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カテゴリー別アーカイブ: 新聞要約
大学図書館が担う役割
大学図書館の役割が「静かに本を読む場」から、学びと交流を促す空間へと変化している。国際教養大学は24時間365日開館し、英語の電子書籍約47万冊をそろえる一方で、本を手に取ることで生まれる偶然の出会いを重視している。学生が議論や語学学習を行える多様なスペースも設け、独学と交流を両立できる環境を整備した。東海大学は中央図書館をリニューアルし、対話型学習を促すオープンな空間や自由に使えるラーニングコモンズを新設。両大学の試みは、情報過多の時代において偶然の発見や多様な意見交換を通じた創造的学びの重要性を示している。 2025年10月27日 日本経済新聞
第二章 海外事例
海外のIR事例 シンガポール:政府主導による成功モデル シンガポールは、IR導入に成功した国として世界的に高い評価を受けている。2000年代初頭、政府は観光産業の競争力低下を背景に、経済活性化策の一環として統合型リゾートの導入を決定した。2005年に議会で合法化が承認され、2010年に「Marina Bay Sands」と「Resorts World Sentosa」の二つのIRが開業した。政府が、IRを単なる娯楽施設としてではなく、国際会議や展示会(MICE)を通じたビジネス拠点、文化・観光の発信地として位置づけたことが成功の要因の一つである。また、カジノ依存への懸念を抑えるため、シンガポール国民と永住者に入場料を課す制度を導入し、社会的合意のもとで事業を進めた点も重要である。さらに、施設の約7割を非ゲーミング領域が占め、ホテル、レストラン、ショッピングモール、劇場、美術館などを融合させた総合的な都市観光拠点を形成した。このように、政府の明確な戦略と厳格な規制、そして非カジノ要素への重点的投資が、IRを国家経済に寄与する成功モデルへと導いた。 マカオ:中国特別行政区における世界最大のIR集積地 マカオは、世界最大規模のIRが集積する地域として知られている。1999年の中国返還後、「一国二制度」により高い自治権を維持し、2002年にカジノ運営権を海外資本に開放したことが発展の契機となった。ラスベガス・サンズ社による「The Venetian Macao」や、メルコ社の「City of Dreams」、ギャラクシー社の「Galaxy Macau」など、国際的なIR企業が相次いで進出した。これらの企業は、資金力と運営ノウハウを生かして大規模開発を進め、短期間でマカオを世界有数の観光都市へ押し上げた。成功要因としては、香港や中国本土からのアクセスの良さ、政府によるライセンス制度の柔軟な運用、そして海外資本による競争原理の導入が挙げられる。一方で、カジノ収益への依存度が高く、経済構造の偏りという課題も抱える。近年では非ゲーミング要素の拡充に力を入れ、エンターテインメント施設やショッピングモール、家族向けアトラクションなどを取り入れることで、持続可能な観光都市への転換を目指している。マカオの発展は、民間主導型の市場開放が短期間で大きな経済成果をもたらした典型的事例といえる。 アメリカ:統合型リゾート概念の原点と産業の成熟 アメリカは、統合型リゾート(IR)という概念の発祥地であり、その発展は世界のIR政策の基礎を築いた。ネバダ州ラスベガスでは、20世紀半ばからカジノを中心に宿泊、ショー、レストラン、会議施設を統合した複合型リゾートが誕生した。代表的な施設には「Caesars Palace」や「Bellagio」、「Wynn Las Vegas」などがあり、ギャンブルに加えて高品質なエンターテインメントや芸術的空間を提供することで、観光都市としての地位を確立した。これらの施設群が「統合型リゾート」というビジネスモデルの原型を形成したといえる。 一方で、アメリカ国内にはラスベガス型とは異なる制度的背景を持つ「インディアンカジノ(部族カジノ)」が存在する。これは、先住民族の経済的自立を目的として1998年に成立した「インディアン・ゲーミング規制法(IGRA)」に基づき、連邦政府の承認のもとで運営されるものである。インディアンカジノはネイティブアメリカン居住地域に設置され、州政府の直接的な課税対象外となることが多い。そのため、部族社会の雇用創出や地域経済の活性化に大きく寄与している。一方で、施設間の競争や運営透明性の問題、依存症対策などの社会的課題も指摘されている。 アメリカのIR産業の成功要因としては、こうした多様な制度的枠組みの共存が挙げられる。ラスベガスの自由市場モデルと、部族カジノの自治的運営という二つの形態が共存することで、地域特性に応じたビジネスモデルが形成されている。また、自由競争によるサービス革新、民間企業の資金力、エンターテインメント産業との連携が、世界に先駆けてIRの多角的発展を可能にした。アメリカの事例は、商業的成功と社会的責任の両立を模索してきた先進的モデルとして、各国の政策設計における重要な比較対象となっている。 韓国:文化と観光を融合した規制下でのIR展開 韓国は、厳格なカジノ規制のもとでIRを観光振興政策の一環として発展させてきた。国内では、韓国人が利用できるカジノは江原道の「江原ランド」に限られており、他の17施設はすべて外国人専用である。このような制度のもとで、政府は外国人観光客を主なターゲットとするIRの開発を推進している。代表的な事例が、仁川国際空港近郊の「Paradise City」(2017年開業)であり、カジノに加え、ホテル、コンベンション施設、K-POPライブホール、美術館などを備えた複合文化リゾートとして運営されている。また、済州島に開業した「Jeju Dream Tower」も、リゾート性を活かした観光型IRとして注目されている。韓国の成功要因は、外国人専用制度により国内の反対意見を最小限に抑えつつ、文化・芸能などソフトコンテンツを融合させた点にある。さらに、仁川や済州といった地理的優位性を活かし、東アジアの観光ネットワークの一角を担う戦略が奏功した。韓国の事例は、厳しい規制環境下でも文化的価値を高めることで持続的なIR運営を実現した点に特徴がある。
韓国ホテル業界で進む高級化競争
韓国の大手ホテル・リゾート企業が高級化競争を展開している。新世界グループの「朝鮮ホテル&リゾート」は、ブティックホテル「レスケープホテル」をマリオットの最上位ブランド「ラグジュアリーコレクション」に編入し、海外富裕層を狙う。ハンファホテル&リゾートは新ブランド「アント」を開業し、自然セラピーや瞑想などウェルネス体験を強化。パルナスホテルも2000億ウォンを投じウェスティン・ソウル・パルナスを開業し、デジタル顧客体験モデルを導入した。 2025年 中央日報
外国人投資促進法を巡る攻防―大企業優遇批判の中で成立
与野党は予算案可決の遅延を受け、常設特別検察官と特別監察官制の導入で合意した。焦点の外国人投資促進法は、朴槿恵大統領が雇用創出を訴えたが、民主党はSKグループやGSグループなどの大企業に特恵を与えるものだとして反対。最終的に、孫会社やひ孫会社による共同出資に対し、外国人投資委員会の承認や公取委の事前審議を義務づける改正案で可決された。 2014年 朝鮮日報
書評
川上清一著『図解入門業界研究 最新教育ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本』 本書は、学校教育から民間教育、EdTech(教育×テクノロジー)まで、幅広い教育産業の仕組みと課題を分かりやすく解説した一冊だ。 第1章では、教育産業の現場と最新トピックスについて取り扱っている。教育産業は国や地方公共団体が設置・運営する教育、または公共の目的を持つ公教育とは異なる教育ビジネス関連業種・業界を指す。その業界の最新トピックスをいくつか取り上げている。この本はコロナ禍に出版されたことも相まって、オンライン授業やインターネットを通した授業やサービスに関する話題が多く扱われている。コロナの影響で学習塾の売り上げが減ったなどのネガティブな一面がある一方で、オンラインでの授業を余儀なくされたことでICT教育やインターネット上で気軽に学習ができる環境の整備が進んだというポジティブな一面もあると紹介されている。続いて第2章では、教育サービス業界が産業としてそのように位置付けられているのかを詳しく解説している。日本標準産業分類で、教育は大分類で「教育、学習支援業」に位置付けられておりこの大分類は中分類2、小分類16、細分類は25の項目に分かれている。中分類は「学校教育」と「その他の教育、学習支援業」の2つで、教育サービス業界は主に後者に分類される。「その他の教育、学習支援業」のなかでも代表的なものは学習塾や予備校で、学習塾は通塾者の目的によって補修塾、受験塾、進学塾の3つに分類できる。また、予備校は一般的に大学進学のためのものと位置付けられていたが、近年は成績上昇や維持を目的に高校入学と同時に予備校に入学する学生が増えており予備校も学習塾的な一面を持ち始めた。学習塾や予備校以外にも資格取得学校や専門資格を取るための予備校なども取り上げている。第3章では、第2章での内容を踏まえて学習塾・予備校に焦点を合わせてその中でも市場規模を中心に取り扱っている。ここでは、学校現場のICT化の遅れや、学習塾が地域や個人に合わせて柔軟にサービスを展開してきた歴史が紹介されている。著者は、教育の質を高めるには公教育と民間教育の連携が鍵になると述べており、教育を一元的に捉えない姿勢が共感できる。第4章では、語学・資格・企業研修など「社会人教育ビジネス」の展開が描かれる。グローバル化や働き方改革により、個人のスキルアップを支援するサービスが急拡大しているという分析が興味深い。学び直しや自己投資が社会的に重視される今、教育が「人生100年時代の基盤」として位置づけられていることを実感した。そして、第5章は教育業界の今後の課題と展望についてである。少子高齢化社会でどんどん学生が減っていくことが予測される今、学生だけではなくすでに学習課程を修了している社会人などにも目線を向けていく必要があると述べられている。私は塾講師として指導にあたる中で、生徒一人ひとりに合わせた学習支援の重要性を感じており、また自身の勉強不足も多々感じるためこの章の内容には強く共感した。 ただし、著者も述べているように、教育のビジネス化には課題も多い。利益追求が過剰になれば、教育の公平性や人間的成長といった本質が損なわれかねない。経済的合理性と教育の公共性を両立する仕組みづくりが今後の鍵になると感じた。 本書を通じて、教育は「学びを提供する場」から「学びを支える社会的ネットワーク」へと変化していることを学んだ。教育ビジネスを経営の視点から理解することは、教育の未来を考えるうえで不可欠である。
韓国最大の防衛産業展「ADEX」開幕
韓国最大の防衛産業展示会「ADEX」がソウル近郊で開幕し、AI搭載の最新兵器や無人システムが注目を集めている。35カ国・600社が参加し、ハンファは無人地上車両「Themis-K」や「スマート戦艦」構想を初披露。LIGネクスワンはドローン無力化システムを紹介した。初の宇宙産業エリアも設けられ、韓国政府は宇宙航空庁の発足などを通じて、宇宙・防衛産業の育成と輸出拡大を目指している。 25.10.17 日経
就活AI時代、噓を生むのは学生ではなく構造
就活でAIを使ってエントリーシートを作成する学生が急増している。AIの発達により、学生は容易に「盛った」内容を作成でき、面接官が見抜くのは困難だ。多くの学生は「正直に書くと地味で通らない」と感じ、仕方なく脚色している。専門家は、学生の誠実さを責める前に、企業側が構造化面接やワークサンプルなど、事実に基づいた公正な選考方法を導入すべきだと指摘する。問題は個人ではなく、虚偽を生む採用構造にあるという。 2025.10.20 日経
GXとDXで地方創生へ
石破首相は「令和の日本列島改造」で、DX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)を両立する地方創生を推進する。AI普及による電力需要に対応するため、地方の産業用地に発電施設を併設し、環境に配慮したスマートインフラを整備。デジタル技術を活用して地域の生産性を高め、脱炭素化と経済成長を両立させることを狙う。官主導から民間連携型へ転換し、GX×DXで地方の再活性化を図る方針だ。 2025/02/01 日本経済新聞
AIが電力を「爆食い」
生成AIは、学習や回答に膨大な電力を使う「電力爆食いマシン」だ。米ゴールドマン・サックスによると、世界のデータセンター消費電力は2027年に現在の1.6倍となる見込み。AIの質問処理は検索の約10倍の電力を要し、原発4分の1基分を使う例もある。省エネ半導体や小型原子炉の導入、データセンター分散など、環境と共存するAI運用が急がれている。 2025/06/10 日本経済新聞
第二章
第2章 検討対象の整理 2-1. IRの経済効果研究 IR(統合型リゾート)は、カジノを含む多機能型施設として観光振興・地域経済活性化を狙う政策手段として世界的に注目されてきた。理論的には、IRの導入は地域の需要を拡大し、観光消費・雇用・税収を増やす「地域経済波及効果」を生むとされる。観光経済学では、旅行者の支出が建設業、サービス業、交通業などへ波及し、乗数効果によって地域経済を押し上げることが知られている(日本観光学会, 2020)。 日本政府も、IRを観光立国政策の中核として位置づけてきた。2002年に「観光立国宣言」が行われ、2000年代後半からはインバウンド需要拡大を目的とした施策が進められた。IR導入の議論は、特に2010年代に入りシンガポールの成功例が注目を集めたことで本格化する。政府の成長戦略では、IRを「国際競争力を高めるための拠点」として位置づけ、外国人観光客増加、雇用創出、地域再生といった多面的効果を期待した(内閣府, 2016)。 研究レベルでも、IR導入による経済効果を分析する試みが行われている。例えば、観光収入や雇用への貢献、税収増加といった定量的分析に加え、都市ブランドや国際会議誘致など非金銭的効果も注目されている。経済産業研究所(2018)の試算では、大阪IRの建設・運営による経済波及効果は年間約1兆円に達し、雇用創出効果は約9万人規模とされた。ただし、こうした推計は前提条件に左右されやすく、長期的な収益の安定性や社会的コスト(依存症・治安悪化)を考慮すると、過度な楽観は危険であるという指摘も多い。 2-2. 海外の主要事例 (1)シンガポール シンガポールは、IR政策の「成功例」として世界的に知られている。政府は2004年にカジノ合法化を決定し、2010年に「マリーナベイ・サンズ」と「リゾート・ワールド・セントーサ」の2施設が開業した。開業から数年で観光客数は約2倍の1,300万人を突破し、GDPへの寄与度も顕著だった(Singapore Tourism Board, 2015)。IR関連産業だけで約9万人の雇用を創出し、観光消費を牽引したとされる。 しかし、経済的成功の裏で社会的課題も浮き彫りになった。カジノ依存症の増加を懸念した政府は、シンガポール国民と永住者に対して入場料を課す制度を導入し、1日150シンガポールドル(約1万5千円)の支払いを義務づけた。これにより、地元住民の利用を一定程度抑制し、観光客中心のカジノ利用を促す仕組みを整えた。このような「依存症対策の制度設計」が成功の大きな要因の一つとされ、日本の議論にも影響を与えた。 シンガポールの事例は、「カジノを地域経済の中心に置きながら、社会的リスクを制度的に管理する」モデルとして評価されている。一方で、観光需要の一時的な集中や新型コロナウイルスの影響など、外的要因によるリスクにも直面しており、安定的な成長維持が課題となっている。 (2)ラスベガス ラスベガスは、IRの原型ともいえる都市であり、長年にわたり世界最大級のエンターテインメント産業を築いてきた。20世紀後半には「カジノ都市」として成長したが、1990年代以降は娯楽・ショッピング・コンベンションを融合させた総合観光都市へと転換を遂げた。この「脱カジノ依存」の方向転換こそが、ラスベガス成功の鍵である。 ラスベガス観光局(LVCVA, 2020)によると、現在の観光収入のうちカジノ収益が占める割合は約35%にまで低下し、残りはホテル・ショー・MICE関連事業が主軸となっている。これは、カジノが都市の主役でなく「入り口の一つ」に過ぎないという構造変化を意味する。また、家族連れやビジネス客を取り込むために「非ギャンブル型の娯楽都市」としてのブランドを確立し、観光産業の多角化に成功した。 このモデルは、日本にとっても示唆的である。IRを単なるカジノ施設としてではなく、「観光・文化・地域資源との融合拠点」として構想することが、長期的な成功の鍵となる。ラスベガスの経験は、依存症リスクの軽減と持続的な集客の両立という点で、政策設計に多くの示唆を与えている。 2-3. 日本のギャンブル市場研究 日本には、すでに多様なギャンブル市場が存在している。代表的なものは、公営競技(競馬・競輪・競艇・オートレース)とパチンコ・パチスロ産業である。これらの市場は長い歴史を持ち、地域経済や雇用に一定の貢献をしてきたが、同時に依存症や人口減少に伴う需要縮小といった課題にも直面している。 まず、公営競技の総売上は約6兆円規模(2023年、日本中央競馬会・地方競馬全国協会等の統計による)で、安定したファン層を維持している。公営競技は、売上の一部を自治体財源や社会福祉事業に還元する仕組みを持ち、地域に還元される点が特徴である。近年はオンライン投票やデジタル配信の導入により、コロナ禍でも売上を維持・回復した事例もある。 次に、パチンコ・パチスロ産業は、長らく日本最大の娯楽産業として存在してきた。ピーク時(1990年代)は市場規模が約30兆円を超えていたが、近年では規制強化や利用者減少の影響により、2023年時点で約15兆7,000億円まで縮小している(日本生産性本部, 2023)。遊技人口は約660万人と減少傾向にあるが、依然として雇用規模は約20万人を超え、地域経済に一定の存在感を持つ。また、近年はホールの複合化(飲食・イベント・休憩施設併設)が進み、「地域密着型の小規模IR」としての機能も見られる。 このように、日本のギャンブル市場はすでに巨大な経済圏を形成しており、IRの導入は新市場の創出というより「既存市場との再配置」として捉えるべき側面がある。特に依存症問題については、既存ギャンブルとの関係性を考慮した包括的な対策が求められている。 2-4. 日本のIR政策と現状 日本におけるIR導入の動きは、2016年の「IR推進法」成立によって正式にスタートした。その後、2018年の「IR整備法」で具体的な制度設計が定められ、最大3か所の区域で整備が認められることとなった。国土交通省と内閣府が主導し、地方自治体と事業者が共同で整備計画を提出する「公募・選定方式」が採用された。 最初に本格的な計画を進めたのが大阪府・市である。大阪IR構想は、2025年の大阪・関西万博との連携を軸に掲げており、開業目標は2029年としている。運営事業者にはMGMリゾーツとオリックスが選定され、総事業費は約1.27兆円にのぼる予定である。大阪府の試算では、年間約2,000万人の来場者と1兆円規模の経済波及効果が見込まれており、関西圏の観光拠点としての期待が高まっている。 一方で、横浜や長崎など他地域の計画は住民反対や財政的課題により停滞・撤退が相次いだ。こうした背景には、依存症や治安悪化への懸念に加え、地域がIRの経済効果をどのように享受できるかという「地元利益の不透明さ」もある。さらに、海外資本への依存度が高い点や、国内企業がIR運営ノウハウを十分に持っていない点も課題とされている。 今後の日本型IRは、シンガポールのように社会的リスク管理を徹底しつつ、ラスベガスのような「脱カジノ依存型モデル」へ発展できるかが鍵となる。そのためには、地域の観光資源や既存の娯楽産業との連携を重視した、持続可能なIR運営の在り方が求められている。 まとめ 本章では、IRの経済効果研究、海外の主要事例、日本のギャンブル市場の現状、そして国内IR政策の動向を整理した。これらの検討から明らかになるのは、IRが単なる経済施策ではなく、「既存市場と社会リスクをどう共存させるか」を問う総合政策であるという点である。次章では、これらの知見を踏まえ、日本におけるIRと既存ギャンブル市場の関係性をデータ分析により明らかにし、「日本型IR」としての共存の可能性を探る。