卒論 第一章

現在、日本経済は長期の停滞の真っただ中にある。

日本経済は1990年代初頭にバブルが崩壊し、2000年代初頭までの期間は「失われた10年」といわれ経済成長率は低迷した。バブル経済崩壊の影響が薄れた2000年代に入り、緩やかに景気の回復が続いた期間もあったが、リーマン・ショックの影響による大きな落ち込みにより成長率はまたしても低い値にとどまった。その後アベノミクスによる大規模な金融政策や民間投資が行われたが、結果一時的な成長にとどまり経済の停滞を脱出するまでは至らなかった。IMF(国際通貨基金)が発表している実質GDPの成長率で日本はここ30年マイナスの年次が多く、毎年2%前後の成長を遂げているアメリカとは大きな違いがあるといえる。

今の状況を脱却するために私はイノベーションが必要であると考える。イノベーションとは1911年にヨーゼフ・シュンペーターによって定義された、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」を指す。このイノベーションには5種類の分類があり、以下の5種類である

・プロダクト・イノベーション

市場において全く新しい製品、あるいは新しい品質の製品の生産のこと

・プロセス・イノベーション

新しい生産方法や労働方法の導入のこと

・マーケット・イノベーション

新しい市場の開拓などで販路を拡大すること

・サプライチェーン・イノベーション

原料あるいは半製品の新しい供給源を獲得すること

・オーガニゼーション・イノベーション

全く新しい形の組織を生み出すこと

 

本論文ではこの5種類の中でも特にプロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションを扱う。

日本経済の停滞を脱却するためにイノベーションが必要な理由は、GDPを上昇させるのに必要な企業の成長にイノベーションが寄与するからである。その論拠としてケーススタディを二つ紹介させていただく。

一つ目は特許権がもたらす経済効果について記述する。特許権はイノベーションの中でも重要なプロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーションを生み出した結果取得できるもので、どちらかのイノベーションの証明的な役割を持つ。この特許権が経営指標に対する影響を調べるため、2021年にJETRO(日本貿易振興機構)が行った特許権に関する調査を取り上げる。その調査とは上場食品企業のなかでB to C事業が売り上げの過半を占める8社を抽出し製品に関する特許権(プロダクト・イノベーション)の数と経営状況にまつわるものである。結果、これらの企業では保有特許権数の増大に従って、売上高営業利益率が増大する傾向がみられ、ROA (総資産利益率)も同じく正の相関がみられた。結果として、事業利回りが改善したといえる。

また上記食品企業から一社除いた7社を対象に、生産技術関連の特許(プロセス・イノベーション)のみに絞って同じ調査が行われた。その結果、同じく売上高営業利益率に正の相関がみられた。また総資産回転率というどれだけその製品が売れたかを指す指標に対しても正の相関がみられた。プロセス・イノベーションはコストカットのイノベーションのため、取引量の向上につながったことがよくわかる結果であるといえる。

 

次にイノベーションの影響で経済成長を成し遂げた具体例として日伸工業株式会社を挙げる。

滋賀県大津市の日伸工業株式会社は、小物精密金属プレス加工を行う中小企業である。1959年の創業以降、テレビ用ブラウン管部品の製造を主力として成長してきた。1990年ごろには国内家電メーカーの海外進出とともに、海外に工場を展開しシェアを拡大し続けた。しかし、2000年ごろからブラウン管テレビの需要減少と共に大きな売り上げの落ち込みを見せ、厳しい経営状況に陥った。しかし、2008年に自動車業界の部品製造事業に参入。元来のプレス技術力と自動車部品に合わせた新たな成型方法の開発というイノベーションを合わせることで、ブレーキ部門の世界シェア20%という自動車部品製造で確立した地位を築き上げた。ABSブレーキの義務化が2014年にあったのも、彼らの追い風になったといえる。自動車部品部門参入以後は右肩上がりの成長を続けているという。

以上から日伸工業株式会社は新たな市場へのチャレンジというマーケット・イノベーションと新たな成型方法の開発というプロセス・イノベーションの二つのイノベーションを活用し、経済成長を遂げた企業といえる

以上の二つのケーススタディから、イノベーションは企業の成長に大きく寄与しており、実質GDPの向上に必要な要素であるということが分かった。

ではこのイノベーションを増やすにはどうすればよいのだろうか。その方法の一つとして博士号を取得した学生の採用が挙げられる。その論拠として文部科学省の科学技術・学術政策研究所の池田と乾が2018年に行った博士号保持者とイノベーションの関係に関する論文を参照する。この論文では2015年に同じく文部科学省の科学技術・学術政策研究所によって行われた全国イノベーション調査のデータを基に、企業における博士号保持者の有無がプロダクト・イノベーションやプロセス・イノベーションの実現に及ぼす影響に関して分析している。分析結果によれば博士号保持者が在籍している企業はそれ以外の企業に比べて、プロダクト・イノベーションの実現確率が11ポイント高く、プロセス・イノベーションの実現確率については7~8ポイント高いことが分かったという。

以上のことから、博士号保持者がイノベーションに対して大きな影響をもたらすことがよくわかる。しかし、現在日本での博士号取得者は年々減少しており、世界に比べても低い水準であるという。

次章では、日本と世界における博士号にまつわる理系人材の育成状況に関して記述する。

 

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「結婚後に子どももつべき」6年で激減 

国立社会保障・人口問題研究所が発表した出生動向基本調査で、18-34歳の独身で「結婚したら子どもはもつべきだ」と考える女性は36.6%、男性は55.0%という結果が出た。6年前の調査と比べ女性はほぼ半減し、男性も20%下がった。一方「一生結婚するつもりはない」と答えたのは男性が17.3%、女性は14.6%で男女ともに前回から5%以上の増加で、そもそも結婚を望まない人が増えた。少子化問題に詳しい日本総研の主任研究員は「結婚や子どもを持つことがネガティブに映っているとすれば政府のこれまでの少子化対策は修正を迫られる」という。

22/09/13 朝日新聞 8ページ

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入試で女性差別 東京医科大に賠償命令 

女性を入試で一律に不利に扱う不正があったとして2006-18年度に受験した女性ら28名が東京医科大に損害賠償を求めた集団訴訟で、東京地裁は計1826万円を賠償するよう大学に命じた。裁判長は「性別による差別を禁じた教育基本法と憲法の趣旨に反する」と述べ、慰謝料は受験1年度につき原則20万円が相当とし、本来なら合格していた可能性があった場合については100万~150万円を加えた。医学部の不正入試は18年、文部科学省と東京医大が舞台となった汚職事件をきっかけに複数の大学で発覚し、提訴が相次いだ。

22/09/10 朝日新聞 34ページ

 

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卒論 第二章 (訂正版)

第二章 製作委員会の歴史とメリット、デメリット

 

第二章では前章で紹介したアニメを作る際の主なビジネスモデルである「製作委員会方式」の歴史やメリット、デメリットについて確認していく。

 

現在ではアニメの出資元のほとんどが製作委員会となっているが、それはここ十数年ほどのことである。1990年代後半から次第に製作委員会方式が増え始める以前は、映画会社や製作会社が単独で製作、もしくはテレビ局などの共同製作という形をとっていた。また、海外のハリウッドでは日本と違い、現在でも製作会社一社に著作権を集中させるのが主流である。

 

日本に製作委員会が生れたのは日本映画の衰退化と大きな関係がある。60年前の日本映画は絶頂期であり、大いに儲かっていた映画会社が100%出資で映画を製作していた。しかし、1970年代に入ると経営が苦しくなった映画会社は制作部門をリストラするなど資金力不足に陥っていた。そんな中、映画会社は作品に興味を示した他の映画会社に声をかけ、製作委員会を組成して映画製作の資金を集めていた。その代表が、1970年代中盤から大ヒットを生み出した角川映画であり、1991年の「天河伝説殺人事件」という映画には角川書店の他に「日本テレビ放送網、近鉄百貨店、奈良交通、電通、東京佐川急便、バンダイ」などが共同製作として名を連ねており、これが製作委員会の雛形となった。その後、その年代の劇場アニメ「AKIRA」や1995年に放送が開始されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』などで製作委員会が組成され、その際に作られた製作委員会が後のテレビアニメのアニメ製作委員会の雛形に引き継がれていった。それ以来、複数の企業が出資を行う製作委員会方式でのアニメ作りが業界で定着し、現在のオタク向けや漫画・ライトノベルなどの紙媒体の原作からなるアニメも製作委員会方式で作られるようになった。

 

次に製作委員会方式のメリット・デメリットについて整理する。

製作委員会方式により大きく変化した部分は制作費が全額支払われるようになったことと著作権が製作委員会に移ったことであり、まず、この変化に伴うメリット、デメリットを説明する。

製作委員会方式以前の製作方式であった「広告収入方式」ではテレビ局が制作会社に支払う「制作費」は実際に制作する金額よりも少ないことが商習慣になっていたが、著作権は制作スタジオに帰属しており、制作会社はライセンスによる二次利用で収支を合わせなければならなかった。一方、製作委員会方式になってからは全額、製作委員会から制作スタジオに制作費が支払われるようになったが、著作権は製作委員会に移り、二次利用の収益が全くなくなってしまった。これにより、製作委員会方式に伴う制作費の増額と著作権の移動が作品がヒットしなかった時にはメリットに、作品がヒットした時にはデメリットになる。作品がヒットしなかった場合は、二次利用での利益は得られないものの、全額支払われる制作費により大幅な赤字を免れることができ、製作委員会方式による制作費と著作権の変化がメリットになる。しかし、作品がヒットした場合、制作費の全額は支払われるものの、ヒットした作品の二次利用での莫大な利益は全くもらうことができないため、製作委員会方式による制作費と著作権の変化がデメリットになってしまう。

このように、製作委員会方式による制作費が全額賄われるようになったものの著作権は製作委員会に移動してしまったことは作品のヒットの具合によってメリットやデメリットになりうる。

次に製作委員会方式だから生じるメリット、デメリットについて説明する。

製作委員会方式のメリットとして「資金リスクの分散」がある。

現在、日本のアニメ作品はクオリティが高い作品が数多く製作されており、競争力が高まっている。それに伴い、アニメ制作に投入されるコストも以前よりも増加しているが、アニメは放送するまでヒットするかが分からないのが実情である。その点、複数企業が出資を行う製作委員会方式であれば、出資リスクが分散されることが可能であると共に大口のスポンサーの撤退・倒産により制作が続けられなくなるリスクも防止することができる。また、複数の企業が関わることで広範な広告宣伝や、多種多様なメディアミックス・二次展開にも期待できる。製作委員会に参加する企業は、それぞれのネットワークやリソースを利用して、様々な宣伝やプロモーションを行うことができるため、出版社が参加していれば小説やマンガでの展開、レコード会社が参加していればキャラクターソングやライブ、ゲーム会社が参加していれば関連ゲームの製作販売など、多種多様な収益源を作り上げることができ、プロジェクト全体の成功確率を上げることが可能だ。

一方、デメリットは複数企業からなる団体から起こる「方向性の不一致によるトラブル」だ。製作委員会では多様なバックグラウンドを持つ出資企業が参加するため、意見の違いが表面化しやすくなり、全体としての方向性を見失ったり、作品のクオリティが低くなったりしてしまう可能性がある。さらに製作委員会方式では制作費用を抑えるためにクリエイターの報酬が低く抑えられることが多々あったり、締め切りに間に合わせるために過酷なスケジュールが組まれることがあったりし、長時間労働や過労が常態化している現状である。また、製作委員会方式は出資企業が主導権を握ることが多く、作品のクリエイティブな側面が犠牲になることもあり、出資企業の収益性や商業的な成功の追求により、アニメ業界の多様性が失われ、新たな才能や革新的なアイデアが育たなくなる危険性がある。

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第三章 日本のEV化の動き(修正版)

日本のEV化の動きを考えるの前に、日本の自動車産業における二酸化炭素を減らす取り組みがどのように始まったのかを考える。

1977年に採択された京都議定書で、日本は2008年から2012年の間に1990年の二酸化炭素排出量を平均6%削減することを約束した。その後、2005年2月の議定書発行を受け、政府は同年4月に京都議定書目標達成計画を策定し、産業・民生・運輸部門といった部門ごとに排出量の削減目標と対策が掲げられた。二酸化酸素の約2割は運輸部門から 排出され、そのうち約9割が自動車から排出されていることから、自動車業界及び各自動車メーカーは車両の燃費向上やクリーンエネルギー車の開発を進め、トヨタ自動車は特に1997年から生産しているハイブリッド車の開発・販売を積極的に取り組んだ。その結果として1997年の初代プリウスの発売に始まる約10年間でのハイブリッド車世界販売総数は、累計100万台を超え、発売以来累積で約350万 t の排出制御効果があったと試算している。

このように自動車産業において二酸化炭素削減に取り組んできた中、2020年10月に菅義偉総理が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラルの実現」を国家目標に掲げ、脱炭素政策の目玉として、自動車産業においては電動化を推進し、2030年代半ばまでに新車販売で「すべての乗用車が電動車(EV)またはプラグインハイブリッド車(PHEV)」であることを目指すと宣言した。

政府は2023年に総額900億円の予算をあて、電気自動車購入時のCEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)の支給を始め、2023年3月23日に申請受付を開始した。

CEV補助金の主なポイントとして4つ挙げる。

1つ目は補助金の対象となる車両は、EV、軽EV、PHEV、FCVなどで、ハイブリッド車は補助金の対象とならないことである。

2つ目は補助金の上乗せ制度があることである。外部給電機能(車載コンセントAC100V/1500Wを装備していることを指す)を備えている車両や、省エネトップランナー制度(対象機器でエネルギー消費効率がもっとも優れたものを「トップランナー」とし、それを省エネの目標基準に定めてエネルギー消費効率の向上を促す制度)の2030年度燃費基準の対象となる車両が上乗せさせる。具体例としてEVの補助金の上限額はベースで65万円だが、条件付きで85万円になる。また軽EVやPHEVはベースが45万円だが、条件付きで55万円になる。条件に合えば上乗せで補助金がもらえるようになっている。

3つ目は高額なEVに対する補助金の減額があることである。2023年度から新たに、税抜き価格が840万円以上の高額なEV・PHEVについて、算定された補助金額が8割に減額されることになる。具体例として高額車両とされるEVの補助金の上限額はベースで52万円だが、条件付きで68万円になる。また軽EVやPHEVはベースが36万円だが、条件付きで44万円になる。

4つ目は補助金の申請が予算額(900億円)に達した時点で、CEV補助金の受付は終了となることである。

交付条件は、一定期間内に新車を購入し、購入したEV等の一定期間保有(原則4年間)を条件としている。

販売台数は2022年において3万1592台で、日本の自動車販売台数(約222万台)のうちわずか1.42%となっている。

このようにEVの導入が遅れている理由は2つ挙げられる。

1つ目はトヨタのハイブリッド車の成功である。トヨタ自動車がハイブリッド車(例:プリウス)のパイオニアであり、日本国内市場では長らくハイブリッド車が主流であった。2022年時点でハイブリッド車が49%とガソリン車の42%を上回っており、日本国内市場では主流であるといえる。そしてトヨタの成功により、日本国内の自動車市場においてハイブリッド車が優勢であったため、電気自動車へのシフトが遅れてしまった。

2つ目は充電インフラの不足である。日本では一部の都市や地域では充電ステーションの設置が進んでおり、特に都市部においては需要が高く、設置が比較的容易であるため、充電インフラが整備されている。しかし、一部の地方地域や遠隔地では需要が低く、設置コストが高いため、充電ステーションが不足しており、これがEVの普及を妨げる要因となっている。

日本は自動車産業において、欧州、中国、米国と比べ早い時期からハイブリッド車の積極的な導入をし、二酸化炭素を減らす取り組みを行っている。日本は欧州などから影響を受け、EVの導入を推進し、充電インフラや法整備を進めるようになったが、依然として電動車に占めるHEVの割合が大きく、そしてEVの販売台数は世界で見ても少なく、日本の自動車市場においても全体のわずか1%とまだ少ないことが分かった。前章からこの章までEV化の動きについて述べてきたが、EV導入が必ずしもメリットだけがあるとは考えていない。そのため次章はカーボンニュートラルの観点からEVの問題点について考える。

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イノベーションが起こす経済効果 ケーススタディ②

次にイノベーションの影響で経済成長を成し遂げた具体例として日伸工業株式会社を挙げる。

滋賀県大津市の日伸工業株式会社は、小物精密金属プレス加工を行う中小企業である。1959年の創業以降、テレビ用ブラウン管部品の製造を主力として成長してきた。1990年ごろには国内家電メーカーの海外進出とともに、海外に工場を展開しシェアを拡大し続けた。しかし、2000年ごろからブラウン管テレビの需要減少と共に大きな売り上げの落ち込みを見せ、厳しい経営状況に陥った。しかし、2008年に自動車業界の部品製造事業に参入。元来のプレス技術力と自動車部品に合わせた新たな成型方法の開発というイノベーションを合わせることで、ブレーキ部門の世界シェア20%という自動車部品製造で確立した地位を築き上げた。自動車部品部門参入以後は右肩上がりの成長を続けているという。

以上から日伸工業株式会社は新たな市場へのチャレンジというマーケット・イノベーションと新たな成型方法の開発というプロセス・イノベーションの二つのイノベーションを活用し、経済成長を遂げた企業といえる。

 

03Hakusyo_part1_chap4_web.pdf (meti.go.jp)

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イノベーションが起こす経済効果 ケーススタディ①

特許権はイノベーションの中でも重要なプロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーションを生み出した結果取得できるもので、どちらかのイノベーションの証明的な役割を持つ。この特許権が経営指標に対する影響を調べるため、上場食品企業のなかでB to C事業が売り上げの過半を占める8社を抽出し製品に関する特許権(プロダクト・イノベーション)に関して調査を行った。結果、これらの企業では保有特許権数の増大に従って、売上高営業利益率が増大する傾向がみられ、ROA(総資産利益率)も同じく正の相関がみられた。しかし、総資産回転率に関しては減少する傾向が見られた。製品の特許権は独占権としての側面を持つ。したがって製品価格を高めに設定できるため、売上高営業利益率は増大しやすい。また製品の価格上昇は取引量の減少にもつながるため、総資産回転率が減少したというわけだ。しかし、ROAは利益率に関する指標であるため、特許数が事業利回りを改善した証明であるといえる。

また上記食品企業から一社除いた7社を対象に、生産技術関連の特許(プロセス・イノベーション)のみに絞って同じ調査を行った。結果、同じく売上高営業利益率に正の相関がみられた。また総資産回転率に関しては前者の調査と異なり減少傾向はみられなかった。プロセス・イノベーションはコストカットのイノベーションのため、取引量の向上につながった結果であるといえる。

以上のことからプロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションの二つともに企業の経営指標を向上させる効果があることが分かった。

プロセス・イノベーションが上場企業の経営指標に及ぼす影響とは(世界、米国、日本) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ (jetro.go.jp)

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卒論 第二章

第二章 製作委員会の歴史とメリット、デメリット

第二章では前章で紹介したアニメを作る際の主なビジネスモデルである「製作委員会方式」の歴史やメリット、デメリットについて確認していく。

現在ではアニメの出資元のほとんどが製作委員会となっているが、それはここ十数年ほどのことである。1990年代後半から次第に製作委員会方式が増え始める以前は、映画会社や製作会社が単独で製作、もしくはテレビ局などの共同製作という形をとっていた。また、海外のハリウッドでは日本と違い、現在でも製作会社一社に著作権を集中させるのが主流である。

日本に製作委員会が生れたのは日本映画の衰退化と大きな関係がある。60年前の日本映画は絶頂期であり、大いに儲かっていた映画会社が100%出資で映画を製作していた。しかし、1970年代に入ると経営が苦しくなった映画会社は制作部門をリストラするなど資金力不足に陥っていた。そんな中、独立系の映画会社が意欲的に製作に乗り出すことが多くなり、映画会社は作品に興味を示したパートナーに声をかけ、製作委員会を組成して映画製作の資金を集めていた。その代表が、1970年代中盤から大ヒットを生み出した角川映画であり、1991年の「天河伝説殺人事件」という映画には角川書店の他に「日本テレビ放送網、近鉄百貨店、奈良交通、電通、東京佐川急便、バンダイ」などが共同製作として名を連ねており、これが製作委員会の雛形となった。その後、その年代の劇場アニメ「AKIRA」や1995年に放送が開始されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』などで製作委員会が組成され、その際に作られた製作委員会が後のテレビアニメのアニメ製作委員会の雛形に引き継がれていった。それ以来、複数の企業が出資を行う製作委員会方式でのアニメ作りが業界で定着し、現在のオタク向けや漫画・ライトノベルなどの紙媒体の原作からなるアニメも製作委員会方式で作られるようになった。

次に製作委員会方式のメリット・デメリットについて整理する。
まず、製作委員会方式の最大のメリットは「資金リスクの分散」である。
現在、日本のアニメ作品はクオリティが高い作品が数多く製作されており、競争力が高まっている。それに伴い、アニメ制作に投入されるコストも以前よりも増加しているが、アニメは放送するまでヒットするかが分からないのが実情である。その点、複数企業が出資を行う製作委員会方式であれば、出資リスクが分散されることで、投資の失敗リスクを減らすことが可能であると共に大口のスポンサーの撤退・倒産により制作が続けられなくなるリスクも防止することができる。
さらに、複数の企業が関わることで広範な広告宣伝や、多種多様なメディアミックス・二次展開にも期待できる。製作委員会に参加する企業は、それぞれのネットワークやリソースを利用して、様々な宣伝やプロモーションを行うことができるため、出版社が参加していれば小説やマンガでの展開、レコード会社が参加していればキャラクターソングやライブ、ゲーム会社が参加していれば関連ゲームの製作販売など、多種多様な収益源を作り上げることができ、プロジェクト全体の成功確率を上げることが可能だ。
また、以前の製作方式であった「広告収入方式」ではテレビ局が制作会社に支払う「制作費」は実際に制作する金額よりも少ないことが商慣習になっていたが、製作委員会方式になってからは全額、制作費が支払われるようになったこともメリットとして挙げられる。
一方、製作委員会方式の最大のデメリットは「クリエイターの労働環境の悪化」である。
製作委員会方式では、仮にアニメがヒットした場合、製作委員会に名を連ねている企業に出資比率に応じて利益が配分されるが、アニメの制作会社が製作委員会に名を連ねていない場合、金銭的なリターンはほとんどない。さらに制作費用を抑えるためにクリエイターの報酬が低く抑えられることが多々あったり、締め切りに間に合わせるために過酷なあスケジュールが組まれることがあったりし、長時間労働や過労が常態化している現状である。また、製作委員会方式は出資企業が主導権を握ることが多く、作品のクリエイティブな側面が犠牲になることもあり、出資企業の収益性や商業的な成功の追求により、アニメ業界の多様性、新たな才能や革新的なアイデアが育たなくなる危険性がある。結果として、制作スタッフの薄給や慢性的な人手不足、労働環境の悪化、モチベーションの低下に繋がってしまう。
そして、複数企業からなる団体から起こる「方向性の不一致によるトラブル」も問題となっている。製作委員会では多様なバックグラウンドを持つ出資企業が参加するため、意見の違いが表面化しやすくなり、全体としての方向性を見失ったり、作品のクオリティが低くなったりしてしまう可能性がある。

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性別変更に手術要件 違憲か否か

トランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるのに生殖能力を失わせる手術などを必要とする「性同一性障害特例法」の規定が、憲法に違反するかが問われた家事審判で、最高裁は決定を25日に出すとした。申立人は手術を受けていないが、長年のホルモン投与により要件を満たすと主張し、手術の強制は幸福追求権を定めた憲法13条などに違反すると訴える。家裁と高裁は要件を満たさないとして性別変更を認めなかったが、最高裁が規定を違憲と判断すれば、手術なしの性別変更に大きく道が開かれる。

23/10/19 朝日新聞 27ページ

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広島「夫は外、妻は家庭」県調査で賛成増

広島県でも直近約20年間の県政世論調査を見ると、ジェンダー平等への意識は高まっている。しかし県が行うネット調査で「夫は外、妻は家庭」の考えについて、21年度は賛成が24・6%で、反対は55・8%であったのが、23年度は賛成27・6%、反対52・2%となり、2年連続で賛成が増えた。広島大の白川准教授は、この調査の「自分の行動が性別に影響された理由」という質問について、半数以上が「社会一般の意識が変わらないため」と答えたことから、「社会構造のあり方が個人の意識に追いついておらず、結果的に不平等感がただよっているのでは」と話す。

23/10/11 朝日新聞 23ページ

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