月別アーカイブ: 2025年5月

【論文要約・紹介 「リキッド化する消費:脱物質化と所有概念」】

【はじめに】 社会学者バウマンの「液状化」概念を引用し、現代社会の不確実性や変化の激しさが、消費行動にも影響を与えていると述べ、従来のモノを所有する消費(ソリッド消費)に代わり、コンテンツ自体を消費したり、モノを消費せず共有する形態の消費(リキッド消費)が広まっていると説明。 本論文では、リキッド消費の概念化の背景や財の特性・消費形態、さらにリキッド消費が他研究領域に与える影響などについて研究展望を行うとしている。 【「リキッド消費」概念が現出する背景】 「社会の変容」 筆者はまず、バウマンの捉えた社会の液状化について説明をする。社会の液状化とは、社会ネットワークの崩壊や個人アイデンティティの多様化、製品ライフサイクルの短命化や時間の無限性への欲求が一過性へシフトすることなどを意味している。 現代社会において、社会ネットワークへの影響を大きく与えているのは2000年代以降のICTの飛躍的な発展(恐らくより平易な言葉として、デジタル化と言い替えてもいい)であるとも触れている。 「アクセスベースの消費」 アクセスベースの消費とは、市場の取引ながら、所有権の移転されない消費のことを指す。カーシェアリングなどが代表例だが、機能的利用価値のみを求めるような消費形態である。比較的、有形財より無形財(特にデジタルなモノ)はシェアリングに移行しやすいとされ、ICTの革新とリキッド消費の繋がりについても説明している。 【リキッド消費に関連する財の定義と分類】 「第3の財としての情報財」 リキッド消費に関連するものとして、財の脱物質化という点ではサービス財、アクセスベースという点では情報財があり、これらがどういうふうに定義されてきたかを語る。 サービス財は「有形部分の所有権が移転しない取引である」という解釈や、「サービスは行為であり、現実世界では純粋な商品やサービスは極稀である」という解釈がなされ、単純に実体のあるなしで語られてきた訳では無く、複合されたモノであるという点で重要な主張がされているということが強調されている。 情報財の定義については、製品の細分化の議論(製品のコア部分、期待部分、拡張部分)に始まり、最終的にはデジタル・コンテンツに焦点を当てた研究へと移行していったとされる。 「情報財の特性」 情報コンテンツそのものは、均質で文脈上の価値を持ち、自由に加工可能な動的なモノとして定義され、不可逆性という独特な特性も持っていることから、サービス財とは同一視すべきでないとしている。 【リキッド消費】 ここで筆者は、リキッド消費は短命、アクセスベース、脱物質的であるのに対して、ソリッド消費は長命、所有ベース、物質的な消費であると再確認している。その上でそれらの消費について具体例を交えつつ、深堀りを行っている。リキッド消費とソリッド消費それぞれが好まれる条件や、リキッド消費とソリッド消費の共存などがその例である。 「財の違いによる消費」 ここでは、物財、サービス財、情報財という3つの分類があり、さらにそれぞれの財は有形部とサービス、情報から成り立っているということを確認した上で、3種類の財がリキッド・ソリッドのどのような消費に結び付くのかを細かく説明している。とはいえ、現在の消費の特徴としては、提供する内容が同じでも提供される形態が異なる財(例えば書籍と電子書籍等)なら複数の消費パターンがあり、財そのものが消費形態を決める訳ではなく、多様な財と消費の組み合わせがあると主張している。 「消費者行動研究へのインプリケーションと今後の展望」 今後の消費者行動研究において、どのような研究が要請されるかについてを、筆者はここでまとめている。 一つは財の特性で、消費者の「所有」の感覚との関連性についてなどだ。情報財などであっても、所有の感覚はあるのかなどの問題である。 次に、物財への愛着がこれまで消費者行動やマーケティング研究の分野(ブランドへの愛着や自己関連性など)を発展させてきたが、サービス財や情報財でそうしたことは起こるのか、という問題だ。 次に、ギフト消費などに代表される、モノのやり取りにおいて、情報財は贈与の対象になるのか、またリキッド性の高い消費が選択されるのかという問題である。 最後に、筆者はリキッド消費という概念を手掛かりに、消費する対象の特性と消費者の認知処理、さらに消費者を取り巻く社会関係との関連という観点から、消費研究の可能性は開いていけるだろうと締めくくる。 出典:神戸大学学術成果リポジトリ https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/E0041404/E0041404.pdf

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日本ハム、Azure OpenAIで営業効率化

日本ハムは、Azure OpenAI Serviceを活用し、生活者の「擬似人格」がアンケートに回答するGC(Generated-Customer)分析を開発。従来時間とコストがかかっていたN1分析を、1,000人分を45分・100円強で実施可能にし、提案書作成の効率化と商談成約率向上を実現しました。今後はGC分析アプリのWeb化や、バリューチェーン全体への適用拡大を目指しています。  https://www.microsoft.com/ja-jp/customers/story/22479-nh-foods-azure-app-service?utm_source=chatgpt.com  

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三菱UFJ、独自生成AI導入による業務効率化

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、マイクロソフトAzure基盤上に独自の「MUFG版ChatGPT」を構築し、セキュアな環境で行内業務に活用しています。稟議書作成やレポート要約、手続き照会など110以上のユースケースがあり、全行員が使える体制を迅速に整備。推進・リスク分科会を設けてグループ全体で情報共有し、AI活用のノウハウやガイドラインも整備中です。業務効率化と顧客対応力向上を目指しています。 https://www.mufg.jp/profile/strategy/dx/articles/0112/index.html  

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論文要約とその感想

結論 IRは、カジノを駆動部としつつも、観光振興・地域活性化・MICE・イノベーション・消費拡大など複合的なベネフィットをもたらす存在であり、ホスピタリティ観点から見ても導入の価値があると結論づけられる。 主な論点と結論 1. 観光政策としての意義 日本の人口減少による国内消費の縮小を補うために、訪日観光客の一人当たり消費単価の向上が必要。 IRはカジノ収益を原資として、MICE施設(国際会議・展示場など)など「コト消費」の器を整備できる。 これにより、観光客の支出額増加 ➡ 経済効果の最大化が期待される。 2. 情報とイノベーションの源としてのIR 対面での一次情報(暗黙知)の獲得は、質の高い意思決定とイノベーション創出に不可欠。 MICEなどリアル交流の場を提供するIRは、情報の質向上に貢献し、オンラインでは得られない価値を生む。 3. ギャンブル依存症のリスクと対策 シンガポールは、IR開業前から法制度を整備し依存症割合の減少に成功。 日本でもIR実施法の前に「ギャンブル等依存症対策基本法」を整備済み。依存症対策は進行中で、社会的コストの増加は抑えられると予想。 4. ギャンブルの経済効果(余剰分析) 新設されるカジノゲームは、既存の日本のギャンブル(競馬・パチンコ等)よりも控除率が低く、消費者へのリターンが高い。 IR導入によりギャンブルの選択肢が増える ➡ 社会的余剰(=経済的ベネフィット)が約1兆円増加すると試算。   自分の意見 IRの導入による経済効果や観光振興の意義は理解できるものの、既存のギャンブル市場への影響には慎重な検討が必要だと考えます。たとえば、パチンコは年間約19兆円、競馬は約3兆円の市場規模を有しており、これらは長年にわたり地域経済や雇用を支えてきました。こうした既存市場に対して、IRが新たなギャンブル機会として参入すれば、市場の拡大ではなく、顧客の移動によるカニバリゼーション(共食い)が発生する可能性があります。 さらに、ギャンブル依存症や治安悪化といった社会的コストも無視できません。収益性を優先するあまり、依存症対策や地域との共生が後回しになるような事態は避けなければなりません。 こうした背景を踏まえると、カジノに過度に依存するのではなく、観光・エンターテインメント・食文化などを中核とした“日本型IR”の構築を目指すべきではないかと考えます。IRを単なる収益施設としてではなく、都市再開発や地域ブランディングの手段として活用することで、持続可能かつ社会的に受容されるモデルの実現が可能になるのではないでしょうか。 参考文献 カジノを含む統合型リゾートのコストとベネフィット -生産者余剰と消費者余剰をも加味したホスピタリテ ィ観点から- 東洋大学 佐々木 一彰⑨佐々木一彰【カジノを含む統合型リゾートのコストとベネフィット-生産者余剰と消費者余剰をも加味したホスピタリティ観点から-】

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インドとパキスタンが軍事的衝突へ

インドがカシミール地方での銃撃事件を受け、パキスタン領内の「テロ拠点」を軍事攻撃。パキスタンはインド機5機撃墜と反撃を発表し、緊張が激化している。両国は互いに正当性を主張しつつ報復を示唆しており、過去の類似の衝突と同様、全面衝突の懸念が高まっている。米国は両国が核保有国と言うこともあり、双方に自制を促している。 ブルームバーグ5月7日

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米国で初の準備金州法成立により、ビットコインが急騰

ビットコイン価格が7日、9万7000ドル台に急騰した。米ニューハンプシャー州で仮想通貨への公的投資を認める州法が成立し、期待が高まったためだ。これにより他州にも法整備の動きが広がる可能性がある。トランプ政権も保有方針を打ち出しており、政治・金融の不透明感が高まる中、ビットコインが資産の逃避先となっている。 日経新聞5月7日

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人生100年、老活で怖くない

人生100年時代を迎える中で、「老活」に注目が集まっている。特に、老後の生活をより良いものにするために、食事や運動に気を使い、心身ともに健康であることに重要性が強調されている。また、平均健康寿命が72歳とされる日本において、10年後の未来を見据えた心構えや生活設計の必要性があると考えられる。老後を恐れず、むしろ若返りを図ることで自分らしい新しい人生を楽しむ姿勢が求められている。 日本経済新聞2025.5.4

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人口構造変化に遅れた対応

近年、日本の人口構造の変化に対する働き方改革対応の遅れが問題となっている。日本の労働課時間は依然として長時間労働が続いており、少子高齢化が進む中で労働環境の改善が急務とされている。他国と比較して労働時間が長いにもかかわらず生産性は低く、この状況が経済成長の阻害要因となっている。今後は労働環境の改革とDXやAIなどの活用による作業効率化が必要であり、多様な働き方の推進が求められると考えられる。 日本経済新聞 2025.5.4  

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OpenAIの営利化の可能性

対話型AI「ChatGPT」を開発・運営する米オープンAIが、NPOから営利企業へと転じる計画を断念した。代表のアルトCEO は昨年に営利化を表明し、マイクロソフトやソフトバンクグループから資金を調達して営利化への準備を進めたが、「安全が担保できない」等の営利化に反対の声も根強くあった。その一方で、営利化断念により開発スピードが鈍ることを懸念する声もある。 5/7 朝日新聞クロスサーチ朝刊1面 https://xsearch.asahi.com/kiji/detail/?1746594085518

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完全オンデマンド型の大学誕生

全く異なる性質の東京大学とZEN大学が異なる理念で新たな教育への挑戦を始めた。ZEN大学は2027年9月に創設予定の完全オンライン型の大学で、授業は全てオンデマンド形式で行われる。「本当に全てオンラインで大丈夫なのか」と疑問視する声もあるが、大学教育、入試、高校教育のそれぞれが転換点を迎えている今、保護者を含む全ての教育関係者が、変化への感度を高めていく必要がある。 5/5 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD258VU0V20C25A4000000/

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