書評「Smart City5.0 地方創生を加速する都市OS」

アクセンチュア株式会社にて、行政、公共事業体、民間企業の戦略立案から大規模トランスフォーメーションプロジェクトまで多く携わる海老原 城一氏、中村 彰二朗氏による著書。
前回の書評にて、5G環境の求められているといわれるSmartCity5.0に着目し、その実施例を通して現場に利用され、求められる技術やテクノロジーを探ることによってより詳細を掘り下げることにした。

第1章「地方都市が抱える課題の共通点とSmartCity」では、会津若松市を舞台にスマートシティ化を行う理由と課題を説明する。
地方創生を目的とし、高付加価値産業の仕事を通して地方都市の復活を図る。その土台としてスマートシティ化によって人と仕事の流入を促す。同時に市民の理解を得ることを通じて市民、社会、企業の「三方善し」を目指す。
第2章「SmartCity AIZUの実像」では、スマートシティ化において構成される要素を具体的に「デジタル・コミュニケーション・プラットフォーム(DCP)」と「データプラットフォーム」として紹介する。上位レイヤーのDCPは、市民や観光客、事業者向けの情報ポータルであり、都市機能を「エネルギー」「観光」「教育」「農業」「ものづくり」「金融」「移動手段」の8領域に分類し、パーソナライズして各個人に提供する。下位レイヤーデータプラットフォームは、データを収集・蓄積し、そのデータを活用してイノベーションを生み出すレイヤーであるとする。
第3章「SmartCity5.0が切り拓くデジタルガバメントへの道程」では、スマートシティをはじめとするSociety5.0は、既存組織が既得権益を手放してアンバンドルし、イノベーションによってサービス本位のコラボレーションとリバンドルの実現をめざし、IoTプラットフォーム「都市OS」を開発することによって改革を狙う。
第4章「世界に見るSmartCityの潮流」では、一概にSmartCityといっても世界の地域や時代によって定義は異なることを指摘し、改めてここでいうSmartCityとは、環境改善やエネルギー産業の振興だけでなく、自動運転やロボットなどに代表される産業技術やIoTの進展を背景に、幅広い領域でのスマート化による市民生活の質の向上や、それに伴うイノベーションの創発による経済的な成長と定義している。また、SmartCityの事例として、藤沢、トロント、アムステルダム、ヘルシンキ紹介し、改めて会津若松で目指すSmartCity展望を描く。
第5章「会津若松の創生に賭ける人々」では、対談方式をとって会津若松で行われるスマートシティのプロジェクトの成り立ちについて語る。ものづくり産業からICT関連産業へ移行するために官民共同となりプロジェクトを進行する必要性を説く。また、再生可能エネルギー100%の社会を目指し、市民中心の街づくりを行うことがスマートシティプロジェクトの本質であるとし、話を締めくくる。

本書を読んで、地方創生において重要なポイントとしてその地域で行うことのメリットが示せるかどうかによって大きく結果が変わることが分かった。そして今後の動きとしてICT関連産業を誘い込むためにも、地方こそデジタルトランスフォーメーションを推し進め、デジタルインフラを整えること、すなわち5G環境を整えることによって、企業が地方を選択する理由になりえると感じた。

「Smart City5.0 地方創生を加速する都市OS」海老原 城一・中村 彰二朗(2019)インプレス

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