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作成者別アーカイブ: 吉川 祐樹
卒論 はじめに
近年、M&Aによる企業買収をよく耳にするようになった。実際、日本におけるM&Aの件数は年々増加しており、2019年には4000件を超え、過去最多を記録した。M&Aはもはや、経営戦略の一環として多くの経営者に注目されている。では今後、日本企業はM&Aをどのように活用していき、成長していくべきか。私は、この答えが海外にあると考えている。今後も成長し続ける海外市場にM&Aを活用し、進出していくことが、成長の鍵となるのではないか。 本論文は、M&Aによってどのようなメリットを得られるのかを一章で述べ、二章では日本企業が海外M&Aを行う必要性を論じる。そして三章では、成長性という観点から日本企業がM&Aを行うべき地域について検討していく。
卒業論文 アウトライン(仮)
【参考書籍・データ】 ①『海外大型M&A大失敗の内幕』 日本企業が過去に行った九つのM&Aの事例を挙げ、失敗談から得れる教訓を述べられている。M&Aは経営陣の先のビジョンの見通しや日本と海外の違いを考慮しない結果、好調だった業績が転じて巨額の負債を抱える危険性があるなど、M&Aの負の側面について学んだ。 ②『クロスボーダーM&A成功戦略』 クロスボーダーM&Aを成功に導くための戦略を、データや事例を用いて解説している。この書籍の序盤では、今後の日本企業が進むべき道としてクロスボーダーM&Aが必要だと述べており、卒論の方向性に大きく関わる一冊となった。 ③ 経済産業省『我が国企業による海外M&A研究会』 日本企業のM&Aの件数や金額、トレンド、海外進出・強化が重視されているなど、今現在の動向を知ることができた。 【言いたいこと】 ①『なぜ海外M&Aが企業成長の手段として注目されているのか、一般論ではなく 様々なデータを裏付けにして論じていきたい』 ②『今後の日本企業がグローバルな市場競争に勝ち抜くためには、対アジアを重視した海外M&Aを行なっていく必要がある』 【アウトライン】 1.はじめに 2.M&Aについて 3. なぜ今、海外M&Aが必要なのか a)日本市場の現状と海外との比較 b)海外M&Aの難しさ c)ケーススタディ(成功と失敗) 4.対アジアへの活路 5.結論
書評『クロスボーダーM&A成功戦略』
本書はクロスボーダーM&Aを成功に導くための戦略を、データや事例を用いて解説し、今後の日本企業が進むべき道筋を述べた一冊となっている。全5章で構成されている。 第1章『クロスボーダーM&A 勝者の条件』では、国内市場が緩やかに縮小していき、新興国が急成長し競争環境が変化していく中で、日本企業はM&Aを活用した覇権争いに参加せざるを得ない状況だと説明している。また本章ではクロスボーダーM&Aの成功を「M&Aの全プロセス(M&A戦略、ディール実行、PMI)を通じて、中長期的なシナジーと短期的なリターンを確保し、利害関係者の評価を得ること」と定義している。 第2章『戦略なきM&Aは失敗する』では、M&A戦略について説明している。将来のコアビジネスを明確にし、その強化を目指して買収と非中核事業を売却し成長するサイクルを「M&Aの好循環モデル」と呼び、このモデルを如何に生み出していくか説明している。 第3章『予測不能な海外企業とのディールをどう成功に導くか』では、DD(対象について詳細に調査すること)によってターゲット企業に対する期待と現実の差を明確にする事やシナジーを定量化することで、初めて事業計画とシナジー計画を作ることができるなどDDの重要性を述べている。またこれらの計画は内外の利害関係者へのアカウンタビリティーにも繋がる。 第4章『ポストM&Aの成功を阻む2つのギャップ』では、PMIを進めていく上で、計画のギャップ(買収前に立てた計画と買収後の事業計画の乖離)と実行のギャップ(計画と実績の乖離)に陥り失敗する危険性について述べている。このような問題が起きる原因に、計画から実行までの全工程を一貫して見る責任者がいない事や、ガバナンス体制の不十分などが挙げれられている。 第5章『買収側のグローバル改革こそ成功の本質』では、クロスボーダーM&Aを行う上で、買収先のガバナンスと同様に、日本企業自らもグローバル化に向けた変革が必要であると述べている。筆者は、買い手売り手両者の強みを組み合わせ、新たなものを創造する「複合企業」をコンセプトとし、経営体制を構築するべきだと唱えている。 M&Aの失敗の側面だけでなく、成功の側面を知りたいと思い本書を選んだ。グローバル化が急速に進む時代だからこそM&Aによるコアビジネスの強化の必要性や、事前の情報取得や買収後の戦略が成否を大きく分けると分かった。今後は、第1章で述べられていたクロスボーダーM&Aの必要性についてより深く調べていきたいと思う。 松江英夫・篠原学 著 ダイアモンド社 2012年12月13日発行