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卒論

2023年度卒業論文 関口颯斗

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卒論 第6章

5章では現在、アニメ産業を発展させるためにアニメクリエイターの労働環境を改善する企業の動きについて紹介した。今までは委員会側とスタジオ側で分かれており、完全にお互いのことを把握することができず、薄給や長時間労働などの問題が起きていたが、アニメ製作を一貫して行うことによって、お互いに意思疎通することが容易になり、お互いが納得するようなアニメ制作の労働環境になるのではないかと考えると言う一例である。この様に製作側と制作側が一つになることによって資金力が大きくなるため、アニメ制作の設備を充実させることができ、作業の効率化を図ることができると共に多くの資金を投じて今までよりも大きなコンテンツを作り出すことが可能となる。つまり、労働環境の改善と強力なコンテンツ制作の2つの要素からアニメ産業を発展させることができるのだ。その例として海外のディズニーが存在する。ディズニーはピクサーや20世紀FOXなどの複数の会社を買収し、現在、ハリウッドで一番大きな総合エンタメ企業となっている。ディズニーは年収も労働時間も申し分なく、労働環境は良好である。さらに誰もが知るようなコンテンツを何作品も制作しているため、コンテンツ制作力も高く、世界のコンテンツ産業を牽引している。 これらの事例を含め、アニメ産業を発達させるには「アニメを企画する製作委員会側とアニメを作るスタジオ側で分かれずにアニメ製作の工程を一貫して行える巨大な総合エンタメ企業を作るべきである」と考える。 具体的にはバンダイやソニー・ミュージックのような既存のエンタメ企業が複数のアニメスタジオを買収し、一つの大きな総合エンタメ企業を設立するということである。 このように、日本にアニメ製作を一貫して行える大きな総合エンタメ企業を作ることによってクリエイターの労働環境も改善されると共にアニメ業界のコンテンツ力も強化され、今後のアニメ産業が発展し続けていくと考えられる。 現在、アニメ産業は10年前と比べ、市場規模は2倍以上拡大し、日本が誇る成長産業の一つとなっている。また、今まで普及していなかった世界からの注目も集まっており、これからもさらにアニメ市場は拡大していくだろう。しかし、アニメ業界の発展の懸念点となっているクリエイターの過酷な労働環境についてはようやく改善の糸口が見えてきたが、業界全体では労働条件の改善は浸透していないため、今後クリエイターが減少し、アニメ自体が作れなくなる可能性がある。これからも高クオリティのアニメ作品を制作し、日本の文化であるアニメを益々成長させていくためにも早急に業界全体がクリエイターファーストの意識をもってアニメ制作に取り組まなければない。

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卒論

2023年度卒業論文 関口颯斗

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卒論 第五章

第五章 アニメ産業の成長を止めないためには 現在、製作委員会方式によってアニメ作品の本数は増え、日本のアニメ産業は格段に成長しており、市場規模は1.3兆円から2.7兆円と2倍以上に拡大しており、今後も成長していく日本が誇る産業である。しかし、第3章、第4章でまとめたように作り手であるアニメクリエイターの厳しい労働問題は未だに改善されていない状況である。そのため、アニメ産業の成長を止めないためにもクリエイターの労働問題は早急に改善すべきである。具体的にはアニメ制作会社の著作権非所持による追加利益がない問題、クリエイターの短期間のスケジュール設定による過重労働と不十分な制作費による薄給の問題、若手の過酷な労働問題の3つの問題を解決すべきである。そして、現在これらの問題に対して対処しようとしている例もあり、それを含め考察する。 まず、アニメ制作会社の著作権の問題だ。この問題を解決するには制作会社が著作権を有し、著作権の二次利用を行う必要があると考える。現在、製作委員会方式によって著作権は製作委員会が有しており、制作会社は制作費以外の売上がない状態であり、業界全体の4割が赤字経営を強いられている。そこで近年、市場が増加傾向であるキャラクターグッズの販売を制作会社が行うことによって、制作会社の赤字経営を免れることができたり、クリエイターへの十分な給料の支払いができたりする。 この政策を行ったのが株式会社MAPPAである。MAPPAは人気漫画「チェンソーマン」のアニメ化にあたって製作費を100%自社で出資し、著作権を有して2次利用によるビジネスを制作会社のみで行った。結果は成功しており、今後は2次利用のターゲット層を模索していくと今後の単独出資にも前向きな姿勢である。 さらにこの政策の他にもNetflixなどの外資系配信会社がもたらそうとしているビジネスモデルがポスト製作委員会となりうる。このビジネスモデルはNetflixが一部制作費を出す代わりに配信権だけを主張し、著作権は制作会社に留保されるというビジネスモデルであるため、この方法も製作委員会による著作権問題を解決できる。 次に、クリエイターの短期間のスケジュール設定による過重労働と不十分な制作費による薄給の問題だ。この問題を解決するにはアニメ制作会社の著作権の問題の解決策と類似しているが、1社で企画から制作までアニメ制作を一貫して行えるようにする必要があると考える。短期間のスケジュール設定と不十分な制作費の問題は企画側である製作委員会が制作スタジオの事情を無視し、利益の追求によって起こったり、企画側と制作スタジオとの連携不足により起こったりするものである。そのため、企画側と制作側を1社で完結させることによって必要なスケジュールや制作費の理解が容易となり、制作側に必要となる労働環境が整うのではないかと考える。 この体制を導入したのが2022年5月に設立された株式会社JOENだ。この会社はアニメメーカーのアニプレックスと出版社の集英社、制作会社のCloverWorks、ウィットスタジオが共同出資によって設立された会社で有力スタジオであるCloverWorksとウィットスタジオが主体となって連携し、企画立案からすべての工程に関わり、アニメ作品をプロデュースする。現在は目立った成果はないものの制作スタジオ、クリエイターの貢献に合わせて利益を還元し、質の高いアニメーションを継続的に制作する環境を整える新たなアニメの構造の軸を作っていくことを目指している。 また、クリエイターの過重労働を減らすための方法としてアニメの作品数を減らすことが有効であると考える。テレビアニメの製作本数は2010年代前半までは1年間に約200本だったのに対し、現在は1年間に約300本のペースで作られており、アニメクリエイター1人当たりが行う作業量も増えてきている。さらに年々、アニメのクオリティは格段に上がっており、10年前よりも1つの作品を作る際の作業量も増えている。その一方で放送されているテレビアニメの8割は赤字であるのは未だに変わっていない。それならば作品数を減らし、クリエイターに十分なスケジュールを与えるべきであると考える。 実際にテレビアニメ「鬼滅の刃」を手掛けるufotableはクオリティの維持、クリエイターの労働環境の改善を目的とし、受け持つアニメ制作本数を絞っており、その結果として他の制作スタジオに比べ離職率が低くなっている。 不十分な制作費による薄給の問題に関してはクラウドファンディングやクリエイター個人への寄付が方法として挙げられると考える。アニメファンには熱狂的なファンが多く存在しており、過去に高額なクラウドファンディングで数々の作品のテレビアニメ化が決定したり、続編の製作が決定したりしている。また、アニメーター個人を直接支援できるPIXIV FANBOXというサービスもあり、消費者が直接クリエイターに利益還元する方法もこの問題を解決する有効な方法であると考える。 最後に若手の過酷な労働問題だ。この問題を解決するには日本政府が若手アニメーターを支援する政策を行う必要があると考える。アニメは世界に誇る日本の大きな文化であり、今後その文化を担っていくのが若手アニメーターである。日本政府は将来、アニメという日本を代表する文化を維持していくためにも若手アニメーターを支援することは必須である。具体的には給料が低く、生活が厳しい若手アニメーターには給付金を支給したり、制作スタジオ近くに寮を設置し、生活を支援したりし若手アニメーターが生活に困らない環境を作っていく。さらにアニメーターのコミュニティを作り、定期的な講習会を行うことで若手の成長できる環境も整える。日本政府がこのような施策を行うことによって、若手アニメーターの過酷な労働問題は解決されるだろう。 業界の大半は未だにクリエイターの労働問題を放置しているが、問題の解決策として挙げたいくつか事例のように一部では改善しようという動きが見られており、アニメ業界はこのようなクリエイターの労働環境の改善を行う企業に続いて効果的な施策を行ってほしい。

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卒論 第三章

第三章 アニメクリエイターの労働環境 製作委員会方式によりアニメが作りやすくなり、アニメ業界は一層発展し続けている一方で、「アニメクリエイターの労働環境の過酷さ」について問題視されている。この章ではアニメクリエイターの現在の労働環境、労働環境が過酷な理由について説明していく。 一般社団法人日本アニメーター・演出協会(JaniCA)が2019年に発表した「アニメーション制作者実態調査報告書2019」によると、アニメ制作職給与平均が440万円であり、民間平均給与平均の432万を超えた。一見するとアニメ制作職は給与が高いと思われるが、職種別にみるとランキング下位の動画や第二原画は平均年収が130万円程度と非常に低い給与水準となっている。さらにアニメーターの中でも格差が生れており、腕のあるアニメーターには制作会社が出来高とは別に一定額を上乗せして確保する拘束料という上乗せ金額が月20~30万円支払われ、ベテランや中堅のアニメーターは給与が上がっている一方、動画や第二原画を担当する若手アニメーターには拘束料は支払われないため、若手アニメーターは現在も生活が厳しい状態である。 また、働く時間に関してだが、1日あたりの平均作業時間は9.66時間、1カ月あたりの平均作業時間は230時間、1カ月当たりの平均休日は5.4日であり、アニメ制作職の忙しさが伺える。 このようなデータに加え、仕事上の問題についてのアンケートでは「仕事のスケジュールの調整が難しい」、「時間的な余裕がない中での仕事を強いられる」、「報酬その他についての交渉力が低い」という問題が上位に挙がっていたり、安心して仕事に取り組むために必要なことについてのアンケートでは「報酬額が増えること」、「より質の高い仕事をするために適切な時間やスケジュールが管理されること」が上位に挙がっていたりすることから現在のアニメクリエイターの労働環境は報酬の面とスケジュールの面が過酷な環境となってしまっている。 ここまでアニメクリエイターの過酷な労働環境について紹介してきたが、次にこのような環境に至った経緯について説明する。 昭和38年、日本の国産連続TVアニメ第1号となる手塚治虫原作の『鉄腕アトム』が手塚が創立した虫プロダクションという制作会社で製作され、1963年1月1日からフジテレビ系列で25分放映された。その際の制作費は155万円程で当時の子供向けの実写番組の制作費を参考に設定したようだ。しかし、アニメは実写の何倍も手間がかかるため、その価格での製作は厳しい。実際、同時期に東映動画(現・東映アニメーション)は長編アニメ『わんぱく王子の大蛇退治』を製作しており、85分で製作費は7000万円だった。1分あたり82万円であるため、実際に必要であった制作費は『鉄腕アトム』は82万✕25分で、2050万円であった。その後、1963年秋からTCJ(現・エイケン)の『鉄人28号』『エイトマン』、東映動画の『狼少年ケン』が放映されたが、この2社も虫プロダクション同様、非常に安い価格で制作を受注したり、低予算で制作を押し付けられたりし、アニメ制作費が極端に少ないという状態になった。 そして、今日、業界では新作アニメが年間を通じて休みなく放送され、昔に比べ、作品本数も格段に増えていっている。一見、アニメ産業が成長していることを示しているように思えるが、実際はクリエイターにかなりの負担が生じており、業界全体の人手不足という問題とも合わさり、非常に過密なスケジュールになってしまっている。さらに、年々、要求されるアニメのクオリティも高くなっており、益々制作現場はスケジュールコントロールが難しくなっている。そこに製作委員会方式による厳しい納品日設定によってクリエイターの余裕はほとんどなくなってしまっている状況である。※引用 http://www.janica.jp/survey/survey2019Report.pdf https://animedetabetai.com/anime-creator-fact-finding-report-2019-02/  

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卒論 第二章 (訂正版)

第二章 製作委員会の歴史とメリット、デメリット   第二章では前章で紹介したアニメを作る際の主なビジネスモデルである「製作委員会方式」の歴史やメリット、デメリットについて確認していく。   現在ではアニメの出資元のほとんどが製作委員会となっているが、それはここ十数年ほどのことである。1990年代後半から次第に製作委員会方式が増え始める以前は、映画会社や製作会社が単独で製作、もしくはテレビ局などの共同製作という形をとっていた。また、海外のハリウッドでは日本と違い、現在でも製作会社一社に著作権を集中させるのが主流である。   日本に製作委員会が生れたのは日本映画の衰退化と大きな関係がある。60年前の日本映画は絶頂期であり、大いに儲かっていた映画会社が100%出資で映画を製作していた。しかし、1970年代に入ると経営が苦しくなった映画会社は制作部門をリストラするなど資金力不足に陥っていた。そんな中、映画会社は作品に興味を示した他の映画会社に声をかけ、製作委員会を組成して映画製作の資金を集めていた。その代表が、1970年代中盤から大ヒットを生み出した角川映画であり、1991年の「天河伝説殺人事件」という映画には角川書店の他に「日本テレビ放送網、近鉄百貨店、奈良交通、電通、東京佐川急便、バンダイ」などが共同製作として名を連ねており、これが製作委員会の雛形となった。その後、その年代の劇場アニメ「AKIRA」や1995年に放送が開始されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』などで製作委員会が組成され、その際に作られた製作委員会が後のテレビアニメのアニメ製作委員会の雛形に引き継がれていった。それ以来、複数の企業が出資を行う製作委員会方式でのアニメ作りが業界で定着し、現在のオタク向けや漫画・ライトノベルなどの紙媒体の原作からなるアニメも製作委員会方式で作られるようになった。   次に製作委員会方式のメリット・デメリットについて整理する。 製作委員会方式により大きく変化した部分は制作費が全額支払われるようになったことと著作権が製作委員会に移ったことであり、まず、この変化に伴うメリット、デメリットを説明する。 製作委員会方式以前の製作方式であった「広告収入方式」ではテレビ局が制作会社に支払う「制作費」は実際に制作する金額よりも少ないことが商習慣になっていたが、著作権は制作スタジオに帰属しており、制作会社はライセンスによる二次利用で収支を合わせなければならなかった。一方、製作委員会方式になってからは全額、製作委員会から制作スタジオに制作費が支払われるようになったが、著作権は製作委員会に移り、二次利用の収益が全くなくなってしまった。これにより、製作委員会方式に伴う制作費の増額と著作権の移動が作品がヒットしなかった時にはメリットに、作品がヒットした時にはデメリットになる。作品がヒットしなかった場合は、二次利用での利益は得られないものの、全額支払われる制作費により大幅な赤字を免れることができ、製作委員会方式による制作費と著作権の変化がメリットになる。しかし、作品がヒットした場合、制作費の全額は支払われるものの、ヒットした作品の二次利用での莫大な利益は全くもらうことができないため、製作委員会方式による制作費と著作権の変化がデメリットになってしまう。 このように、製作委員会方式による制作費が全額賄われるようになったものの著作権は製作委員会に移動してしまったことは作品のヒットの具合によってメリットやデメリットになりうる。 次に製作委員会方式だから生じるメリット、デメリットについて説明する。 製作委員会方式のメリットとして「資金リスクの分散」がある。 現在、日本のアニメ作品はクオリティが高い作品が数多く製作されており、競争力が高まっている。それに伴い、アニメ制作に投入されるコストも以前よりも増加しているが、アニメは放送するまでヒットするかが分からないのが実情である。その点、複数企業が出資を行う製作委員会方式であれば、出資リスクが分散されることが可能であると共に大口のスポンサーの撤退・倒産により制作が続けられなくなるリスクも防止することができる。また、複数の企業が関わることで広範な広告宣伝や、多種多様なメディアミックス・二次展開にも期待できる。製作委員会に参加する企業は、それぞれのネットワークやリソースを利用して、様々な宣伝やプロモーションを行うことができるため、出版社が参加していれば小説やマンガでの展開、レコード会社が参加していればキャラクターソングやライブ、ゲーム会社が参加していれば関連ゲームの製作販売など、多種多様な収益源を作り上げることができ、プロジェクト全体の成功確率を上げることが可能だ。 一方、デメリットは複数企業からなる団体から起こる「方向性の不一致によるトラブル」だ。製作委員会では多様なバックグラウンドを持つ出資企業が参加するため、意見の違いが表面化しやすくなり、全体としての方向性を見失ったり、作品のクオリティが低くなったりしてしまう可能性がある。さらに製作委員会方式では制作費用を抑えるためにクリエイターの報酬が低く抑えられることが多々あったり、締め切りに間に合わせるために過酷なスケジュールが組まれることがあったりし、長時間労働や過労が常態化している現状である。また、製作委員会方式は出資企業が主導権を握ることが多く、作品のクリエイティブな側面が犠牲になることもあり、出資企業の収益性や商業的な成功の追求により、アニメ業界の多様性が失われ、新たな才能や革新的なアイデアが育たなくなる危険性がある。

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卒論 第二章

第二章 製作委員会の歴史とメリット、デメリット 第二章では前章で紹介したアニメを作る際の主なビジネスモデルである「製作委員会方式」の歴史やメリット、デメリットについて確認していく。 現在ではアニメの出資元のほとんどが製作委員会となっているが、それはここ十数年ほどのことである。1990年代後半から次第に製作委員会方式が増え始める以前は、映画会社や製作会社が単独で製作、もしくはテレビ局などの共同製作という形をとっていた。また、海外のハリウッドでは日本と違い、現在でも製作会社一社に著作権を集中させるのが主流である。 日本に製作委員会が生れたのは日本映画の衰退化と大きな関係がある。60年前の日本映画は絶頂期であり、大いに儲かっていた映画会社が100%出資で映画を製作していた。しかし、1970年代に入ると経営が苦しくなった映画会社は制作部門をリストラするなど資金力不足に陥っていた。そんな中、独立系の映画会社が意欲的に製作に乗り出すことが多くなり、映画会社は作品に興味を示したパートナーに声をかけ、製作委員会を組成して映画製作の資金を集めていた。その代表が、1970年代中盤から大ヒットを生み出した角川映画であり、1991年の「天河伝説殺人事件」という映画には角川書店の他に「日本テレビ放送網、近鉄百貨店、奈良交通、電通、東京佐川急便、バンダイ」などが共同製作として名を連ねており、これが製作委員会の雛形となった。その後、その年代の劇場アニメ「AKIRA」や1995年に放送が開始されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』などで製作委員会が組成され、その際に作られた製作委員会が後のテレビアニメのアニメ製作委員会の雛形に引き継がれていった。それ以来、複数の企業が出資を行う製作委員会方式でのアニメ作りが業界で定着し、現在のオタク向けや漫画・ライトノベルなどの紙媒体の原作からなるアニメも製作委員会方式で作られるようになった。 次に製作委員会方式のメリット・デメリットについて整理する。 まず、製作委員会方式の最大のメリットは「資金リスクの分散」である。 現在、日本のアニメ作品はクオリティが高い作品が数多く製作されており、競争力が高まっている。それに伴い、アニメ制作に投入されるコストも以前よりも増加しているが、アニメは放送するまでヒットするかが分からないのが実情である。その点、複数企業が出資を行う製作委員会方式であれば、出資リスクが分散されることで、投資の失敗リスクを減らすことが可能であると共に大口のスポンサーの撤退・倒産により制作が続けられなくなるリスクも防止することができる。 さらに、複数の企業が関わることで広範な広告宣伝や、多種多様なメディアミックス・二次展開にも期待できる。製作委員会に参加する企業は、それぞれのネットワークやリソースを利用して、様々な宣伝やプロモーションを行うことができるため、出版社が参加していれば小説やマンガでの展開、レコード会社が参加していればキャラクターソングやライブ、ゲーム会社が参加していれば関連ゲームの製作販売など、多種多様な収益源を作り上げることができ、プロジェクト全体の成功確率を上げることが可能だ。 また、以前の製作方式であった「広告収入方式」ではテレビ局が制作会社に支払う「制作費」は実際に制作する金額よりも少ないことが商慣習になっていたが、製作委員会方式になってからは全額、制作費が支払われるようになったこともメリットとして挙げられる。 一方、製作委員会方式の最大のデメリットは「クリエイターの労働環境の悪化」である。 製作委員会方式では、仮にアニメがヒットした場合、製作委員会に名を連ねている企業に出資比率に応じて利益が配分されるが、アニメの制作会社が製作委員会に名を連ねていない場合、金銭的なリターンはほとんどない。さらに制作費用を抑えるためにクリエイターの報酬が低く抑えられることが多々あったり、締め切りに間に合わせるために過酷なあスケジュールが組まれることがあったりし、長時間労働や過労が常態化している現状である。また、製作委員会方式は出資企業が主導権を握ることが多く、作品のクリエイティブな側面が犠牲になることもあり、出資企業の収益性や商業的な成功の追求により、アニメ業界の多様性、新たな才能や革新的なアイデアが育たなくなる危険性がある。結果として、制作スタッフの薄給や慢性的な人手不足、労働環境の悪化、モチベーションの低下に繋がってしまう。 そして、複数企業からなる団体から起こる「方向性の不一致によるトラブル」も問題となっている。製作委員会では多様なバックグラウンドを持つ出資企業が参加するため、意見の違いが表面化しやすくなり、全体としての方向性を見失ったり、作品のクオリティが低くなったりしてしまう可能性がある。

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卒論 第一章

第一章 「アニメ業界の構造とお金の流れ」 この章では、アニメはどのように作られているのかアニメ業界のビジネスモデルやアニメ製作の全体像を確認していく。 その前に今後、何度も出てくるアニメーションビジネスにおいての「製作」と「制作」の違いについて説明する。製作と制作では仕事の領域が違い、アニメを「商品」として見る立場であり、作品の企画から資金集め、制作の手配、資金回収を行うのが「製作」、アニメを「作品」として見る立場であり、作品を直接作る実作業を行うのが「制作」である。また、作品の権利を取得できるのが「製作」であり、権利の運用を行う製作委員会がこれに値する。このように「製作」とはアニメを作らせること+作品の責任を取ることであり、「制作」はアニメを実際に作ることである。 前提である「製作」と「制作」の違いを確認したところで、本題であるアニメ業界の構造について説明する。 日本のテレビアニメは現在、製作委員会方式というビジネスモデルが主流であるが、この方式が主流になる以前は「広告収入方式」が一般的であった。 広告収入方式とは一般のバラエティ番組などと同じ番組製作の方式であり、スポンサーが広告代理店を通じてテレビ局にお金を払い、テレビ局がアニメ制作会社に制作費を支払う形の製作方法である。広告代理店は取引手数料、テレビ局は電波料を取り、残ったスポンサー料がアニメの制作費となる。そして制作会社にはアニメの制作費に加えて著作権を有することができるため、ライセンスを基に二次利用を行うことができる。この方式は「みんながアニメを観ていた時代」である1990年代に成立しやすかったモデルであり、代表例として「ONE PIECE」や「ドラえもん」などがある。 次に現在、主流となっている「製作委員会方式」について説明する。 製作委員会方式では、パッケージ会社やグッズ会社、テレビ局などの複数の会社がお金を出し合って製作委員会という組合を組成し、その委員会が制作会社に対して作品の発注を行う形の製作方法である。 製作委員会方式は簡単に説明すると以下のような仕組みである。 ①製作委員会を組成し、幹事会社はメンバーから出資を集める。②製作委員会は、テレビ局に対して番組提供料(テレビ放映を行う時間帯の枠代)を支払う。③製作委員会は、制作会社に作品づくりを委託し、制作費を支払う。④制作会社は作品を制作する。⑤製作委員会は著作権を有するとともに、各メンバー企業がそれぞれの分野で役割(窓口権という)を有し、それぞれのビジネスを行う。 現在のテレビアニメは1クール3億前後かかるのが普通であり、おおよそ3億程度の費用がかかる。主なコストは「制作費」と「提供料」、「宣伝費」だ。 「制作費」は1話1500万円前後なので12話合計で1億8000万前後アニメスタジオに支払われる。アニメ制作会社には「元請け」と「下請け」があり、製作委員会から直接発注を受ける「元請け」は1話まるごとや一部パートを美術やCGの「下請け」に1話あたり600万円で受注する。 そして、出来上がったアニメを放映してもらうためにかかる費用が「提供料」だ。キー局であれば、深夜の枠でどんなに安くても1クール3000万以上で高額である。しかし、提供費用の対価としてCMが放送することができるため、製作委員会に参加している会社の商品のPRを行うことができる。 最後に、その放映するアニメを多くの人に見てもらうために必要なのが「宣伝費」であり、現在の30分の深夜アニメでは約1000万円~約2000万円かけている。 次に収入の面を説明する。製作委員会の出資各社はそれぞれ違うビジネスを行う会社が集まっているため、出資した会社が共同で作品の著作権を持ち、パッケージ会社であればDVD、グッズ会社であればグッズなど、それぞれが得意とするビジネスの利用窓口権(独占的な制作、販売権)を取得し、それを使いビジネスを行い、その売上から委員会に手数料を戻す。例えば、5社で2000万円ずつ出資し、1億円の委員会を作ったものとする。その中でパッケージ会社のA社は2000円のDVDを1万本売り、2000万円の売り上げを得た。売上のうち 45~50%は問屋と小売り店舗、20%は委員会手数料として控除されるため、2000万円の売上は問屋と小売り店舗の1000万円、委員会手数料の400万円を引いた600万円が窓口の収益になる。加えて、400万円の委員会手数料は出資比率に応じて5社で割られるため、1社あたり80万円分配されるため、最終的にA社は680万円の収益となる。それ以外にもA社以外の会社の手数料の分配もプラスされる。ちなみに委員会手数料は出資比率で割る前に原作者印税や放送印税など作品ごと、委員会ごとに様々な印税が引かれていく場合がある。 アニメ映画の収益モデルについても紹介する。 劇場版のアニメはアニメの時間が変わることを除くと、製作フローはテレビアニメの製作委員会方式とそれほど変わらない。ただし、テレビアニメとの違いとして「興行収入」が主な利益となる。「興行収入」とはお客さんが買ったチケットの枚数×単価である。興行収益はまず50%、映画を放映している映画館の売上として引かれる。その後、映画の宣伝や映画館の選定などを行う配給会社に20%~30%、3億円程度の広告費、諸経費を引かれたものを製作委員会の各会社の出資比率で割り、利益となる。 興行収入以外にもビデオグラムの収入、テレビ放映、グッズ販売、配信など二次利用で収入を得ている。

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卒論アウトライン

①主張 今日、アニメは日本の代表的な成長産業になっており、市場規模は過去10年で2倍以上に拡大している。アニメ映画のヒット連発や動画配信の普及、世界各国でのアニメイベントなどによって今後も益々、アニメの市場は大きくなっていき、業界外の企業からも注目されていくだろう。しかし、市場が大きくなっている一方で、アニメーターの過酷な労働環境や制作スタジオの過密な放送スケジュールと品質の維持などアニメ業界の問題も多く存在する。これらの問題は日本がアニメを制作する際に行う製作委員会方式やテレビアニメ黎明期から変化しなかった低賃金で雇われるアニメーターの慣習が原因となっていると考えられており、アニメ業界が成長していく際の障壁となる可能性がある。このように日本の国民的カルチャーになっており、海外でも注目を集めるアニメの成長を止めないためにも、制作スタジオが自らビジネスを行う体制を取ったり、海外のアニメスタジオを参考に、あらゆる企業が手を組んで大きな総合エンタメ企業を作ったりと業界全体でビジネス構造を新たに変化させることが重要である。②調査の方向性 まずは現在のアニメ市場の規模や現在のアニメビジネスのトレンド、主なビジネスモデルである製作委員会方式について調査し、現状の確認。その後、現在アニメ業界の問題になっているアニメ制作会社やアニメーターの労働環境問題などについて調査を行う。そして、そのアニメ業界の課題を解決しようとする新たな制作会社の動きや海外のアニメスタジオの労働環境を参考に新たなビジネス構造を考察。

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書評 週刊東洋経済 2023年5月27日号 アニメ 熱狂のカラクリ

アニメは過去10年で市場規模が2倍以上に拡大した日本の急成長産業である。映画では興行収入100億円超えの作品が続々登場したり、動画配信サービスの普及で海外ファンも急増したりするなど、今やアニメは国民的カルチャーになり、大企業はアニメへの投資にアクセルを踏んでいる。一方で、アニメ制作現場が利益を得にくい構造や、横行するセクハラなどの根深い問題は依然として残っている。本書は長年の課題を抱えながらも、熱狂が渦巻くアニメビジネスの最前線を徹底取材した本である。   1 「熱狂アニメマネーの全貌」   このパートでは現在のアニメ産業についての全貌を世界でのアニメビジネスの動向、製作委員会の儲けのカラクリ、出版社のIPバブル、アニメーター賃金の「二極化」を中心に紹介している。 日本のアニメは世界で混沌すら巻き起こすムーブメントになっており、中国では3月に公開された「すずめの戸締り」が現地で興行収入150億円、アニメ映画「SLAM DANK」は同120億円を突破した。「すずめの戸締り」のワールドツアーに訪れ、現地のファンの多さを目にしたコミックス・ウェーブ・フィルムの角南一城常務は「もはや日本アニメはサブカルチャーではない。世界のメインカルチャーになったんだ」と述べている。また、国を挙げて関与しているサウジアラビアでは石油依存型社会からの脱却を課題に、エンタメ産業を成長分野の一つに選定しており、日本アニメの大ファンである皇太子を筆頭に政府系ファンドが東映や任天堂など日本のエンタメ企業に相次ぎ出資している。 また製作委員会に関しても製作委員会の参加企業や出資比率が複雑になっていることに加えて、ヒットに繋がりやすい有名原作のアニメ化権を取得しようと争奪戦になっており、企業間での衝突が激しいと紹介されている。 出版社もアニメ好況での恩恵を受けており、出版大手の集英社は「鬼滅の刃」、「呪術廻戦」などの爆発的ヒットにより、売上を拡大させている。さらに国内外から急増ずるIP需要や儲かるIPビジネスに対応すべく、各出版社は東映アニメーションや電通から中途で人材を引き抜き、ライツ事業の強化を行っていると紹介されている。 アニメーター賃金にも異変が起きている。日本アニメーター・演出協会が昨年行った最新のアンケート調査によれば、アニメーターの平均年収は455万円と4年前の調査から15万円の増加となっている。さらに腕のあるアニメーターに対しては「拘束費」として出来高とは別に一定額を上乗せし、アニメーターを確保する慣行があるが、最近では支払いが常態化しており、よいアニメーターを確保するため、ある制作会社は多額の「拘束費」を提示している。しかし、「動画」や「第二原画」を手掛ける若手アニメーターは月10万も稼げず、生活が厳しいままであるとアニメーターの賃金の「二極化」について説明されている。   2 「アニメで攻める日本企業」   このパートではアニメコンテンツを取り扱う企業の動向についてソニーやネットフリックスの現在や現代のアーティストとアニソンの関係を中心に紹介されている。 現在、ソニーの子会社であるアニプレックスは日本のアニメ業界における“台風の目”と呼ばれており、「鬼滅の刃」など大人気作品を多く手掛けている。同社は有力な制作スタジオを抱えると同時に社外の有名制作スタジオとのつながりも深く、業界からは「ヒットに対する欲望のスケールが他社のスタッフと違う」や「収益最大化への気概、企画・営業の実力ともに申し分ない」と畏怖の声ばかりだ。さらに近年、日本アニメの配信で世界最大級の米クランチロールを買収しており、さらにアニメ関連のビジネスを拡大していくと述べられている。 「黒船」と呼ばれているネットフリックスは2018年以降、日本の人気アニメ制作スタジオと業務提携を結んだり、既存アニメの配信だけではなくオリジナルアニメの製作にも進出したりとその大盤振る舞いは業界内外で話題となっていた。しかし、2022年4月以降オリジナルアニメや独占配信が会員獲得数に貢献しないことや原作側からの独占配信の不安により、同社は失速したと述べられている。 アニソンの勢いも凄まじく、2023年の「チェンソーマン」の「KICK BACK」(米津玄師)は総合チャートの首位攻防戦を繰り広げ、アニメ関連局のストリーミングチャートで26週連覇を果たした。近年のアニソンは作品と音楽の密接度が増えており、大手レコード会社社員は「ドラマより安定して結果が出る印象があり、作品との寄り添い方が深い程、爆発力につながる」と語る。さらにSpotifyが公開した2022年に海外で聴かれた日本の曲のランキングを見ると10曲中7曲をアニメ関連が占めており、アニメが世界で音楽を認知させる強力なチャネルであるとも紹介されている。   3 「アニメを知ろう!生かそう!」   このパートでは現在のアニメブームに置いて行かれないよう抑えるべき最新教養アニメや地域活性化などで注目されているアニメの聖地巡礼、AIがもたらすアニメ制作への影響について紹介されている。 昨今の社会で巻き起こっているアニメブームに置いて行かれないよう、読者向けに教養アニメをランキング形式で1位は「鬼滅の刃」、2位は「君の名は。」、3位は「ソードアート・オンライン」と3人の識者の意見を踏まえて紹介されている。特に1位の「鬼滅の刃」はアニメ化によって、原作漫画だけでは到達しえない社会現象を起こしている点や異業種とのコラボがかつてない規模で成功している点から非常に注目すべきアニメであると説明している。 そして、アニメのファンが作品の舞台となった地域を訪問する「聖地巡礼」と呼ばれる行為も地域活性化や観光復興策として注目されており、アニメの聖地が国内だけでなく海外からの誘客が期待できる貴重な観光資源であるとして各地方自治体から重宝されている。しかし、アニメ聖地を復興するうえで抱える課題もあり、「版権元から許諾を得ることに高いハードルを感じる」という意見や「著作権等の権利関係が分かりづらい」という意見が各地域から挙げられていると述べられている。 アニメ制作内でのAIの活用も検討されている。いち早く導入が検討されているのがアニメーターよりも人材不足が深刻な背景美術の制作で業界大手東映アニメーションでは2021年に先端技術を使用し、美術の前処理工程の時間を従来の約6分の1に大幅に短縮できたという事例を紹介している。そこからネットフリックスでAIを使ったショートアニメやキャラクターの動きにAIを用いるなどアニメ制作でのAIの活用を進めているが、著作権関係の問題や制作スタッフからの反発もあり、アニメ制作へのAIの導入には課題が多いと説明されている。   本書を読んで最新のアニメ業界の問題やアニメコンテンツを取り扱う企業の動向について深く知ることができた。今回はアニメ業界の踏み込んだ内容についての解説が多く、現在のアニメ業界の知見を深めることができた。そして、今まで読んできた書籍を参考にアニメ業界の問題を解決するための新モデルなどを卒業論文でまとめたいと思う。 東洋経済新報社 週刊東洋経済 2023年5月27日号 アニメ 熱狂のカラクリ 2023年5月22日発売 著者:週刊東洋経済編集部

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