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卒業論文

「推し活とぬい活から見るソリッド消費の再評価」 I.リキッド消費の台頭 この章では、数十年前のそれからは大きく変容を遂げた「消費」の形を説明する為に、特に現代において「リキッド消費」と呼称されるものについて紹介していく。 かつての社会で圧倒的に主流であった消費の形態は、「モノを所有して消費する」という消費の仕方だった。日本経済においては、戦後の高度成長期やバブル期に非常に盛んだった傾向であり、何かを所有すること、それ自体に価値が置かれていた消費の形態とも形容できる。そんな消費と対になる概念が「モノを所有せずに消費する」という消費の仕方を表すリキッド消費である。これは、正に現代になってから注目され始めた消費の形態であり、リキッド消費という概念が生まれ、議論がなされ始めたのも、比較的最近の2017年のことだ。但し、リキッド消費とは数年単位で移り変わるようなトレンディな消費傾向を指す言葉ではなく、今後数十年という単位で議論されるべき、大きな流れである。 近年リキッド消費が注目されるようになった理由は、一般的に「デジタル技術の進展(それに伴うシェアリングエコノミー、サブスクリプションサービスの浸透)」や「人々の価値観の変化」、「環境意識の高まり」などがあるとされている。中でも特に重要だと考えられるのは「デジタル技術の進展」である。スマートフォンなどに代表される個人デバイスの普及、インターネットなどの通信インフラの高度化によって、個々人は必要な時に必要な分だけ、商品やサービスにアクセスすることが可能になった。こうした環境の変化が、従来の「モノの所有」を中心とした消費形態から、「モノの利用」を重視する新しい消費形態の創出を促した。近年のシェアリングエコノミーやサブスクリプションサービスの急速な拡大は、リキッド消費の社会浸透を象徴する最たる例と言える。 その具体例として、2つの企業を取り上げてみる。 まず第一に、音楽産業においては、サブスクリプション型のストリーミングサービスを提供する企業が増加傾向にあるが、ここではその中でも世界最大手と名高いSpotifyを挙げる。Spotifyは、2025年現在、世界180ヶ国以上の国と地域で、7億1300万人のユーザー(うち2億8100万人が有料会員)に利用されている。主なサービスとして、膨大な楽曲カタログへのアクセス権を月額料金制で提供しており、ユーザーは所有する為の購入行為を行うことなく、必要な時に必要な楽曲に即座にアクセスできる。これはCDやダウンロード購入を前提とした従来の消費とは異なり、リキッド消費に即した形の消費行動を社会にもたらした。同社は、現在に至るまで継続的にユーザー数と収益を伸ばし続けてきている。月間ユーザー数は、2015年第一四半期時点では6800万人であったのが、2024年第一四半期時点では5億7000万人を超え、2025年第一四半期時点では6億7500万人を獲得している。特に2024年から2025年にかけては月間ユーザーが1億人増加しており、さらに有料会員に関しても、2億3000万人から2億6300万人と、大幅な伸び率を記録している。 第二に、シェアリングエコノミーの代表例として、パーク24の提供する大手カーシェアリングサービス、タイムズカーシェアを取り上げる。カーシェアリングは、個人が自家用車を所有する代わりに、必要なときだけ近隣のステーションから車両を利用できるサービスである。予約から返却までが無人で完結することや、時間制でどんなタイミングでも気軽に使用ができることなどから、レンタカーよりもさらに柔軟性のある利用を可能にしている。従来通り、車両を所有した上で利用する場合には、車両本体の購入費用や維持費、駐車代等、多くのコストを負担せねばならないが、カーシェアリングにおいてはこうした費用を利用者が意識する必要がない。このカーシェアリングという事業形態が社会に受容され、利用されている所にも、使いたい時に使いたいだけアクセスするという、リキッド消費の浸透を見ることが出来る。 II.リキッド消費の特徴 リキッド消費とは、2017年にマーケティング学者であるBardhi and Eckhartの論文で示された概念であり、社会学者であるBaumanのリキッド・モダニティ論から着想を得たものとされている。端的には「短命性、アクセスベース、脱物質的」という3つの特徴を持つ消費のことである。 短命性とは、我々消費者の価値観が流動的になった結果、社会構造そのものが変化する速度が早まったり、技術革新などの要因によって製品ライフサイクルが短くなったりすることで、消費者と消費対象との関係性や、それらから得られる価値が、一時的で持続せず、特定の文脈で固有となる、という特徴のことである。デジタル化の進展によって更新頻度が高まる傾向にあるソフトウェアなどが代表例となる。 アクセスベースとは、消費者がレンタルやシェアなどの方法で消費対象を利用し、取引の後でも対象の所有権の移転は行われない、という特徴のことを表す。あくまで消費者は一時的な利用者に過ぎない。カーシェアリングやシェアサイクルなどが代表例である。 脱物質的とは、同じレベルの機能を得るのに、より少ない物質を使うこと、もしくは全く物質を使わない、という特徴のことを表す。これには情報製品やサービス、経験の消費も含まれている。この特徴もデジタル化の進展の影響を強く受けているもので、各種サブスクリプションサービスやストリーミングサービスが代表例である。 また、リキッド消費が選好される場合の状況というものも存在する。対象の製品およびサービスについて、自己関連性が低い場合。SNSでの投稿やアフィリエイトなど、打算的で商品化された社会関係を持つ場合。状況的に、モビリティ・システムが充実しており、移動手段などに簡単にアクセス出来る場合。偶発性に左右されるクリエイティブ産業などに従事する人の場合。以上のような場合、従来のような所有ベースの消費ではなく、アクセスベースのリキッド消費がなされるとされている。 数々のリキッド消費に関する議論において、一側面が強調されたり、解釈に幅はあったりするものの、基本的な特徴は以上のようなものである。 III.研究目的および先行研究の整理 1.研究目的と背景 前章までは、近年世界的に広がりを見せているリキッド消費に関しての紹介と説明を行ってきたが、ここで本論文の目的と、その背景について説明する。 昨今、「推し活」や「ぬい活」というワードが社会の中でも大きな話題となっている。かつてはそう一般的に知られるような概念ではなかったかもしれないが、どちらも近年の新語・流行語大賞としてノミネートされ認知されるなど、若年層を中心とした社会に浸透していると考えて相違ないだろう。公的機関の調査結果こそ出ていないものの、民間の調査機関によれば、2021年の「推し活」の市場規模は約7000億円と推定されていたのが、2025年3月時点での市場規模は約3.8兆円に達すると推計されており、推し活を行う人口そのものはもちろん、これに着目する組織や製品・サービスも増加傾向にあると見受けられる。 推し活の内容はコンテンツビジネスに限定したとしても多岐に渡るが、その中でも直近で話題になっている「ぬい活」は、リキッド消費が広まる現代社会の中にあって、それとは対照的な、いわゆるソリッド消費に明確に分類される消費形態であると考えられる。一方で、ライブや聖地巡礼、イベント参加など、どちらかと言えばリキッド消費の側面を持つような推し活の存在も無論根強い。 つまるところ、推し活というのはスペクトラムの対極に位置する概念であるリキッド消費とソリッド消費が、同じ瞬間に成立・もしくはその狭間にあるような消費が行われている文化なのである。 そこから、今後のコンテンツビジネスや玩具ビジネスにおけるソリッド消費の再評価傾向やリキッド消費とソリッド消費の側面を併せ持つ、より特殊な消費形態、そして昨今のSNS社会において、消費者がモノの価値を作り出す可能性などについて考察しつつ、リキッド消費研究などが盛んな今、敢えて現代のコンテンツビジネスにおけるソリッド消費の持つ優位性を述べ、今後のソリッド消費の展望を明らかにすることを本研究の目的とする。 2.先行研究の整理 本論文では、以下2つの先行研究を取り上げて説明する。 2023年に発表された、慶應義塾大学の北澤氏、小野氏の論文(※1)では、コンテンツビジネスの消費者について、コンテンツの自己関連性の低い「ファン」、コンテンツの自己関連性が高く、社交性も高い「マニア」、コンテンツの自己関連性は高いが、社交性が低い「オタク」、という風に3種類に定義し、分析している。 コンテンツの販売形態におけるリキッド消費についても新たな解釈を加えており、貸本やレンタルビデオ、サブスクリプションサービスなどにおけるリキッド消費を「レンタル=サブスク型リキッド消費」、ライブや聖地巡礼などにおけるリキッド消費を「経験価値型リキッド消費」として呼称している。前者はリキッド消費研究の視点に適合するもので、消費者にとって低コストであり、それ故に自己関連性が低い消費者に選択される。後者は、経験価値研究の視点に適合するもので、経験価値研究においては、リキッド消費研究の指摘とは矛盾するようだが、自己アイデンティティやコミュニティの形成がなされる経験消費の方が物質消費よりも幸せになれるものとされている。経験価値型リキッド消費はレンタル=サブスク型リキッド消費とは反対に、消費者にとって高コストであり、自己関連性の高い消費者においてのみ選択される。 また、実験を通じて、ファンは個人的所有感と集団的所有感が低く、レンタル=サブスク型リキッド消費を選択すること、マニアは個人的所有感と集団的所有感が共に高く、経験価値型リキッド消費とソリッド消費を選択すること、そしてオタクは個人的所有感は高いが集団的所有感が低く、ソリッド消費を選択することを証明している。 2021年に発表された、慶應義塾大学大学院の山本氏の論文(※2)では、リユース行動の広まりに関連して、従来の所有行動や共有行動とは異なる新しい所有の方法として、一時的所有行動という概念を提唱している。 近年、フリマアプリやオークションサイトといったオンライン・プラットフォームの整備によって、活発かつ健全な二次流通市場が生まれ、不用品が容易に売却出来るようになり、また売却価格や再販価格も逐一把握出来るようになった。こうした理由から、一時的所有行動に注目すべきであると説明している。また、一時的所有に関連する先行研究として、リキッド消費、共同消費、シェアリング・エコノミーを、それぞれに複数の定義があるとしながら概観し、その上で、一時的所有行動を行う消費者を想定し、フリマアプリの利用者の観点から、一時的所有行動との相違点を説明している。 リキッド消費の分野では、「新品を数回(あるいは1回)使って売った経験がある」、「モノをあまり持ちたくない」と考えるフリマアプリ利用者が存在すると示す調査結果から、モノの所有期間の短期化や脱物質主義的な消費が広まっており、リキッド消費の特徴を備えていると説明。アクセス・ベースの観点から考えた場合のみ説明はやや特殊になり、一度所有権の移転が起こる一時的所有行動はそれに当てはまらないように考えられるが、一時的な所有は「それが必要な間のみ、その製品の価値にアクセスしている」とも捉えられる、としている。以上のことから、一時的所有行動は、ソリッド消費とリキッド消費とを両極としたスペクトラム上に位置させた場合、極めてリキッド消費的であるという。 共同消費においては、所有権の移転が行われる取引を含めるかどうかという点で議論が分かれているものの、その特徴として重要なのはC2Cの経済的交換であることと、その仲介がプラットフォームで行われることにこそある。一時的所有が最終的には二次流通を見据えた所有行動であることと、二次流通市場がプラットフォームであると当て嵌められる点から、「一時的所有は所有権の移転を伴う共同消費」と説明している。 シェアリング・エコノミーの観点においては、経済的価値の移転、プラットフォームの仲介、拡張された消費者の役割、クラウドソーシングされた供給、一時的アクセスという5つの側面の内、一時的アクセスを除いた4つの側面は有しているものと考えている。 以上のことを総括し、一時的所有は、その関連概念と比較して、所有権ベースでありながらも、その実態はリキッド消費的であるという所に独自の特徴があると結論付けている。また、従来の所有行動と比較して、C2CやC2Bなど、B2Cに限らない取引形態の多様さであったり、従来の所有行動とは異なり、購入時に売却することを想定しているが故の所有期間の短さであったり、リユースの選択肢拡大による所有の停止方法の違いであったりと、相違点についても明らかにしている。 4章「リキッド消費とソリッド消費に関する考察」 1.新規性について 北澤、小野(2023)の論文においては、リキッド消費を「レンタル=サブスク型リキッド消費」と「経験価値型リキッド消費」という2つの分類にしたり、コンテンツビジネスにおけるファンとマニア、オタクがどのような論理でどのような消費・所有行動を選択するのかを明らかにしたりしているが、コンテンツビジネスにおけるソリッド消費そのものが持つ可能性や展望についての研究はしていない。また、コンテンツ消費者や心理的所有感、消費様式を2種類から3種類として取り扱っているが、これ以外の種類を識別してモデルに取り込むことはしなかったとしている。 山本(2021)の論文においては、所有権ベースでありながら、実態はリキッド消費に即しているという一時的所有の概念を提唱し、「リキッド消費とソリッド消費の側面を併せ持つ、より特殊な消費形態」について説明したり、所有行動における消費者の介入について触れているが、こちらもソリッド消費そのものについては研究されていない。 本研究では、推し活やぬい活という消費行動から、今現在起こっていると考えられるソリッド消費の再評価、そして消費者がモノの価値を作り出している可能性について考察し、ソリッド消費の今後の展望について予測することを新規性としたい。 … 続きを読む

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2章と3章(仮)

2章「リキッド消費の特性」 リキッド消費とは、2017年にマーケティング学者であるBardhi and Eckhartの論文で示された概念であり、社会学者であるBaumanのリキッド・モダニティ論から着想を得たものとされている。端的には「短命性、アクセスベース、脱物質的」という3つの性質を持つ消費のことである。 短命性とは、我々消費者の価値観が流動的になった結果、社会構造そのものが変化する速度が早まったり、技術革新などの要因によって製品ライフサイクルが短くなったりすることで、消費者と消費対象との関係性や、それらから得られる価値が、一時的で持続せず、特定の文脈で固有となる、という性質のことである。 アクセスベースとは、消費者がレンタルやシェアなどの方法で消費対象を利用し、取引の後でも対象の所有権の移転は行われない、という性質のことを表す。あくまで消費者は一時的な利用者に過ぎない。 脱物質的とは、同じレベルの機能を得るのに、より少ない物質を使うこと、もしくは全く物質を使わない、という性質のことを表す。これには情報製品やサービス、経験の消費も含まれている。 また、リキッド消費が選好される時の特徴も存在する。対象の製品およびサービスについて、自己関連性が低い場合。SNSでの投稿やアフィリエイトなど、打算的で商品化された社会関係を持つ場合。状況的に、モビリティ・システムが充実しており、移動手段などに簡単にアクセス出来る場合。偶発性に左右されるクリエイティブ産業などに従事する人の場合。以上の場合、従来のような所有ベースの消費ではなく、アクセスベースのリキッド消費が選ばれるとされている。 数々のリキッド消費に関する議論において、一側面が強調されたり、解釈に幅はあったりするものの、基本的な性質は以上のようなものである。 3章「研究目的および先行研究の整理」 研究目的と背景 前章までは、近年世界的に広がりを見せているリキッド消費に関しての紹介と説明を行ってきたが、ここで本論文の目的と、その背景について説明する。 昨今、「推し活」や「ぬい活」というワードが社会の中でも大きな話題となっている。かつてはそう一般的に知られるような概念ではなかったかもしれないが、どちらも近年の新語・流行語大賞としてノミネートされ認知されるなど、若年層を中心とした社会に浸透していると考えて相違ないだろう。公的機関の調査結果こそ出ていないものの、民間の調査機関によれば、2021年の「推し活」の市場規模は約7000億円と推定されていたのが、2025年3月時点での市場規模は約3.8兆円に達すると推計されており、推し活を行う人口そのものはもちろん、これに着目する組織や製品・サービスも増加傾向にあると見受けられる。 推し活の内容はコンテンツビジネスに限定したとしても多岐に渡るが、その中でも直近で話題になっている「ぬい活」は、リキッド消費が広まる現代社会の中にあって、それとは対照的な、いわゆるソリッド消費に明確に分類される消費形態であると考えられる。一方で、ライブや聖地巡礼、イベント参加など、どちらかと言えばリキッド消費の側面を持つような推し活の存在も無論根強い。 つまるところ、推し活というのはスペクトラムの対極に位置する概念であるリキッド消費とソリッド消費が、同じ瞬間に成立・もしくはその狭間にあるような消費が行われている文化なのである。 そこから、今後のコンテンツおよびキャラクタービジネスにおけるソリッド消費の再評価傾向や、リキッド消費とソリッド消費の側面を併せ持つ、より特殊な消費形態についても考察しつつ、今後パブリッシャーはどのように消費者のことを捉え、どのようなモノを商品として提供していくべきなのか、具体的に提案したいと考えている。

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1章「リキッド消費の台頭」(改めたもの)

この章では、数十年前のそれからは大きく変容を遂げた「消費」の形を説明する為に、特に現代において「リキッド消費」と呼称されるものについて紹介していく。かつての社会で圧倒的に主流であった消費の形態は、「モノを所有して消費する」という消費の仕方だった。日本経済においては、戦後の高度成長期やバブル期に非常に盛んだった傾向であり、何かを所有すること、それ自体に価値が置かれていた消費の形態とも形容できる。そんな消費と対になる概念が「モノを所有せずに消費する」という消費の仕方を表すリキッド消費である。これは、正に現代になってから注目され始めた消費の形態であり、リキッド消費という概念が生まれ、議論がなされ始めたのも、比較的最近の2017年のことだ。但し、リキッド消費とは数年単位で移り変わるようなトレンディな消費傾向を指す言葉ではなく、今後数十年という単位で議論されるべき、大きな流れである。 近年リキッド消費が注目されるようになった理由は、一般的に「デジタル技術の進展(それに伴うシェアリングエコノミー、サブスクリプションサービスの浸透)」や「人々の価値観の変化」、「環境意識の高まり」などがあるとされている。中でも特に重要だと考えられるのは「デジタル技術の進展」である。スマートフォンなどに代表される個人デバイスの普及、インターネットなどの通信インフラの高度化によって、個々人は必要な時に必要な分だけ、商品やサービスにアクセスすることが可能になった。こうした環境の変化が、従来の「モノの所有」を中心とした消費形態から、「モノの利用」を重視する新しい消費形態の創出を促した。近年のシェアリングエコノミーやサブスクリプションサービスの急速な拡大は、リキッド消費の社会浸透を象徴する最たる例と言える。 その具体例として、2つの企業を取り上げてみる。 まず第一に、音楽産業においては、サブスクリプション型のストリーミングサービスを提供する企業が増加傾向にあるが、ここではその中でも世界最大手と名高いSpotifyを挙げる。Spotifyは、2025年現在、世界180ヶ国以上の国と地域で、7億1300万人のユーザー(うち2億8100万人が有料会員)に利用されている。主なサービスとして、膨大な楽曲カタログへのアクセス権を月額料金制で提供しており、ユーザーは所有する為の購入行為を行うことなく、必要な時に必要な楽曲に即座にアクセスできる。これはCDやダウンロード購入を前提とした従来の消費とは異なり、リキッド消費に即した形の消費行動を社会にもたらした。同社は、現在に至るまで継続的にユーザー数と収益を伸ばし続けてきている。月間ユーザー数は、2015年第一四半期時点では6800万人であったのが、2024年第一四半期時点では5億7000万人を超え、2025年第一四半期時点では6億7500万人を獲得している。特に2024年から2025年にかけては月間ユーザーが1億人増加しており、さらに有料会員に関しても、2億3000万人から2億6300万人と、大幅な伸び率を記録している。 第二に、シェアリングエコノミーの代表例として、パーク24の提供する大手カーシェアリングサービス、タイムズカーシェアを取り上げる。カーシェアリングは、個人が自家用車を所有する代わりに、必要なときだけ近隣のステーションから車両を利用できるサービスである。予約から返却までが無人で完結することや、時間制でどんなタイミングでも気軽に使用ができることなどから、レンタカーよりもさらに柔軟性のある利用を可能にしている。従来通り、車両を所有した上で利用する場合には、車両本体の購入費用や維持費、駐車代等、多くのコストに向き合わねばならないが、カーシェアリングはこうした負担を全て取り除く。このカーシェアリングという事業形態が社会に受容され、利用されている所にも、使いたい時に使いたいだけアクセスするという、リキッド消費の浸透を見ることが出来る。

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1章

1章「リキッド消費の台頭」 この章では、数十年前のそれからは大きく変化を遂げた「消費」の形を説明する為に、特に現代において「リキッド消費」と呼称されるものについて紹介していく。かつての社会において圧倒的に主流であった消費の形態は、「モノを所有して消費する」という消費の仕方だった。特に日本の歴史の中では、戦後の高度成長期やバブル期に非常に盛んだった傾向であり、何かを所有すること、それ自体に価値が見出されていたとも言える。そんな消費と対になる概念が「モノを所有せずに消費する」という消費の仕方を表すリキッド消費である。これは、正に現代になってから注目され始めた消費の形態であり、リキッド消費という概念が生まれたのも、人類史的に見れば比較的最近の2017年のことだ。しかし、ここ最近で話題になっているという側面からして誤解されがちだが、リキッド消費とは数年単位で移り変わるようなトレンディな消費傾向を指す言葉ではなく、今後数十年という単位で議論されるべき、大きな流れである。とはいえ、人間の生活とは切っても切り離せない消費という大きな概念に、近年新たなスペクトラムが加わった、というのは些か想像がつきにくいかもしれない。だが、近代になってようやく見出されたというのにも、やはりそれなりの理由がある。一般的に「デジタル化の進展(それに伴うシェアリング・サービス、サブスクリプション・サービスの浸透)」や「所有から利用へ、というような人々の価値観の変化」、「環境意識の高まり」などが理由として挙げられているが、特に重要であると考えられるのは「デジタル化の進展」である。つまり、インターネットの普及とスマートフォンなどに代表される個人デバイスの普及だ。 (これ以降研究内容か、ソリッド消費の話になってしまう)

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卒論に関して

【章立て(仮)】 ①社会におけるソリッド消費からリキッド消費への変遷 ②リキッド消費、ソリッド消費とは(先行研究の事例など) ③前項を踏まえてのモノ消費、コト消費、トキ消費とは何か、またリキッド消費やソリッド消費との差異などのまとめ ④現状の整理(推し活市場の拡大やトキ消費の流行などについて) ⑤トキ消費とソリッド消費の関連性の説明、及び今後のコンテンツ・ビジネスにおけるモノの販売戦略の検討 ⑥結論 前回の言論をある程度整理したもの モノ消費は殆どソリッド消費と同じ意味を持ち、コト消費は魅力的なサービスや空間設計によってデザインされた「時間」を消費する為、リキッド消費そのものというと語弊があるが、それを促進するものとして扱われる。そしてさらに、コト消費よりも限定性や非再現性、参加性や貢献性が特に高い消費がトキ消費と言われている。例えば音楽ライブだとかワールドカップ観戦だとか、応援上映だとかだ。トキ消費は、コト消費に要素が加わった進化系とも捉えられる。 (基本調べたものをベースに解釈していますが、自分のことなので、前回のように間違った解釈をしている部分があるかもしれません。) 無論細部(価値の源泉や何を示すものなのか)は異なるが、リキッド消費が広まってきたという背景のもと、コト消費やトキ消費が増加傾向にあるというように、ある程度重なる部分があり、相関させて整理することが出来ると、私は考えている。 そんな中で、こと推し活であるとかトキ消費だとかに関しては、よく「所有したモノを用いて参加・応援する」ということがかなりの規模感で行われているということに私は気がついた。ソリッド消費とトキ消費が繋がったような感じがした(まぁ多分繋がっちゃいないんだろうが)のはこの時だ。リキッド消費が広まる中で、ソリッド消費の強みを再認識する機会がある、というのが興味深かった。 そして、凄まじく狭い対象のように感じられるが、推し活に代表されるような「トキ消費に先立つ(あるいはトキ消費の価値を一層高めようとする)ソリッドな消費」というのが、個人的には1番面白く、そして昨今において活発な消費行動だと考えた。それは好意だとか熱意だとか所有欲だけに根差すものではなく、トキ消費が内包する性質である参加性や貢献性が働いているものだ。その存在を主張したい、というのが、恐らくは最も自分が言いたいことだ。考えがふわっとしているし、下手くそな文だから、どの道理解は得られないだろうが。 未だに上手く言えないが、リキッド消費やらが広がる社会の中でそういった消費行動があり、今後さらに広がっていく可能性があると示されているというのは面白いことであり、今後のコンテンツ・ビジネスにおいてどんなモノを売り出していくのかを考慮する上で、示唆に富むものになるのではないかと考えた訳だ。 ただし、これに関しては自身の実体験から得た感覚や経験が主な情報源となっている為、論文として書き上げるのは難しいかもしれない。様々な要素を考慮すると、一からまた考え直した方が良いだろう。

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卒論 アウトライン

【テーマ(タイトル):『推し活』から考えるソリッド消費の未来】 昨今、シェアリングサービスやサブスクリプションサービスなどに代表されるような、アクセスベースで、モノ自体を所有しないリキッド消費が広まりを見せている。これまでの物的所有をベースとした消費であるソリッド消費とは対になる消費の形態であるといえるが、数々の言説の中で、「ソリッド消費がなくなることはない」とされている。考えてみれば当然のことだが、しかしソリッド消費がなくなることはなくとも、今後どのようになっていくか、についてはあまり触れられておらず、ソリッド消費そのものについて掘り下げられることは存外ないように見受けられる。 そこで、この論文ではリキッド消費と対比させながらも、現代のコンテンツ・ビジネスにおけるソリッド消費について焦点を当ててみたいと考える。 このリキッド消費が広がる社会の中で、ソリッド消費が選好されるような状況とは、どんなものなのか。今日の若者の消費傾向として確実に存在する消費傾向である「推し活」には、その答え、ないしはヒントがある、と私は考えている。扱う題材が故に、取り敢えずはコンテンツ・ビジネスに限った話にはなるが、リキッド消費が広がる現代においても、ソリッド消費を意識することの重要さを主張していきたい。

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(るるぶ)AI作文&作曲&おススメコンテンツ

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AI雑誌資料

ゼミ用のやつ ↑添える文章がぜんっぜん思いつかなかった為、一旦実行結果のせただけの資料です。(AIオススメコンテンツ、作詞作曲、小説作成 ※全部原文そのままコピーしたり、SSしたものです) https://suno.com/song/00d6a403-6b8e-43db-a18b-85dca94e575d ↑AI君が作成してくれたものです。  

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【論文要約・紹介 デジタル社会におけるブランド戦略】

この研究は、Bardhi&Eckhardt(2017)の「リキッド消費」の概念をもとに、デジタル社会におけるブランド戦略を広い視点から検討するもの、としている。 Kubota(2020)の先行研究を踏まえ、リキッド消費と社会の液状化現象を消費行動の観点から再考し、それに対応するブランド戦略のあり方を探る。つまり、「リキッド消費が進む中で企業や組織が取るべきブランド戦略の方向性を俯瞰的に検討すること」が本研究の目的である。 I.リキッド社会におけるブランド消費 1.リキッド消費環境におけるブランド消費傾向 はじめに、筆者はリキッド消費の特性(短命性、アクセスベース、脱物質)について説明している。(ここでは割愛する)また、リキッド消費がブランド消費行動において①使用価値の重視や使用価値志向の行動、②量的な意味での物質主義の強まり、③活発なブランド遷移、④占有志向の弱まり、⑤ロイヤルティとコミットメントの希薄化、⑥不即不離の関係、⑦流動的な愛着、⑧コミュニティの変化といったことが重要になると述べている。 2.文脈への適合と消費の手軽さがもたらす心地よさ 本節は、リキッド消費環境において、消費者はその時々の文脈に応じて最適なブランドを消費していくという書き出しに始まる。 これまで重視されてきた「象徴的価値」や「自己とブランドの結び付き」などの要素の影響が小さいものとなり、より実用的で大きな効用をもたらす変化に富んだ消費を、消費者はするようになる訳だ。そんな中で、マーケターは流動的なニーズに適切に対応することとなる。文脈に応じて製品・サービスを変化させたり、選択や購買に関する消費者の労力を低減させることで、「より大きな効用をもたらす変化に富んだ消費」を実現する。 リキッド消費を前提としたブランド・マーケティングでは、文脈への適合とブランド消費の手軽さがポイントだという。これらが消費者に与える快適性、心地よさは、リキッド消費に対応したブランド戦略の鍵であると、筆者は考えている。 3.2つの戦略 前項の文章(文脈、というと紛らわしい為変えてあるが、その意である)を踏まえると、「裾野を広げる」と「生活の中に溶け込む」という2つの戦略を導き出せるのだそうだ。 裾野を広げる戦略というのは、リキッド消費環境において起こりがちなブランド・スイッチング傾向を肯定的に捉えた上で、より多くの消費者を自社ブランドのユーザーとして獲得する戦略。 一方で生活の中に溶け込む戦略というのは、必要な時に必要なものを提供し、消費者の日常を形作る存在となる戦略。 これらはそれぞれ、「心地よい取引」を武器にした広い範囲から消費者を取り込もうとする「幅」の戦略と、「心地よい関係」を武器として顧客との関係を深化させる「深さ」の戦略だといえる。 1つ目は従来のブランド戦略の応用だが、2つ目の生活に溶け込む戦略はこれまでのものとは趣を異にするものであるようだ。 II.裾野を広げる 1.戦略の概要 ブランド・スイッチングを前提とした、裾野を広げる戦略では、いわゆるロイヤル・ユーザーだけでなく、購買額や購買頻度が低い顧客にも目を向けなければならない。その為には、消費者にとって手軽で買いやすい状態を提供して、「心地よい取引」をしてもらうのが重要。 この戦略の背後には、Ehrenbergが指摘した「ダブル・ジョパディ」という経験的法則が理論的基盤として存在している。多くの市場データの分析から、市場シェアの高いブランドは市場浸透率(その市場を構成する人々の中で、ある一定期間内に1度でもそのブランドを購入したことがある人の割合)が高く、購買頻度もやや高い傾向にあるが、市場シェアの低いブランドは顧客の少なさとロイヤルティの弱さ(低購買頻度)という二重苦(Double Jeopardy)を背負っている、というのが指摘の内容である。 ダブル・ジョパディは、市場に「極めて類似する」「同等のメリット」を持つようなブランドが複数存在し、大半の消費者は同じようなブランドでも知名度の高いものを選好する為に発生するという。 こうして市場シェアの低いブランドは市場浸透率も購買頻度も低いものとなる訳だが、これまでの研究や調査により、購買頻度の差については、実際僅かであることが分かっているようだ。その為、ダブル・ジョパディを考慮した議論においては、大きなブランドを目指すのならば、市場浸透率を高めるべきだという結論に辿り着くのが一般的だという。 ここまでの説明から、ダブル・ジョパディの考え方は、リキッド消費の示唆する購買行動によく当てはまるものであることが分かる、と筆者は述べる。また、手軽で買いやすい状態を提供することで、自社ブランドのユーザーを多く獲得しようとする戦略が導けるようだ。また、この裾野を広げる戦略には、さらに3つの下位戦術が考えられるという。 2.戦術1:選択・購買・使用を容易にする 第1の戦術は、つまりその場に応じた価値(とりわけ使用価値)を、簡単に選び、手に入れ、使えるようにすることを意味している。より多くの消費者を自社ブランドのユーザーとして取り込む為には、いわゆるライト・ユーザーにも目を向ける必要があるため、こうした工夫はとても大切だという。 第1の戦術の要点となるのが、「ブランドの意味のわかりやすさ」である。ブランドの意味が分かりやすくなると、知識や動機づけが十分でなくとも、その場のニーズにフィットしたブランドを選びやすくなる。 もうひとつ要点となるのが、「手続きの容易さ」だ。例えば発注、支払、配送の手続きを自動化したり、省力化したりすることは手続きの容易さにつながる。 筆者は最後に、「安心感」を高めることも大切だと付け加えている。 3.戦術2:消費者が多様性を楽しめるようにする これは文脈に合わせて最適なブランドを消費したいという、バラエティを求める移り気な消費者へのアプローチである。 この第2の戦術を実践する方法は少なくとも2つある。1つは特定のブランドを使用し続けながら、新製品やリニューアルによって変化に富んだ消費を経験できるようにする方法。もう1つは、積極的にバラエティ・シーキング行動を支援する方法で、この場合ブランド・ポートフォリオを充実させることで、自社ブランド内を回遊してもらうような仕組みが有効となる。 4.戦術3:非能動的な選択を促す いわば、「コカ・コーラ」でも他のジュースでも良い時に、「コカ・コーラ」を選んでもらえる確率を高める戦術だ。 リキッド消費環境では、実用的なベネフィットに重点が置かれ、多くのブランドのコモディティ化が促されることになり、深く考えずに買ってみるといった行動が多くなる。 非能動的な選択の1つは、たまたま買ったというような偶発的な選択。このタイプの戦術の鍵となるのが、ブランド認知と「セイリエンス(顕現性)」を高めることだという。 非能動的な選択には、無意識的あるいは習慣的な選択もある。こういったことは珍しくなく、無意識的な選択を促すなら、感覚マーケティングや選択アーキテクチャの研究が参考となる。 III.生活の中に溶け込む 1.戦略の概要 第1の戦略が個人との相互作用を前提としないものであるのに対して、第2の戦略は相互作用によって、顧客一人一人を理解し、パーソナライズされた対応をしようとするもの。そこでは、消費者の求めるものを察し、ブランド側が自ら柔軟に対応することで、生活の中での接点を増やす。そして消費者の生活になじみ、一体になろうとすることから、「生活の中に溶け込む」戦略と言えるようだ。 これの具体例として、筆者はAppleなどのエコシステム型ブランド、Amazonなどの生活を多面的に支える小売・サービスブランドを挙げている。 … 続きを読む

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【論文要約・紹介 「デジタル化時代の消費文化」】

【はじめに】 昨今の消費及びそれに関連する活動は、PC・スマホなどの通信デバイスによって、オンラインで行われるようになってきたことについて触れる。この消費プロセスの浸透については、1990年代以降から動きがあったが、特にコロナ禍での生活様式の変遷により、一層それが加速したと説明。 AIやIoTなど画期的なデジタル技術の登場、デジタル・インフラの整備等、生活や社会のあらゆる領域での「デジタル化」が進展していく中で、消費者が何をどのように求めるのかが劇的に変化している、と筆者は述べる。 また、デジタル化は利用やアクセスを重視できる消費環境を構築した為、これまでの消費(=ソリッド消費)の特徴だった所有感覚や物質主義という基盤を揺るがしている。これまでその基盤の上で議論されてきた、消費社会学的研究である、「顕示的消費」、「記号消費」、「消費者のアイデンティティ形成」、「プロシューマー」、「マクドナルド化」などの概念は再考されなければならないとしている。 本論文では、第1に「拡張自己」(Belk/2013)、「リキッド消費」(Bardhi and Eckhardt/2017)、そして「マクドナルド化」(Ritzer and Miles/2019)という3つの先行研究の整理を行い、第2にこれらを消費プロセスの中に位置付けた上で、デジタル化の影響を考察する。第3に、以上の結果を踏まえた上で、今後の研究においての課題について提案を行うとしている。 【拡張自己】 筆者は、Belkがインターネットが普及する前に提唱した拡張自己の概念を、デジタル化が進む現在に適応させたと説明する。拡張自己を捉え直す為に、Belkは「脱物質化」、「再具現化」、「共有」、「自己の共構築」、「分散記憶」という5つを、デジタル化における重要な変化としており、元の概念に考察を加えているようだ。 「脱物質化」は、所有物がモノの形を取らなくなること。紙やCD、DVDなどの記録メディアが必要だったものや、ゲームの中の実在しない所有物(売買の対象にもなる)などが該当する。 「再具現化」は、SNSやゲームなど、視覚的に表現されるオンライン環境において、具体的に自己を提示できるということ。かつては自分に付随するモノ(服や髪型や車など)を変えることでのみ表現していたアイデンティティが、より自由に簡単に操作され、使い分けることする出来るという。 「共有」は、SNS、掲示板、YouTubeなど誰もが参加して簡単に情報を発信できるWebサービスの爆発的な増加を示している。多くの人に自己顕示が出来るが、自己イメージのコントロールが困難になることもある。 「自己の共構築」とは、他者との相互作用により、自己が共同で構築されることである。SNSユーザーは、その特性から他者からの承認や自己肯定感を追求するようになる。 「分散記憶」とは、様々なデジタル・ツールの発展により、自伝的な記憶や思い出がほぼ無限に蓄積でき、かつそれらを自由に取り出せること。かつては、所有物に過去の記憶が埋め込まれているとされてきたが、今では写真やツイートなどの形で、PCやスマートフォンなどに分散して保存されている。 結論として、従来の拡張自己概念がデジタル世界においても有効であることだけでなく、むしろ新たなデジタル製品・サービスの登場により、事故拡張の手段が飛躍したと主張されている。他方で、仮想所有物と物的所有物では自己拡張の効果の強弱が異なるという指摘もある。 ただし、これらの議論は、基本的には情報財や情報コンテンツの消費に限るものというのを留意しなければならないと、筆者は述べている。とはいえ、デジタル化は従来からあるモノやサービスと消費者との関係性も変化させており、その点を補足するのが、次項で触れる「リキッド消費論」である。 【リキッド消費】 ここで筆者はバウマンのリキッド・モダニティ論から着想を得た、「リキッド消費」の概念について説明する。 この辺りは前回紹介した論文でも触れた部分なので、かなり大幅に省くが、前半では「リキッド消費」は「短命性、アクセスベース、脱物質化」という特性を持ち、「永続的、所有権ベース、物質的」という特性を持つ「ソリッド消費」と対極をなすものであると説明し、それらの深堀りを行っている。後半では、リキッド消費論は「ソリッド消費からリキッド消費への移行」が主張されている訳ではなく、それらを両極としたスペクトラムが想定されているとしている。消費がそのスペクトラム上、ソリッドとリキッドいずれの特徴を強めるかどうかは、4つの条件(消費者のアイデンティティ、社会関係の性質、モビリティ・ネットワークへのアクセシビリティ、不安定性)に影響されているとし、以降具体的にはどのような条件、状況においてどんな消費が選考されるかという考察に移っている。(これも前回紹介したものと被る部分なので割愛する。) 【マクドナルド化】 ここでは、Ritzerがデジタル化の影響も考慮して、マクドナルド化論の更新を試みたことについて触れている。 そもそも「マクドナルド化」とは、「効率性」、「計算可能性」、「予測可能性」、「制御」といった、「ファスト・フードレストランの諸原理がアメリカ社会及び他の世界の国々のますます多くの部門を支配するようになる過程」であるという。つまり、数量化や画一化、機械化などの合理的な経営原理が、教育や医療などの他分野まで広く浸透していく様態を明らかにしたものである。この議論ではマクドナルド化の進展を、「合理性の非合理性」をもたらすものとして批判的に捉えることが重要視されている。 当初、マクドナルド化論にはあまりデジタル化の要素は含まれていなかったが、次第に時代の変化として取り込まれることになり、Ritzerもデジタル化は「マクドナルド化の激化」をもたらすという意見を述べるようになったそうだ。 Ritzerはその具体例として、AmazonやWalmartなどの大型通販システム、Uberなどのシェアリング・エコノミー、Googleなどの一般プラットフォーム等々、様々な領域でいかに「効率的」に物事が処理され、注文プロセスなどにおいて「予測可能性」や「計算可能性」が高く示され、規範を逸れないように「制御」されているかを語る。 また、Ritzerはリキッド消費/ソリッド消費の概念についても触れており、「消費の場」に着目する彼の研究においては、実店舗=ソリッド、オンライン店舗=リキッドという図式が採用されているものの、オンラインで注文し、実物は実店舗で受け取るというような中間形態が現在では多く見られるという。 Ritzerは、そんな双方の技術が相互浸透して生まれた中間的な形態を「AR」(拡張現実)と表現しているようだ。これは、通常の技術的な意味合いよりも広範な意味として用いられている。Jurgensonは「デジタル二元論」(現実とデジタルを別のものと捉えること)を誤謬として、その相互に影響し合う現在の状況を表す枠組みとして「拡張現実」としたが、正にその用法に倣ったものである。 筆者の意見として、以上の議論は単にECサイトやアプリにマクドナルド化論を適用したというのでなく、デジタル・プラットフォームの重要性に着目している点が評価されるべきであると述べている。 デジタル・プラットフォームとは、インターネットを介してやり取りする企業とユーザーとの相互作用を促進するサービスと解釈できる。検索エンジンやSNSなど、多くの現代人にとっては生活の一部となっているものだ。世界中の業者や個人と、多種多様なものを売買、貸し借り、コミュニケーションが出来るようになり、個々人の趣味嗜好に沿う製品やサービスを得られるようになったのは、正にデジタル・プラットフォームの発展とマッチングの結果だという。 【考察】 「消費プロセスのデジタル化」 本論文で取り上げた、拡張自己論、リキッド消費論、マクドナルド化論は、それぞれ電子化された情報財、それ以外のモノ・サービス、「消費の場」に対するデジタル化の影響にアプローチした議論であると捉え直すことが出来る。 筆者は、以上の議論を消費プロセスの中に位置付け、各段階におけるデジタル化の影響の定式化ができるとしている。(論文内では図式を用いて詳しく説明している。) 「消費文化論への示唆」 この項では、上記の定式化を踏まえて、デジタル化時代の消費文化について今後実証的に研究されるべき点をいくつか提案するとしている。 研究課題は多く、例えば、フェイクニュースの拡散や差別・ヘイトの先鋭化、監視とプライバシーの問題、デジタル詐欺などによる消費者問題の増加などがあるとするが、ここでは消費文化にもたらされる観点から互いに関連する論点を取り上げている。 第1に脱物質化、アクセス・ベース化は人々の所有感覚に大きな変化をもたらす可能性があるという。 第2に、物質主義の盛衰も検討課題となるようだ。どの議論においても、脱物質化は重要な構成要素だったが、それは必ずしも脱物質主義的な価値観の浸透を意味するわけではないということである。物質主義の衰退どころか、助長する可能性すらあると述べる。 第3に、持続可能性、とりわけ環境問題へのインパクトも重要である。単純にデジタル化を進めれば環境問題が低減するという訳でなく、デジタル消費の環境負荷については、データの「再物質化」が容易である点なども考慮しなければならず、複雑な問題とされている。 … 続きを読む

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