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カテゴリー別アーカイブ: 新聞要約
「アメーバ経営」と「フィソロフィ」
京セラ、第二電電(現KDDI)の創業者で、日本航空(JAL)を再建した稲盛和夫(享年90)が8月24日亡くなった。 稲盛は、会社を小さなグループに分け、そのリーダーに収益責任を負わせる「アメーバ経営」の骨格を考案した人物である。「自走する組織」作りに成功した稲盛は、ベンチャー企業の創業者から強く支持されていた。ベンチャー企業は「偉大な創業者」に率いられて成長し、「創業者がいないと動かない」組織になりがちだからだ。 稲盛の優れていた点は、「フィロソフィ(哲学)」の考えにある。生前のインタビューで、「資本主義は人間の獣性を解き放ち成長の原動力とする制度である。人々は数字の魔力に勝つことができない。競争相手を貶め、仲間の足を引っ張る会社は長続きしない。自分たちが頑張るのは、世のため人のため、仲間を助けるためである。それをしてはじめて良い人生が送れる。」と述べていた。 永守重信、柳井正、孫正義が苦戦|稲盛和夫が遺した「自走」する組織作りの真骨頂 2022,9.5大西康之 新潮社foresight 5968字
独政府、露国営石油会社を管理下に
独政府は16日、露国営石油会社ロスネフチの独子会社を一時的に政府の管理下に置くと発表した。ドイツはロシア産石油の禁輸を決めていて、代替調達先を確保するのにはロシア企業の色を薄める必要があると判断した。EUは6月、露産石油の輸入を禁止する追加制裁に合意した。ドイツは海上輸送とパイプライン経由を合わせロシアからの調達を完全に止めるために新たな調達先を見つける必要がある。 2022/9/16 日経速報ニュース
豪政府、LNG輸出規制を検討
世界最大の液化天然ガス輸出国のオーストラリアで国内のガス不足懸念が高まっていることを受け、豪政府は10月1日までにLNGの輸出規制検討の手続きを始めるか判断する。キング資源大臣の広報担当は「ガス輸出は地域のパートナー国のエネルギー安全保障を支え、豪州の経済発展に寄与する」と強調した。豪競争・消費者委員会は8月初旬に、南東部を中心に需要の1割のガス不足が出ると予測した。輸出規制に対象は東部の国内市場に実質的にガス供給していないLNG事業者だ。 2022/9/15 日本経済新聞 朝刊11面
サブスクリプションマーケティング−モノが売れない時代の顧客との関わり方−
製品やサービスの購入ではなく、それらの利用に対して定額制や従量制で代金を支払うサブスクリプション、通称「サブスク」は私達の日々の生活や、サービスを提供する企業など様々な場所で取り入れられている。本書の作者アン・H. ジャンザー(訳:小巻靖子)は、自身が以前よりもモノを買わなくなり、所有から利用へと購買行動が変化していることに気がつき、その背景にあるサブスクリプションの普及に焦点を当て、本書を執筆した。本書には、サブスクリプションマーケティングにおいて作者が最も重要であると考える「価値育成」を行うための戦略が主な内容として記されている。本書はマーケター、著述家、プロフェッショナルライターなど様々な経歴を持つビジネスウーマンである作者によるマーケター向けの戦略本であるが、身近な企業の事例や、作者の顧客としての経験が多く記されており、顧客側の視点からでも役立つ情報が多い。本書は3パート構成で、更に26の短い章に分けられており、価値育成に関する主な戦略はPart2以降で述べられている。なお、本書は2017年出版であるため新型コロナウイルスの影響は反映されていない。 Part 1 サブスクリプションシフト (1〜5) Part1の1では、タイトルにもある「モノが売れない時代」に欠かせないサブスクリプション(以降サブスク)の広まりと種類についてAmazonをはじめとする多くの事例が挙げられている。サブスクは、身近な消費財からBtoBビジネスの場でも普及しており、最後にはどこでどのような仕事、生活をしているにせよ、私たちは何らかの形でサブスクに参加しているという筆者の主張が記されている。2以降では新たに企業がサブスクリプションサービスを導入する際の問題点や注意点について言及している。顧客にモノを売ることがゴールであった従来型のモデルに比べ、サブスクのマーケティングでは購入後に顧客がその商品、サービスを利用して進んでいくカスタマージャーニーに着目することが鍵となる。購入は始まりに過ぎず、その後いかにして価値を育成し、信頼関係を保っていくかが成功の秘訣であると述べられており、本書のメインテーマである価値育成についての導入部分と言える。ただ、価値育成の戦略についてはPart2で詳しく述べられているため、サブスクというビジネスモデルに元々備わっている顧客にもたらす心理的利点が紹介されている。ここでは認知科学に基づくと、我々は支払いの際に多少なりとも「お金を使うという苦痛」を味わう。サブスクはその苦痛を軽減する。定額制のサービスであれば、商品を購入するかしないかを何度も判断する必要がなく、一度の決断で済む。また、先払いをしてしまえば、後はサービスを存分に楽しむという幸福の追求をするだけであり、購入後の価値の経験を最適化することがマーケターに求められるスキルであるとし、Part2に続く。 Part2 価値育成のための戦略 (6〜20) 冒頭でも述べたように、Part2では価値育成に関する具体的な戦略が述べられている。Part1と比べると説明的で、マーケティングの視点から戦略が列挙されている。作者は価値育成を通じた顧客との信頼関係を特に重視しており、顧客との信頼関係を築くことが既存顧客の維持につながり、安定的な収益源になると述べている。段階に分けた様々なコンテンツの提供が長期利用を促すとし、初期の段階では、スタート時に送るウェルカムメールや説明動画などを通じて顧客が順調にサービスを利用し始めるサポートを行い、慣れてきた頃には利用者の間でのコミュニティに参加させるなどの時期に着目した戦略が紹介されている。また、10では人は決断を下した後にそれを正当化する傾向にあることに着目し、無形の価値、つまりサービスを利用してよかったと思えるようなコンテンツを設けることを促しており、既存顧客の成功談や興味深い活用法などを公開することなどを挙げている。15では、アドボカシー・マーケティングについて、アドボゲイドと呼ばれるロイヤリティの高い熱心な顧客の育成法が挙げられている。アドボゲイドはサービスを他者に薦めたり、好意的なコメントを残すなど非常に重要な役割を果たす。フリーミアムの場合、無料のユーザーからもアドボゲイドは育成されるため、フリープランの充実の必要性を同時に主張している。Part2の最後では、解約時の対応がロイヤリティを高める重要なポイントであると主張している。解約方法が不明確でなかなか解約できないといった事例は度々耳にするが、作者は去ろうとする顧客にしがみつくような見苦しい行動を取ると、二度度その顧客は戻って来ないと述べ、むしろ快く解約を促すような行動は信頼度を大きく引き上げると主張している。 Part3 戦略の実践(21〜26) 最終章のPart3ではPart1、2で理解した価値育成の役割とそのための戦略を実践していく上での組織内部の課題について述べられている。マーケティングチーム、カスタマーサクセスチーム、セールスチームなどそれぞれ異なる役割を持つ部門がどう連携して一つの企業として顧客とコミュニケーションを図っていくか、それに伴う課題やアドバイスが記されている。また、実践した戦略の結果を示す指標であるチャーンレート(離脱・解約率)や顧客維持率の算出法など、これまであまり焦点を当てていなかったデータにも着目している。24以降では、本書を通じて繰り返し述べていた信頼の維持と価値の育成を妨げるリスクと課題が記されている。セキュリティの弱さによって顧客データが危険にさらされた例や、一度契約したら解約が不可能になっていたケーブルテレビなどかなりネガティブな実例が挙げられており、軽い気持ちでビジネスに乗り込むマーケターたちへの警告の意図が汲み取れる。最後には、今までの内容を総括する形で価値育成のための基本ルールを挙げた後、サブスクリプション・エコノミーの未来に関する作者の考察で本編は幕を閉じる。 冒頭でも述べたとおり、当書は2017年に出版された。5年後の社会とサブスクリプションの関わりについて筆者が予想している部分もあり、2022年現在の社会と比較すると面白い。現在では当たり前にあるサブスクリプションが本書では最新の画期的なサービスとして描かれており、サブスクリプションの歴史についても学ぶことができたように感じる。本書の最後に、今回の内容と通ずる作品として「アドボカシー・マーケティング」や「なぜ人と組織は変われないのか」などが挙げられていたのでそれも購読し、より理解を深めてきたい。 英治出版 「サブスクリプションマーケティング−モノが売れない時代の顧客との関わり方−」 2017年11月15日 著:アン・H. ジャンザー 訳:小巻靖子
VRゲーム、価格やソフト数に課題
世界最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ2022」で、米メタやソニーグループが仮想空間「メタバース」への対応を競っている。ともにメタバースへの入り口として使う仮想現実(VR)ゴーグルを来場者が体験できるようにした。普及への足がかりにしたい考えだが、価格の高さや対応ソフトの少なさなど課題も多い。両社ともにVRゴーグルを使ったメタバースが、今後のゲーム市場をけん引すると期待する。だが、普及への課題は多い。本体の重さや長時間装着すると目まいがするといった使い勝手のほか、価格の高さがネックとなっている。どれだけ多くの魅力的なソフトが登場するかが、普及を大きく左右しそうだ。 メタ・ソニー、VR端末競う、東京ゲームショウ、価格やソフト数に課題 2022/09/18 日本経済新聞 朝刊 7ページ
ランサーズ、中小企業に照準を
クラウドソーシング大手のランサーズが新たな収益源を模索している。かつて主力だった大企業向けサービスは新型コロナウイルス禍で需要が縮小し、事業撤退を決めた。足元の株価は上場来高値に比べ8割ほど安い。投資家の期待を取り戻すには、改めて注力する中小企業向けサービスの成長が急務になる。ランサーズは2008年に創業し、インターネット上で仕事の受発注を仲介するクラウドソーシングの草分けとして知られる。運営サイトでは登録人材を実名で紹介し、実績や過去の仕事ぶりに基づいて信頼度を4段階で表示する仕組みを取り入れた。ネットで安心して業務を外注できる点が受け、中小企業を中心に需要を取り込んだ。2014年には大企業から営業やプログラミングといった業務を請け負い、必要な人員を一括で集めるサービスを始めた。これが2019年3月期には売上高全体の約4割を稼ぐ主力事業に成長した。しかし、コロナ禍で大企業向けサービスは顧客企業の業績悪化で新規受注が減った。業績回復に向け、手は打ち始めている。コロナ禍でもデジタル化需要が旺盛な中小企業向けサービスを充実させる方針で、まずは2022年6月にデジタル人材の養成事業を始めた。デジタル広告や電子商取引(EC)サイトの運営などを学べる講座を動画で提供し、受講後は案件も紹介する。 ランサーズ――中小企業に再び照準(上場後のリアル) 2022/09/21 日本経済新聞 朝刊 13ページ
JR東海、「推し旅」で利用者回復目指す
JR東海がアイドルやキャラクターの応援を組み込んだ「推し旅」に力を入れている。推しとは好きなアイドルやキャラクターや、それを熱心に応援することを指す流行語だ。JR東海は2021年11月から「推し旅」を企画して販売してきた。今夏にはアニメ映画「五等分の花嫁」のゆかりの地、名古屋水族館にキャラクターの等身大パネルを使った写真撮影スポットを用意して、人気を集めた。他にも、アイドルグループSKE48の須田亜香里さんのライブも独自に企画し、新幹線や専用バスを組み合わせた旅行も販売した。ニッチな旅行ニーズを掘り起こし、コロナ禍で落ち込んだ利用者の回復を目指す。 2022/09/15 日本経済新聞 7ページ
アニメ新会社、制作者への還元へ
アニメ制作のCloverWorksとウィットスタジオは5月、集英社とアニプレックスと共同で新会社JOENを設立したことを発表した。目的はこれまで製作委員会が担ってきた役割である企画立案から制作までのプロデュースを制作会社が主体となって行うことである。一般的に12話のアニメを制作するには2億~3億かかるとされ、CGを多用する場合、10億円を超えることもあり、製作委員会を構成する複数社による共同出資がほとんどだ。「鬼滅の刃」のユーフォ―テーブルなど、製作委員会を介さずにアニメを作る例も増えており、新会社はアニメ制作会社が政策の主導権をスポンサーから取り戻そうとする試みといえる。 2022/07/07 日本産業新聞 2ページ
書評 瀬戸正則(2017)『戦略的経営理念論 人と組織を活かす理念の浸透プロセス』中央経済社
広島大学教授の瀬戸正則は、「企業組織はいかに運営されているのか、いかなる運営が組織を効率的に機能させ、社会にとって有益なものとなり得るのか」といった問題意識を起点に、経営の根幹をなすとされる「経営理念」の浸透研究を開始した。本書は、著者である瀬戸正則の広島大学博士学位論文を加筆修正の上、出版したものである。 第1章 実務・実践的課題からとらえる経営理念 1章では、筆者が今回の研究で、日本の中小企業とミドル層に着眼することが記されている。 本書の目的は、企業における経営活動上の根幹を表現し、経営成果を導くための内部統制や外部適応を図る際に重要な機能を果たすものとして経営理念に着目し、その浸透を図る必要性や有効性および具体的プロセスについて個別企業の事例をもとに論じることである。 対象とする企業は、非組織的な活動の集団的かつ自律的なコントロールが難しいといったミクロ的な視点から、経営組織としての限界が指摘される中小企業とする。 その中でも、組織内で垂直・水平的で網の目のようなコミュニケーションを積極的に促しながら、企業全体の士気向上を図るといった重要な役割が指摘されるミドルに着目する。 第2章 学説からとらえる経営理念 2章では、先行研究から経営理念の概念定義が確認されている。 学術的には一貫した定義づけが明確にされていない経営理念について、筆者は「創業者や経営の承継者の経営に係る思想・哲学をもとに、何のための経営であるかを表明したものであり、経営組織全成員で理解し共有すべき指針を明示した、動機づけおよびコミュニケーションのベース」と概念規定した。 経営理念のもつ潜在的な利点に言及した先行研究では、行動と決断を導く拠りどころとして組織成員を動機づけることが挙げられている。しかし、その浸透がいかなる条件下で、いかなるプロセスを経てなされるのかといった観点からの具体的な知見は得られていない。さらに、そのほとんどは大企業を対象として見いだされた内容である。全企業数の99.7%を占め、非組織的意思決定の役割が相対的に大きい中小企業を対象とした経営理念の研究は未だ多くない。以上から、中小企業の経営理念に着眼する意義が再確認できる。 第3章 経営理念の必要性と有効性 3章では、本書のリサーチ・クエスチョンが設定され、ミドル・アップダウンマネジメントに関する先行研究についてさらなる考察がされている。 3つのリサーチ・クエスチョンを設定する。1つ目は、「非組織的な意思決定や活動が指摘される中小企業において、経営理念の浸透を図ることの必要性や有効性は何か」。2つ目は、「中小企業の経営理念浸透プロセスにおいては、組織内の結節点に位置づけられながら、経営活動上の重要な役割を担う人材として先行研究が指摘するミドルに対し、いかなる機能の発揮が求められるのか」。3つ目は、「経営理念が浸透する様相はいかなるプロセスやフェーズで示されるのか」である。 これらを明らかにするため、ケーススタディを実施する。従来の先行研究では、産業革命に始まる製造業を対象とした内容が多いが、今後はサービス業を含めた研究が必要といった指摘がある。そこで、本書の研究対象の業種は、顧客との直接的な関係を保持しながら、無形かつ提供と消費の同時性が指摘される役務を提供する、サービス業とした。 野中・竹内(1996)が提唱する「ミドル・アップダウンマネジメント」とは、ミドルの果たす役割の重要性を明らかにした研究である。ミドル・マネージャーは、経営トップがもつビジョンとしての理想と、第一線従業員が直面することの多い錯綜した市場の現実や、彼らのもつ現場感覚との矛盾やズレを発展的に解消し、両者をつなぐ戦略的な結節点としての役割を担う存在として位置付けている。加えて、ミドルは、組織において経営トップや一般従業員を巻き込みながら、組織変革を遂行する中心的役割も担っていると主張している。この先行研究から、経営理念の浸透促進に関して、ミドルに着眼する意義が再確認できる。 第4章 経営理念の戦略的活用事例 4章では、調査対象と手法が記され、分析視座が記されている。 研究を進める方法として、個別経営にみられる一貫性に焦点を当てた研究に対し有効な方法と考えられる個別事例研究法(ケーススタディ)を用いる。具体的手法としては半構造化面接法を採用する。会社法の規定を援用し中小企業の概念定義を行い、面接調査対象は広島の地元企業2社となった。ベンチャー型の中小製造業である(株)パールスターと、冠婚葬祭業を営む同族経営A社である。 調査結果を分析するにあたり、3つの視座を構築する。1つ目は、非組織的経営活動が、経営理念の浸透プロセスにどのような影響を及ぼしているのか。2つ目は、経営理念浸透プロセスにおいて、どのようにミドルが一般従業員に対する理念浸透を働きかけているか。3つ目は、経営理念の浸透促進に向けた取り組みを評価し、次のステップへつなげていく相互作用のプロセスがいかに形成されているかである。 第5章 理念が戦略的に活きる経営の本質 5章では、2社の調査結果が報告されている。 最初に、経営理念に対する考え方として、A社トップは、「経営者が交代しても、会社運営の基軸や提供サービスの質も不変で、平然と経営がなされていることが、顧客の信頼を得て、企業価値の向上を図る大きな要因となる。経営理念はそのためのツールである。」と考え、創業以来の経営理念を徹底している。一方で、(株)パールスタートップは、「組織経営の本質は、経営トップ自身が学習し、自身の精神を成長させることにある」と考え、「トップの姿勢が経営理念」という共通言語を組織内外に伝播している企業である。 インタビュー調査を通して、経営トップの経営理念の捉え方として、「経営理念とは、経営者の人生観そのものを表現したものであり、企業業績悪化などの非常時に従業員の一体化をもたらし組織力を高める有効性があるもの」ということが明らかになった。経営理念の浸透を図る目的は好業績の確保ではなく、会社の非常時・緊急時における人心掌握にあるようだ。 前章で記した視座に基づいて調査結果を分析する。一点目は、同族者への経営権の継承といった非組織的活動が、組織成員の士気低下といった悪影響は見られず、経営トップの理念に依拠する高い倫理性に基づいた日々の姿勢が、組織成員に信頼性や安心感を知覚されながら強く支持されていた。二点目は、ミドルに求められる資質として、素直さに代表される人間性と、自立性が挙げられた。経営トップの考え方を自身へ内在化させ、一般従業員には言葉を変えてわかりやすく伝える社内コミュニケーションの促進を補完する役割が求められる。三点目は、経営理念の浸透を図る手法として、経営理念の具現化に向けた具体的行動目標をスローガンとして毎年設定することが挙げられる。しかし、組織成員の心にまで落とし込むには、人格を尊重しながらの対話を反復継続していく必要があるようだ。すべての企業に共通する経営理念の浸透に有効な直接的な制度はないが、企業それぞれの理念を基軸とした戦略経営に強くこだわっていく特長のあるビジネスモデルは、簡単な手段による他社の模倣が困難となることは明らかだ。 第6章 経営トップと中核人材が戦略的に導く理念経営 6章では、調査結果がアイデンティティの面から考察され、概念関係図を完成させた。 組織成員の個人的アイデンティティを尊重しながら、同一化を強制しないことが原点となり、経営トップの個人的アイデンティティが経営理念とほぼ同一化している時、経営理念の浸透プロセスが機能すれば、組織成員が知覚し受容するアイデンティティを活用した協働体制の構築にもつながるとして、組織成員のアイデンティティを活かした経営理念浸透プロセスについて、諸概念の関係性を示すモデル図を完成させた。 第7章 戦略的経営理念の構築に向けて 7章では、今回の研究が総括されている。 経営理念とは、とくに意思決定時における自らの判断のぶれに対し、その検証や是正を図る唯一の指針と捉えることが出来る。今回調査対象にしたサービス業においては、従業員と顧客がコミュニケーションをとるなかでお互いの感情が直接的に深く見えてしまう。マニュアルワークでは補いきれない、従業員と顧客の相互作用による不確実性に経営理念の浸透を図る有効性が見えてくる。 組織成員が、組織統合力の強化をもたらす個人や集団としての、アイデンティティの知覚や高揚感を自覚することが、組織内外との相互作用を通じてアイデンティティの知覚に至るプロセスの存在が明らかになった。 経営理念に関する研究は、各経営組織の特異性が強く、個別事例を見ていくしかない研究が多い特徴がある。全体を俯瞰し、経営理念の浸透に有効とされる確実な理論は見つかっていないのが現状だ。 本著において、経営理念を企業文化ではなく戦略として捉える点が興味深かった。営利組織として、経営理念や組織文化、福利厚生などは直接的な利益につながらないと敬遠されることもあるが、経営理念の浸透が「企業業績悪化などの非常時に従業員の一体化をもたらし組織力を高める有効性がある」との見解が新たな知見として得られた。 まだ経営理念のどのような側面に注目して研究したいかが明確ではないが、経営理念の浸透は各企業のユニークな施策に託されるとして、勤続年数と経営理念の関係など、採用の側面から経営理念を紐解いても面白いのではないかと感じた。 中央経済社 『戦略的経営理念論 人と組織を活かす理念の浸透プロセス』 2017年7月20日発行 著者 瀬戸正則
書評「アニメプロデューサーになろう!アニメ「製作」の仕組み」
本書ではアニメーションプロデューサーに必要な「今現在の常識」を一気に学べることを目標に書かれた本である。アニメプロデューサーにはアニメを「商品」として見る立場の「製作」とアニメを「作品」として見る立場の「制作」の2つがあり、役割が違ってくる。コンテンツ産業のアニメは海外でも人気が高く、クリエイティブの面でもレベルが高いが、ビジネス面の「製作」では発展途上の段階であると主張されており、「この先」を作るためにアニメ業界のビジネスモデルやアニメ製作の大枠について詳しく解説されている。著者は福原慶匡で、ヤオヨロズ株式会社取締役兼プロデューサーである。彼は、もともとは音楽業界で働いていたが、後にアニメに興味を持ち、アニメ製作の仕事に携わり続け、「直球表題ロボットアニメ」やヒット作「けものフレンズ」などを担当した。第一章 「自己紹介」 一章では著者の福原慶匡の自己紹介と共に音楽のプロモーターであった著者が「けものフレンズ」に至るまでの軌跡について述べられている。著者が担当した「直球表題ロボットアニメ」「みならいディーバ」「てさぐれ!部活もの」「けものフレンズ」の製作の中で実際に苦労したことなども書かれている。第二章 「問題設定」 二章ではアニメ業界で問題になっているアニメ制作会社の貧しさを中心に述べられている。アニメ制作会社の貧しさの要因として製作委員会が挙げられ、製作委員会のリスクヘッジによる作品への投資の分散、製作委員会の著作権所持がアニメ制作会社を貧しくさせていると説明している。また、アニメ業界が前の広告収入方式のビジネスモデルから製作委員会方式のビジネスモデルになった経緯を紹介するとともに製作委員会方式のビジネスモデルがアニメ制作会社を貧しくさせていった経緯も紹介されている。そこでアニメ制作会社を儲かるようにするには委員会に入る企業が「クリエイターにお金を払うべき」という理念で委員会運営を行うことでクリエイターに印税を発生させること、オリジナルアニメで原作の権利を持ち二次利用できるようにすること、予めライセンスアウトをすることが決まっている企業と最低保証金額を約束し、保証金を前払いしてもらうことが挙げられていた。加えて、このような問題を解決していくにはプロデューサーはアニメ制作会社の現状を知るべきであり、ビジネスのみではなく、アニメ製作の基礎知識も学ぶ必要があるとも論じられている。第三章 「アニメ制作の流れ」 三章では「アニメ製作」の流れの中でプロデューサーが関わってくる部分を詳しく紹介している。まず、資金調達と人材確保に注目している。資金調達の面では、製作委員会以外の資金調達の仕方を紹介し、メリットやデメリットを上げている。人材確保の面では、予算の管理から人材をどの程度導入するのかを例を挙げ、紹介したり、人材確保による地方アニメスタジオのメリットを説明したりしている。そして、プロデューサーが関わるアニメ制作の流れとして、設定やキャラクターデザインのチェックや脚本に関しての「本読み」、録音やアフレコ、ダビング、V編のアニメ制作の後半の部分を詳しく紹介されている。特に、声優の部分は詳細に紹介されており、キャスティングやアフレコ、給料がどのように決まるのかが述べられている。また、アニメの宣伝やイベントについてもそれにかかる費用と関連付けて紹介されている。第四章 「知っておきたい関連業界のビジネスモデル」 四章ではアニメの製作に関連する様々な業界、映画や出版、配信サービス、音楽についての詳細を著作権や印税と絡めて紹介している。例えば、音楽であれば、著作権には二種類あり、作詞家や作曲家に付随する著作権と原盤の作り手に付随する著作隣接権があり、それぞれに印税が支払われるなどと説明されている。そして、製作委員会には音楽や出版などに関連した会社が参加しており、それぞれの会社がそのジャンルの作品の著作権を所持し、ビジネスを展開していくため、製作委員会でもそれぞれ違うビジネス戦略を考えなくてはならないと論じられている。また、時代が変化していくうえでアニメの関連業界も変化していくため、アニメ製作もそれに合わせて変化させていかなくてはならないと述べられている。 第五章 「知っておきたい著作権と契約の骨格」 五章ではアニメ製作プロデューサーが知っておくべき著作権の基礎知識と契約の中での落とし穴などが開設されている。アニメプロデューサーはコンテンツビジネスにおいて著作権法の基礎知識は必要不可欠であり、トラブルを避けるために必須な知識であると論じられている。加えて、クリエイター側にもパクリやトレース問題などの問題を引き起こさないためにも最低限の権利の知識は必要であると述べられている。契約に関しても、あいまいな表現を使い、相手がこちら側よりも有利な立場に立とうとする契約もあるため契約書の確認の重要性を主張している。 第六章 「アニメーションプロデューサーになるには?」 六章ではアニメーションプロデューサーと製作プロデューサーのなり方とアニメーションプロデューサーの一日の仕事を著者の経験をもとに紹介されている。そして、著者が考えるプロデューサーに必要なことも書かれており、人間にしか生み出せない価値を創造する「Creative」、大切なものを見抜き、物事の中心を見極める「Core」、好きなことに偏る「Challenge」、腹を割って話し合い、意見を調整する「Communication」、作品をヒットさせるために一番考える必要がある「Customer」の5つのCが重要であることを論じている。本書を読んで、自分が知る知識以外の製作の部分の製作の資金の面や制作の後半の作業、プロデューサーのアニメ業界に関連する他の業界との関わりについて深く知ることができた。自分では、アニメ業界での問題の認識はしていたが、なぜその問題が解決されないのかは知らなかったため、この本を通じてもう少し深くビジネスの面も含め、考えなければならないと再認識した。今回の本は、アニメーションプロデューサーの基礎知識が大半であり、アニメ業界の問題についてはわずかであったため、今後はアニメ業界が解決すべき問題に関する書籍を読みたいと思った。