークン化や虹彩認証の導入で安心して利用できる。二つの例からキャッシュレス決済の必要性を提示し、今後更に推し進めていくべきだと締めている。 本書を読んで、キャッシュレス決済を促進するメリットや課題について理解することが出来た。観光立国を目指す日本は海外にも通用するよう、決済インフラを整備していくべきだと思う。しかし、筆者らの想定していたほど現状進んではいない。今後はキャッシュレス決済が進まない原因や解決策についてさらに深く調べていきたい。また、お賽銭の例であったような、守っていくべき現金の文化についても考えていきたい。   『キャッシュレス革命2020 電子決済がつくり出す新しい社会』「キャッシュレス革命2020」研究会(2014)日経BP社

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書評 「TRUST」

本書は「シェア」においてシェアリング・エコノミーの到来を予見し、タイムズ紙の世界を変える10のアイデアに選ばれ、2013年にはWEF(World Economic Forum)のヤング・グローバル・リーダーにも選ばれたレイチェル・ボッツマン氏によって書かれたものである。 著者は信頼とは「結果の予想であり、物事がうまくいく可能性が高いと期待すること」もしくは「既知のもの(確実なもの)と未知のもの(不確実なもの)のすき間を埋めること」と定義している。 第1章から第3章では信頼の変遷について説明している。産業革命が進展し、都市への人口集中が進むにつれて、全ての人と親密な付き合いをすることが物理的に不可能となった。そこで人々は契約や法律といった仕組み、企業ブランドなどの権威などを媒介し相手の信頼性を判断するようになった。このおかげで小さなコミュニティを超えた取引が可能になり「制度への信頼」が確立された。しかし近年金融危機を招いた金融機関やそれを防げなかった政府当局・専門家への不信の高まりや、パナマ文書に代表されるような権力を持つ人々の不正が明らかになってきたことで、制度そのものへの信頼が揺らいでいる。このような状況で生まれたのが多数の個人の経験や評判などの多様な情報を共有し、相互評価することによって、自分にとって未知の相手の信頼性を判断するという「分散された信頼」だ。 第4章から最終章までは「分散された信頼」の課題を2つ指摘している。1つ目は結果に対する責任と損害に対して補償する主体が曖昧な点だ。全くの他人同士が取引しようとする場合、彼らはサービスの提供者とユーザーをマッチングさせる仕組みを利用することが多いだろう。しかし、そうした仕組みを提供する企業は、自分たちはあくまで「場」を提供しているだけであり、そこで提供されるサービスの品質の保証や、そこで生じた損害に対する責任は、提供者が負うべきであると主張する。提供者が個人の場合、企業に比べて発生した損害を補償する能力が限定され、被害者が十分に救済されないことも考えられる。本書はレーティングの高いUberドライバーによって6人が殺害された「カラマズー事件」を例に挙げて、「場」を提供するという仕組みだけでは信頼の確立は不完全であると指摘している。 2つ目は「分散された信頼」を用いたサービスを提供する企業が社会的に影響力を持ちやすい点だ。分散された信頼」は、多数の個人によるレーティングで支えられているが、そのためのプラットフォームを構築できるのは、資金・人的リソースを持つ企業(CAFAやアリババ・テンセント)などの組織に限られる。だがその仕組はブラックボックスで、権力が特定企業に集中している。レーティングの重要性が増す以上、その仕組みがブラックボックス化することは、ユーザーに対して情報の非対称性を引き起こす。その結果特定企業がますます影響力を伸ばすためルール整備が急務であると締めている。 本書を読み、シェアリング・エコノミーの拡大に代表される社会変化に制度が追いついていないことがわかった。エアビーアンドビーに代表される「分散された信頼」をもとにしたサービスは便利であるが危険性の孕んでいる。その中で信用スコアは安全の不完全性を補完するような制度や仕組みになれると感じた。今後はシェアリングエコノミーの急拡大が進むアフリカの事例研究後、信用スコアが果たせる役割について調べる予定だ。  

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書評 「WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?」

本書は2016年後半頃から北海道を拠点にブロックチェーン事業を手がけているベンチャー創業者の著者が、その経験と実践からブロックチェーンをビジネスの手段として捉え執筆したものである。多くのブロックチェーン関連書籍が仮想通貨を初めとした金融についての言及が多い中、本書は金融に縛られることなく、ブロックチェーンが既存産業にどのような影響を与えるのか、どのようなビジネスモデルが現れるのか、そして社会組織がどのように変化していくのかを説いているのが特徴である。 第1章「ITの進化」では、1990年代のITの普及段階からITバブル、現在までの変遷を説明している。携帯電話の普及からスマートフォンへの移り変わりや3G通信から5G通信への進歩を通して、人は常にオンラインに接続できる状況になり、ITはtoBからtoCへ進化している。これからのポストスマートフォンの時代では「ウェアラブルデバイス」のような人の機能に近づくITが重要視されていく。そしてIoT・クラウド・ブロックチェーン・AIを現在のITでの四種の神器とし、これらを取り入れられないレガシー産業はいずれ衰退していくと示している。 第2章「ブロックチェーンの正体」では、ブロックチェーンが①暗号化技術 ②コンセンサスアルゴリズム ③ピア・トゥ・ピア(P2P) ④DLT(分散型台帳技術)の4つの技術を組み合わせたものだと説明したのち、ブロックチェーンの最大の運用例としてビットコインを挙げ、その仕組みブーム、通貨としての価値について語る。後半部には、ブロックチェーンを語る上で欠かせない要素として「バンドル/アンバンドル」と「パブリック/プライベート」を取り上げている。 第3章「普及を阻むもの」では、主にブロックチェーンの進歩が遅いように感じられている理由について論じている。法律や既得権益の強さ、経営と現場のギャップなどが挙げられているが、特に筆者がこだわっている部分は、「Whyブロックチェーン?」である。これまで問題なく動いてきたシステムをわざわざブロックチェーン技術で作り直す意味は無いと断じ、ブロックチェーンの得意不得意や限界を把握した上で、ブロックチェーンでしか実現できないことでの利用の重要性を強調している。 第4章「ブロックチェーンが拓く未来」では、前半はブロックチェーンによって実現される自立分散型組織(DAO/ダオ)について触れていく。DAOの世界を実現するための重要なテクノロジーとしてスマートコントラクトとRPAを説明したのち、DAOを分散型というよりも非中央集権型とし、全てが完全に分散するのではなく、中央集権のコミュニティがたくさんあって繋がり合うというイメージだとしている。また、組織はヒエラルキーからホラクラシーへ移り変わるとし、ルールやレギュレーションがプログラムされている中に人間が参加していく、というようなフリーランスを組織化したようなものになるという。後半は価値を定量化する手段である「トークン」ついて論じる。トークンはコミュニティ内の価値を表すものであり、通貨と同様の機能を持つ。価値交換の手段としてトークンが金融を成り立たせ、その上に経済(エコノミー)ができ、そしてそれらを土台にスマートコントラクトによってルール化された社会(コミュニティ)が実現されるとしている。また、この社会は超競争社会となる可能性があるため、都市では民主主義・資本主義、地方では社会主義を取り入れるといった社会制度の使い分けを提言している。 第5章「実験例と想定ケース」では、筆者が代表取締役を務める株式会社INDETAIL(インディテール)がパートナーと共に行ってきた医療関係の実証実験の概要と結果を説明したのち、発展したものとして、テレビ視聴のネットワーク化、EV充電スタンドのネットワーク化、クラウドファンディングの一種であるソーシャルレンディングへのブロックチェーン応用などの想定ケースを挙げている。そして最後には、既存の技術をどう使うのかではなく、考えられたサービスを実現するためにはどうすればいいのか、という思想ドリブンが未来を切り拓くとし、それに向かうための不可欠な道具がブロックチェーンであるとしている。 本書の第1・2章は既知の内容が多かったが、第4章にてDAOによる組織の変化や、トークンによるコミュニティの形成について深く理解出来たことがとても大きかった。しかし一方で未だ実証実験段階で本格的な導入事例は少ないことが強調されており、現在の中央集権の社会における適応が難しいこともわかった。本書ではビットコインと著者が関わる事業以外のブロックチェーン事例があまり見当たらなかったため、今後は現在時点での実証実験や導入事例を調べつつ、考察を深めていきたい。 「WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?」 坪井大輔 2019年7月 翔泳社

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書評「Smart City5.0 地方創生を加速する都市OS」

アクセンチュア株式会社にて、行政、公共事業体、民間企業の戦略立案から大規模トランスフォーメーションプロジェクトまで多く携わる海老原 城一氏、中村 彰二朗氏による著書。 前回の書評にて、5G環境の求められているといわれるSmartCity5.0に着目し、その実施例を通して現場に利用され、求められる技術やテクノロジーを探ることによってより詳細を掘り下げることにした。 第1章「地方都市が抱える課題の共通点とSmartCity」では、会津若松市を舞台にスマートシティ化を行う理由と課題を説明する。 地方創生を目的とし、高付加価値産業の仕事を通して地方都市の復活を図る。その土台としてスマートシティ化によって人と仕事の流入を促す。同時に市民の理解を得ることを通じて市民、社会、企業の「三方善し」を目指す。 第2章「SmartCity AIZUの実像」では、スマートシティ化において構成される要素を具体的に「デジタル・コミュニケーション・プラットフォーム(DCP)」と「データプラットフォーム」として紹介する。上位レイヤーのDCPは、市民や観光客、事業者向けの情報ポータルであり、都市機能を「エネルギー」「観光」「教育」「農業」「ものづくり」「金融」「移動手段」の8領域に分類し、パーソナライズして各個人に提供する。下位レイヤーデータプラットフォームは、データを収集・蓄積し、そのデータを活用してイノベーションを生み出すレイヤーであるとする。 第3章「SmartCity5.0が切り拓くデジタルガバメントへの道程」では、スマートシティをはじめとするSociety5.0は、既存組織が既得権益を手放してアンバンドルし、イノベーションによってサービス本位のコラボレーションとリバンドルの実現をめざし、IoTプラットフォーム「都市OS」を開発することによって改革を狙う。 第4章「世界に見るSmartCityの潮流」では、一概にSmartCityといっても世界の地域や時代によって定義は異なることを指摘し、改めてここでいうSmartCityとは、環境改善やエネルギー産業の振興だけでなく、自動運転やロボットなどに代表される産業技術やIoTの進展を背景に、幅広い領域でのスマート化による市民生活の質の向上や、それに伴うイノベーションの創発による経済的な成長と定義している。また、SmartCityの事例として、藤沢、トロント、アムステルダム、ヘルシンキ紹介し、改めて会津若松で目指すSmartCity展望を描く。 第5章「会津若松の創生に賭ける人々」では、対談方式をとって会津若松で行われるスマートシティのプロジェクトの成り立ちについて語る。ものづくり産業からICT関連産業へ移行するために官民共同となりプロジェクトを進行する必要性を説く。また、再生可能エネルギー100%の社会を目指し、市民中心の街づくりを行うことがスマートシティプロジェクトの本質であるとし、話を締めくくる。 本書を読んで、地方創生において重要なポイントとしてその地域で行うことのメリットが示せるかどうかによって大きく結果が変わることが分かった。そして今後の動きとしてICT関連産業を誘い込むためにも、地方こそデジタルトランスフォーメーションを推し進め、デジタルインフラを整えること、すなわち5G環境を整えることによって、企業が地方を選択する理由になりえると感じた。 「Smart City5.0 地方創生を加速する都市OS」海老原 城一・中村 彰二朗(2019)インプレス

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