カテゴリー別アーカイブ: 新聞要約

卒論 第一章 カーボンニュートラルについて

カーボンニュートラル(carbon neutral)とは環境に関する用語で、本来は、「植物や植物由来の燃料を燃焼してCO2が発生しても、その植物は成長過程でCO2を吸収しており、ライフサイクル全体でみると大気中のCO2を増加させず、CO2排出量の収支は実質ゼロになる」という考え方である。 ここでのカーボンニュートラルとは、産業活動により排出されるCO2(二酸化炭素)をはじめとする人為的な温室効果ガスの「排出量」を削減する取組みに加え、植林や森林管理などによる「吸収量」を増加させる取組みも併せて、合計を実質的にゼロにすることである。カーボンニュートラルの実現のためには、産業活動による温室効果ガスの排出を減らし、吸収できる自然環境を保全、強化していく必要がある。 2015年に採択された気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定であるパリ協定では、産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑える目標を掲げ、加えて平均気温上昇「1.5度未満」を目指し、また今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成することが世界共通の長期目標として合意された。この実現に向けて、世界が取組を進めており、120以上の国と地域が目標として掲げているのが「2050年カーボンニュートラル」である。 菅義偉総理が2020年10月の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラルの実現」を掲げ、脱炭素政策の目玉として、自動車産業においては電動化を推進し、2030年代半ばにガソリン車の新車販売を廃止するという方法を打ち出している。 世界的にEV化が強固に推し進められ、カーボンニュートラル実現に向けてEVしか認めないという風潮が高まり、日本の企業のようなハイブリッドに力を入れている企業に圧力がかかっている。ハイブリッドでもカーボンニュートラルを実現できるかを考えていく必要があると考える。 次章ではハイブリッド車のカーボンニュートラルの実現性を考える。

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卒論アウトライン

主張 イノベーションとは、新たな技術やアイデアによって新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす事象を指す。今、このイノベーションが日本の産業界で大きく減少している。WIPO(世界知的所有権機関)が2021年に発表した、The Global Innovation Indexに基づいた国別イノベーションランキングでは日本は13位となっている。この現状の原因として大きく挙げられるのは日本の理系人材育成状況であると私は考える。日本では博士号の取得者は1.5万人となっており、アメリカの8.3万人や中国の5.3万人と比べて大きく劣っている。またドイツやイギリス、韓国などと比べても唯一減少傾向にある。その結果、研究者となる学生や専門知識を多く持った起業者がとても少なくなり、イノベーションが少なくなっているのだ。だからこそ、私はこの理系人材が研究者や起業という目標にチャレンジできない日本の土壌を変革するべきであると考えた。具体的には修士、博士課程の学生の援助、理系の研究者の待遇の改善や、リスクを恐れずに起業を行える環境づくりなどが挙げられる。 調査の方向性 日本のイノベーションを生み出す際と、イノベーションと関連付けた理系人材の育成の問題点が何かをまず整理する。その後、アメリカや中国等、今も最前線で走り続ける欧米などの理系人材育成や起業を助ける施策について調査する。最後にその施策と日本の現状を照らし合わせて今日本がイノベーションを多く生み出すためにどのような変革が必要なのかを考察する。

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2023年度夏ゼミ合宿

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卒論アウトライン

①主張 今日、アニメは日本の代表的な成長産業になっており、市場規模は過去10年で2倍以上に拡大している。アニメ映画のヒット連発や動画配信の普及、世界各国でのアニメイベントなどによって今後も益々、アニメの市場は大きくなっていき、業界外の企業からも注目されていくだろう。しかし、市場が大きくなっている一方で、アニメーターの過酷な労働環境や制作スタジオの過密な放送スケジュールと品質の維持などアニメ業界の問題も多く存在する。これらの問題は日本がアニメを制作する際に行う製作委員会方式やテレビアニメ黎明期から変化しなかった低賃金で雇われるアニメーターの慣習が原因となっていると考えられており、アニメ業界が成長していく際の障壁となる可能性がある。このように日本の国民的カルチャーになっており、海外でも注目を集めるアニメの成長を止めないためにも、制作スタジオが自らビジネスを行う体制を取ったり、海外のアニメスタジオを参考に、あらゆる企業が手を組んで大きな総合エンタメ企業を作ったりと業界全体でビジネス構造を新たに変化させることが重要である。②調査の方向性 まずは現在のアニメ市場の規模や現在のアニメビジネスのトレンド、主なビジネスモデルである製作委員会方式について調査し、現状の確認。その後、現在アニメ業界の問題になっているアニメ制作会社やアニメーターの労働環境問題などについて調査を行う。そして、そのアニメ業界の課題を解決しようとする新たな制作会社の動きや海外のアニメスタジオの労働環境を参考に新たなビジネス構造を考察。

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卒論アウトライン

①主張 世界的な脱炭素政策により自動車産業において、ガソリン車を廃止し電気自動車(EV)の導入することこそ、脱炭素=カーボンニュートラル、二酸化炭素削減のために必要であるという論調が強まっている。電気自動車それ自体は環境にいい製品だが、安全性や車の製造過程、電気や電池の製造過程で排出される二酸化炭素に注目すると、実際は環境によいとは言いづらいのが現状である。また電気自動車以外に、ハイブリッド車などの環境に優しい車を導入している企業もあるが、欧州メーカーのEV戦略によるガソリン車やハイブリッド車を締め出し、電気自動車を推進する政策により、そのような企業がギリギリのところに立たされているのも現状である。今後の経営が厳しくなってしまう企業があるのにも関わらず、カーボンニュートラルの実現のために一方的にガソリン車は悪だ、電気自動車が正義であるというようなことを言う者まで出てきてしまっている。EV化のために必要な安全性や制度、インフラが不十分であることや、EV化による自動車産業の衰退の可能性のようなデメリットにも向き合うことで、カーボンニュートラル実現に向けてEV以外の手段を柔軟に考えていくことが重要である。そこでハイブリッド車は段階的なCO2削減にハイブリッドはきわめて有効な現実的手段であり重要であり、ハイブリッド車を活用しつつ段階的にEV化を推し進めるべきである。 ②調査の方向性 まずは大枠を理解するために現在の自動車産業の動向や各国・各社のEV生産台数の傾向について調査を行う。その後世界的なEV推進によって起こりうる二酸化炭素問題、雇用問題、インフラ問題、自動車産業の衰退問題について調査を行う。そして自動車産業が今後、EV一辺倒にならずにどのように脱炭素問題に取り組むべきかについてハイブリッド車の導入や、国ごとの自動車産業の特色を調べていき考察する。

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書評「ジェンダーレスの日本史」

肉体の性別とは違う性認識を持つことが尊重されるようになり、性差の壁が崩れてきたことは先進的に見えるが、実は日本の古典文学には男女の境があいまいな話が数多く存在していたことを本書は紹介している。様々な古典作品を通し「伝統的」「日本古来」と思われてきたことの嘘を解き明かす。 第一章 第一章では江戸時代は女性も立って用を足していたことや、十四世紀の絵の中で僧侶と添い寝する長い髪の人は男性であったこと、日本神話の中で子を産む男性神が登場することなどを紹介している。いずれも男女の境目の曖昧さをあらわしており、性への意識が今より緩かったことがわかる。 第二章 第二章では現代日本と比べると昔の女性の方が権力を持っていたことが紹介されている。古墳の副葬品からは、当時の女首長が祭祀だけでなく男同様に軍事・政治も行っていたことがわかった。男女平等だった古代から平安時代において特に貴族社会では家土地に関する相続権は女子の方が強かったとされる。そこには源氏物語からみる結婚の形態が関係している。貴族社会では男が女の家に通い、新婚家庭の経済は妻方が担っていた。このような結婚形態で女子が婚姻によって実家を離れないために、実家=家土地を女子が相続する機会が当然増えるというわけである。しかし戦国時代になると男の地位が高まり女子は相続から弾き出され、その社会的地位も低下していった。 第三章 第三章では夫婦同姓も三世代が同居する大家族も比較的最近のことであり「伝統的」とは言えないと主張している。 第四章 第四章では前近代の日本の離婚・再婚率の高さに関して、女性がお産で死ぬ確立の高さ、平均寿命の低さによる死別の多さといった理由以外に、離婚や再婚が人生においてデメリットとならない、特に女性側に貞操が求められていないという当時の通念が背景にあると考察している。しかし私は現代でも貞操が求められることの方が稀なのではないかと考えた。 第五章 第五章では前近代ですでにLGBTは認識されていたことが紹介されている。古典文学にはLGBT全てが描かれ、特に男色に関してはそれを罪悪視する人を、神に救いを求めて拝む人や一夫一妻を守る人と同列にあざ笑うほど普通に受け入れられていた。 第六章 第六章では平安時代から「女々しい」という言葉が現代と同じ意味で使われ、女々しい男も雄々しい女もいたと書かれている。少し前の日本では男が泣くことを女々しいという表現で否定的に見られることがあったが、平安時代では泣くべきときに泣くことが貴族のたしなみであり理想の大人とされていた。 第七章 七章では全章までに紹介されてきたジェンダーレスな文化の裏にあるデメリットをあげている。例えば通い婚により女の地位が高まるということは、逆に女には経済力を求められるということであり貧乏な女は結婚できない。 ジェンダーレスや夫婦別姓などは、昔からの伝統を切り離していくための多様性に配慮した最近の取り組みだと思っていたが、昔はむしろ性にとらわれていなかったということがわかった。しかし男らしく女らしくが主流の時代にそれがどのようにして移り変わったのかは、戦争によって男性が地位を高めて行ったところくらいでしか述べられていなかったので今度はそこをもっと知りたいと思った。   中公新書ラクレ ジェンダーレスの日本史 著者 大塚ひかり 2022.11.10 発行

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書評「日本の問題は文系にある なぜ日本からイノベーションが途絶えたのか」

著者である山本尚氏は京都大学卒業後、ハーバード大学院を経て、様々な大学研究室を転々としたのち、現在中部大学のペプチド研究センターのセンター長となっている。ノーベル化学賞の候補者でもある山本氏は本著で日本のイノベーションが途絶えた理由を大学の教育環境と日本の研究体制の二点を大きく挙げて論述している。 第一章 私の破壊的イノベーション 本章は筆者の今までの経歴の紹介と共に、破壊的イノベーションの必要性と研究費の審査の問題について触れている。破壊的イノベーションとは市場が新たに作り替わるような革新のことを指し、今現在は技術革新のスピードが向上したことにより「破壊的イノベーションか、死か」という領域に入っているという。この状況はもう一つの持続的イノベーションが得意であった日本にとっては危機的状況であるという。また破壊的なイノベーションを生み出す研究にお金を投資する嗅覚が今の省庁には無いため、「異質の香り」をかぎ分けられる優秀な科学者が審査側に必要であるとした。 第二章 日本人はもっと感動すればいい 本章では米国の自由な感性を鍛える方法を例示して、それと対象である日本の環境を批判している。また日本に過去会ったイノベーションを例示して、そこからの学びを論述している。米国では教育課程とプレゼンは表裏一体であるという。成長していく中で何度もプレゼンを行っていくことで、各個人の提案がより革新的で多くの人間の同意を得るためにはどうしたらよいかという思考方法が常となる。集団主義的な日本ではこの感性は育たないため、個人主義の考え方が必要であると述べている。また日本人が過去行ってきた海外から入ってきたものをまねてから、自己流に改造していくという漢字や鉄に見られたイノベーションの方法を日本文化と結び付けて我が国固有のものであるとし、この文化を大切にしていくことに勝機があると論じていた。 第三章 問題は文系にある 本章では大学の研究や講義の問題点を軸にイノベーションが生まれない理由を論じている。その一つの例が講座制である。講座制により准教授や助教が専任教授から独立した研究をできていないのだ。博士課程を終えた未来を担う若い研究者に思い通りの創造の道を歩ませる力が、講座制廃止にあるという。また文系の官僚にも問題があるという。文系の官僚がなんとなしに決めている習得単位や学生数などが教官の研究時間を奪いイノベーションを阻んでいるのだ。日本の大学教官が研究に割ける時間は20%以下で、米国の50%以上とは格段の差がある。大学発のイノベーションを目指すためには教育義務や事務書類にメスを入れる必要があるのだ。さらに文系の起こすイノベーションについても触れられていた。イノベーションというと技術革新が主だと思われがちだが、新たな考え方から大きな価値を生み出す社会変化もイノベーションといえると筆者は言う。しかしこの文系のイノベーションは日本ではほとんど見られない。その理由は日本の文系の学生の意欲の少なさだ。理系の学生に比べ、文系の学生は本を読まず、また読むことはあっても研究のために膨大な本を読むことは限られると筆者は述べていた。この問題の解決のためには「哲学」が必要だという。先人の考え方を知ることで、新たな考え方の切り口を作り上げることができる。この考え方の転換こそイノベーションの思考法なのだ。 第四章「学術会議」はいらない 本章では一時イノベーションの話題から少し離れ、一時話題になった菅政権の学術会議問題に関して言及している。日本の学術会議は税金で運営しているもので日本の政治の影響を大きく受けてしまう。しかし米国の学術会議に当たる全米アカデミーズでは、各々が出資をして参加している。この政府から独立した組織は、日本と違い大きな力を持つ。一つの提言に日本とは異なる緊張感が生まれるのである。この緊張感の有無こそが科学技術政策の決定に大きな影響を与えるのだ。だからこそ、日本には学術会議は必要なく、政府から独立した新たな科学者による組織が必要なのだ。 第五章 イノベーションは感動である 本章ではイノベーションを起こした人物のエピソードと筆者が思う創発に必要な要素の紹介となっている。筆者はノーベル賞を受賞した人物や印象に残った人物を列挙したのち、その人たちは何かしらの唯一無二性と破天荒さがあるとした。また筆者は創発に必要な要素としてボーっとすることを挙げた。問題に対して集中することは良いことだが、脳の一部を使っていないため、画一的な考えになりがちである。そこでボーっとすることにより、脳全体を使う非集中状態になり、脳を本当に活用できるようになる。この状態になった時こそ素晴らしいアイデアが生まれやすいのだ。だからこそ創発にはあえてボーっとすることが必要なのだ。 第六章 日本はやはり集団主義がいい 本章では破壊的イノベーションを起こすのは個人主義だと前提を置いたうえで、日本が持つ集団主義の良さと米国に干渉されて集団主義を捨てようとしたことの弊害について述べられている。集団主義はプロジェクトを進めていく能力に長けているという。それは一致団結して成果を出そうとするからだ。故に筆者は集団主義の中に少しの個人主義がハイブリットされているのがイノベーションに最も適しているとした。一個人の際立った研究者を中心として、様々な集団が力強く成果を育てる。つまり発想は個人主義、完成は集団主義という役割分担こそが重要であり、日本という土壌はその役割分担が適しているのである。 第七章 日本型イノベーションのために 本章では集団主義の欠陥についてイノベーションに交えて述べられている。具体的には、「リスク・フリー」社会と突出した個人の排斥の二つだ。「リスク・フリー」社会とは危険を予測し、注意深く避けようとする社会のことを指す。この性質のおかげで安全に過ごせているのは事実であるが、リスクも大きい。それは企業や政府の思い切った施策の有無である。思い切った行動ができない集団は、すべての行動が手遅れになることが常である。我々はリターンを得るために、リスクを取ることにためらいがあってはいけないのだ。また集団主義では、非がある個人への攻撃はとても厳しく重い。それは「道理」という概念が存在するからだ。この見えない「道理」に縛られ、個人主義の人が自分の意見を言えずに窮屈そうにしている状況は現在の日本でよく散見される。しかし個人主義の破天荒なアイデアが無ければ破壊的イノベーションは生まれない。だからこそ現在の日本では個人主義と集団主義が共存できるような制度作りが必要であるし、日本の若い研究者は現状の制度にとらわれず自由な発想で、イノベーションの実現を目指すべきである。   前回の書評の際に先生が理系の学生や教授の待遇についておっしゃっていったので、その問題とイノベーションを掛け合わせた本の書評を行った。前回の書評では文系の学生や研究者が「共鳴」できる場所が必要であると論じていたが、本著では極端に言うと文系、特に政府の文官は理系の研究の邪魔をするなという内容だった。ここまで大きな差があることに驚きはあったが、私的にはこっちの意見の方が理系の学生が研究できる環境の整備に注力されることを考えるとよいものだと思う。今回の書評では理系人材の育成的な視点からイノベーションを見ることができたので、次回は文系のイノベーションについても注目していきたいと思う。 産経新聞出版 日本の問題は文系にある なぜ日本からイノベーションが消えたのか 著者 山本尚 2022年2月23日 初版発行

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書評『アメリカ合衆国における再生可能エネルギーの普及促進に関する近時の動向と法的課題(2)』

本論文は小林寛がアメリカ合衆国の再生可能エネルギー事業の動向と法的課題を考察し、日本への示唆を行っている。第1章から第5章までそれぞれ太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス・バイオ燃料について述べているが、地熱のみをピックアップして書評を書く。 第4章 第1節 アメリカ合衆国 1 近時の動向 ここではアメリカの地熱に対する動向が記述されている。 アメリカは地熱賦存量が世界1位であり、地熱発電設備容量においても世界最大とされている。1978年の公益事業規制法により設備容量は大幅に増加したが、1990年台の電力自由化により地熱発電の建設は鈍化した。しかし、2009年のオバマ政権時にアメリカ再生・再投資法により税額控除や148の地熱発電事業に投資したとされている。トランプ政権に交代後、エネルギー省の2018年度会計年度予算要求によると、地熱は7100万ドルから1250万ドルへと減額されたが地熱開発に係る連邦政府による支援は依然として存在している。 2 法規制の概要 ここではアメリカの法規制、特に地熱資源の所有権が誰に帰属するのかが記述されている。 地熱資源は連邦政府に規則する場合、私人に帰属する場合、州に帰属する場合の3つがある。地熱蒸気法は、連邦政府に帰属する地熱資源を鉱物として管理し、リースプログラムを通じて私人による開発が許されている。また、地表における権利が私人に譲渡された場合でも、鉱物に対する留保により地熱資源はアメリカに帰属する。さらに土地の所有権が私人に帰属している場合でも地熱開発の際には一定の規制がかかる。 地熱開発における経済的支援策は税額控除、交付税、エネルギー省による債務保証などがあるが、最も地熱開発を後押ししたのはオバマ政権時に成立したアメリカ再生・再投資法だ。現政権下(トランプ政権)では同胞に匹敵する経済的支援策は望めないが、低炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの普及促進に向けた支援策の策定・実行が期待されている。 3 課題 ここでは地熱開発の際の課題について3つ記述されている。 1つ目は環境汚染の懸念だ。環境上の課題として「大気質」、「水質」、「水資源の枯渇」、「生物の生息地や文化資源の衝突」の問題が挙げられる。地熱流体には少量のメタンや硫化水素。アンモニアが含まれているため大気環境に悪影響を与えうるとされているが、大気浄化法によって具体的な数値を出して規制されている。また水質汚濁についても一定基準のもとで規制されている。 2つ目は歴史的文化資源との関係だ。地熱発電所の敷地が温泉と関係しており、「しばしば歴史的文化資源であったり貴重な生物種の生息地であり、その様な式地上での問題は共存できない」との指摘がある。アメリカでは日本と異なり自然公園法や温泉権の問題よりも、国家歴史保存法などの連邦法及び先住民族に対する忠実義務との関係が大きい。 3つ目は手続面だ。地熱発電に係るリースは競売の手続を経て発行されているが、「競売の手続は、地熱資源について集中的に行う開発者のインセンティブを大幅に弱化させてしまう」という問題点が指摘されている。さらに土地管理局だけでなく、農務省林野部、野生生物部、国家海洋大気管理局および国立公園局といった多くの機関が関与している。1つの事柄について様々な機関が手続に関与することによりリースに係る手続が遅滞してしまうことも考えられる。 第2節 日本 1 近時の動向 ここでは日本の地熱発電の現状が書かれている。 日本の地熱資源量は、アメリカ。インドネシアに次いで世界第3位とされているが資源量に対する利用率は約2%の53万kWにすぎない。また、2012年に施行された電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法に基づく固定買取制度のもとでも、導入量は認定容量の7.9万kWに対し1万kWと著しく少ない。 2 法規制 ここでは地熱発電事業に適用される法律のうち、日本特有の自然公園方と温泉法について記述してある。 (1)自然公園法 自然公園法は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする。同法により、国立・国定公園内における地熱発電事業は規制を受ける。しかし、東日本大震災の発生後、再生可能エネルギーの利用を促進するために、2012年通知により開発規制は緩和されることになった。さらに2015年通知が発出され2012年通知は廃止された。2012年通知においては、特別保護地区と第1種特別地区においても傾斜掘削が認められていなかったが、2015年通知においては第1種特別地区において一部、傾斜掘削が認められることになった。 (2)温泉法 温泉法によると、温泉をゆう出させる目的で土地を掘削しようとする者は、都道府県知事の許可を得なければならないとされている。地熱開発を行う際の掘削も「温泉」を「ゆう出させる目的」であれば都道府県知事の許可が必要になる。2012年3月に定められた環境省の「温泉資源の保護に関するガイドライン」は2014年に改正され許可が不要な掘削の類型化がなされた。これは例示的に列挙されたものであり、個別具体的な事情に基づいて判断することが必要だ。 3 課題 ここでは日本の温泉権についての課題が詳しく記述されている。 一般的な課題は「掘削成功率が低く、開発コストが高い」、「リードタイムが長い」、環境アセスメントや地元調整などに時間がかかる」などがあげられ、これはアメリカに共通するところがある。日本特有の課題は「国立公園問題、温泉問題」が挙げられる。 いかなる場合に、地熱開発が温泉権の侵害となるかだ。福岡高判昭和27年10月25日は、いかなる場合に権利の濫用として掘削行為の差止めを求めることができるのか、その判断基準は必ずしも明らかにしていない。しかし、湯口における湯の直接採取・管理に支障が生じるのは、温泉の湯量の減少または温度もしくは成分への影響によってである。つまり、地熱開発を行うにあたり、源泉や湯だまりに向けた掘削によって、客観的に温泉の油量、温度または成分に看過できない影響を与えたことにより、湯口における湯の採取、管理または利用に支障をきたすと認められる場合には、温泉権の侵害と評価するものと考えられる。そこで温泉権の侵害にならないためには、都道府県知事の許可に加え、適切な地盤調査、湯口から一定の距離を空ける、温泉の採取量に一定の限定を設けることなどが必要になる。 アメリカと日本の現状、課題が比較できたと思う。日米で似ているところもあれば違うところもあったので、良いところはどの様に取り入れるのか、悪いところはどの様にしたらその様にならないのかを考えることが必要だと感じた。 紀要論文 アメリカ合衆国における再生可能エネルギーの普及促進に関する近時の動向と法的課題(2) 2018年11月9日 公開 著者 小林寛

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書評 EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘

本書は元内閣官房参与の加藤康子が、自動車経済評論家の池田直渡とモータージャーナリストの岡崎五郎との鼎談を元に、言い足りなかった点をそれぞれが加筆して完成したものである。 第一章 ガソリン車からEVへのシフトに乗り遅れてはならないの嘘 一章ではEV化が日本に与える影響についてまとめられている。菅義偉総理が2020年10月の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラルの実現」を掲げ、脱炭素政策の目玉として、自動車産業においては電動化を推進し、2030年代半ばにガソリン車の新車販売を廃止するという方法を打ち出している。そのような動きに対して自工会の豊田章男会長は、 国内の乗用車400万台を全てEV化した場合、原発がプラス10基必要になることや、充電インフラの投資コストが約14兆円から37兆円必要になることや、電池の供給能力が今の30倍以上必要になることを説明している。次世代に向けてe-fuelという合成燃料も使用するべきとしている。e-fuelとは水素を中心にして二酸化炭素と化合させるなど様々な技術で作られる科学的で脱炭素な新世代の合成燃料の一種である。またさまざまな燃料と混ぜて使えるため、技術の進展と新しい燃料のコストダウンに応じて既存の産業と折り合いをつけながら、かつCO2の削減に向かって進んでいける優れものである。脱炭素をするにおいてEVに注力するのではなく、他の選択肢を作ることで柔軟に対応するべきだと主張している。 第二章 EVは環境に優しいの嘘 二章ではEV化したときの問題についてまとめられている。EV化したときの一番の問題点はEVに使われるリチウムイオンバッテリーに様々な課題があるところだと述べている。その一つとして品質に課題があるとしている。リチウムイオン電池は燃えると消化の方法がないため消え終わるまで待つしかなく、品質が低いと発火事故の危険性が懸念される。実際バッテリーが原因でリコールが起きているといい、2021年に現代の「KONA Electric」が15件の出火事故が発生したことを受け、950億円の費用をかけて約8万2000台をリコールするに至った。また原材料が足りないことも課題である。リチウムイオン電池の原材料には、主にコバルト、ニッケル、リチウムが使われているが、コバルトはあと20~30年で枯渇するといわれているため、数年後全車EV化をしたときには、コバルトなどの原材料は枯渇してなくなっている状態になると述べている。 第三章 EV推進は株価のため? 三章ではEV推進によって得をする人について取り上げている。ESG金融商品を販売する金融関係者、ファンドマネージャーや投資家などはこのEV化に旗を振ることによって得をすると説明している。 第四章 中国EV最新事情 「中国製造2025」を読み解く 四章では「中国製造2025」についてまとめられている。中国製造2025とは2015年に中華民族の復興のために発表された国家戦略、製造強国戦略であり、2025年までに製造強国入り、建国100周年(2045年)までに製造強国のトップグループ入りを果たすためのロードマップである。中国製造2025の中の国家戦略10項目では、次世代情報技術(5G、半導体)や省エネ・新エネ自動車、新素材といった自動車産業に密接に関わってくる分野が入っている。そのため中国の自動車販売の影には、中国共産党の惜しみない支援があり、中国自動車メーカーのNIO(ニオ)、BYD(ビーワイディー)、SGSM(上汽通用五菱汽車)は大きな勢いで成長している。そして低価格の超小型EVというジャンルを他国に先駆けて中国が確立しつつあると説明している。 第五章 テスラの何が凄くて何が駄目なのか? 五章ではテスラに焦点をあてている。テスラはEVマーケットを牽引してきた。2008年に発売された最初の車である「テスラロードスター」というスポーツカーは、英ロースターからシャシーの技術供与を受け、そこにバッテリーとモーターを組み込むという、改造車の域を脱しないモデルであった。また「ノートパソコン用のバッテリーを大量に積んでスポーティーに走るEVに仕立てる」というコンセプトであり、EV時代を切り開いた。「EVが次の時代のクルマだ」という印象を作りあげてきたところがテスラのすごさであると説明している。一方でテスラのダメなところとして、日本の主要な急速充電器は「CHAdeMO(チャデモ)」という日本を中心とした規格であるが、テスラの規格とは異なり変換アダプタが必要になるところであると説明している。 第六章 欧州が仕掛けるゲームチェンジの罠 六章では、EVに関するEUの動きを取り上げている。欧州が仕掛けるゲームチェンジとして以下の二つを挙げている。一つ目はガソリン車あるいはハイブリッド車からEVへのシフトである。二つ目は「LCA」という新しい概念の持ち出しである。いままでのEUのCO2規制戦略はCAFEという燃料製造&車両製造時のCO2排出は無視し、クルマが走行時にどれだけCO2を排出するかで評価する手法を取っていた。しかしながらLCAは異なり、「製品のライフサイクル全体を通してCO2をどのぐらい出すか」という評価手法である。これによってEUのメーカーは、CO2の排出量が少ない北欧やフランスでバッテリーを作って、ドイツの工場でEVに積むという作戦を取ることで、トータルの排出量を少なくすることができる。結果として「ドイツのEVは優秀だ」という絵柄を作ることができ、化石燃料を主としてバッテリーを製造している日本、中国、韓国に対抗することができると述べている。EUだけが勝つ仕組みが作られていると説明している。 第七章 トヨタという企業の真実 七章ではトヨタについてまとめられている。トヨタは2020年度に国内約300万台、海外約500万台、トヨタグループでは合計952万台生産しており世界販売台数一位の自動車企業であり、また世界企業番付のトップテンにいる企業でもある。現在トヨタは電気自動車を複数開発している。軽より小さな新規格のクルマ「C+pod」(シーポッド)や、スズキ、ダイハツとの軽EVの共同開発、スバルとのEV共同開発「UX300e」などがある。またウーブン・シティ構造というものを立てている。ウーブン・シティとはトヨタが開発する近未来スマート都市である。そして無人の自動運転のEVによって荷物を搬送するシステムがあらかじめ町に組み込まれていたり、地下道では完全無人運転が走ることができたりなど、街全体がクリーンで全自動化する実験的な街作りを目指していると説明している。 第八章 パリ協定の嘘 実現不可能なCO2削減目標を掲げるのはなぜか? 八章ではパリ協定について取り上げている。パリ協定とは2015に採択された気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定のことであり、産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑える目標を掲げ、加えて平均気温上昇「1.5度未満」を目指すものである。このパリ協定に対して、2017年に日本では経産省が試算した結果「2050年までには温室効果ガスを2013年に対して80%削減する必要がある」という結論に至り、この水準においては農林水産と、2、3の産業しか国内で許容されないことになり、到底達成できないものであると主張している。にもかかわらずメディアなどが「脱炭素」の反対意見を一切掲載せず、「SDGS」や「持続可能社会」など実態が何かわからないまま、どういうインパクトが国民経済、暮らし、雇用に起こりえるのかを国民が理解しないまま、ムードで話が進んでいってしまっていると筆者は批判している。 第九章 日本にEV成長戦略はあるのか 九章では今後の日本のEV成長について取り上げている。自動車産業は、国民にとって日本の経済を支える一番重要な産業であり、基幹産業である。そのため自動車産業が駄目になると日本経済は途上国並みになってしまうと述べている。今後ガソリン車を廃止し、オールEV化するというのは、生産設備・資源・インフラ・電源の面でも時間がかかるとし、その間をつなぐためのもの、補完するものとして、ハイブリッドの重要性は高いものであると説明している。そして段階的なCO2削減にハイブリッドはきわめて有効な現実的手段であるとしており、ハイブリッドこそがEVが成長していくための下支えをする重要な戦略であると主張している。 本書を通して脱炭素の中のEV化の現状や問題点などを深く知ることができた。筆者によって見方が異なってくると思うので、別の人の本を読んでEVについて多角的に見ることができるようにし、卒論を書くためにさらに理解を深めていきたいと思う。   ワニブックス EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘 2021年11月10日発行

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初の非正規春闘

労働組合がない会社のパートやアルバイトが個人加盟型の労働組合(ユニオン)に入って賃上げを求める「非正規春闘」が靴小売り大手ABCマートで初めて行われた。物価高の中時給が下がることに対し、総合サポートユニオンの提案で時給を10%上げる団体交渉が3回行われたが、6%の賃上げにとどまった。交渉した女性は「業績を考えれば不可能ではないのに、いくら売っても給料で認めてくれない。」と話す。またユニオン幹部は最低賃金の引き上げがないと全体の賃上げは進まないのが実態だとし、非正規春闘に参加するユニオンや労働者を増やし、来年以降も賃上げを求めていくという。 23/07/17 朝日新聞 21ページ

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