経営学の視点から教育経営を考える。経営学は、一般経営学と特殊経営学の2つに分類される。環境への働きかけである戦略は環境の変化に対応して自らを変化させる「環境対応戦略」と、進んで環境に働きかけていく「環境提案戦略」の2種類があり、教育経営における環境対応戦略は顕在化しているニーズへの対応や問題解決を重視した戦略で、環境提案戦略は潜在的なニーズや問題を先取りする戦略だ。学校経営における戦略とは、各学校のミッションを前提に学校の中期的な将来像を描き、その達成に向けた各種教育活動の選択と集中、各種経営資源のあり方となる。経営戦略を実現させるためには、組織や人材を連動させなければならず、これらのあり方を中期的に検討したものが経営ビジョンには含まれる。教育経営を一般経営学の枠組みで見た場合、さらに研究が必要な領域がいくつかあるだろう。第一は、戦略論であり、一般経営学に比べて環境と適応戦略の類型や策定プロセス、また事業の選択と集中の理論化などが課題だ。第2に、組織面では戦略に応じた状況対応型の組織構造の検討が求められる。第3に、人材に関してその管理や育成をする上での教職員の人間モデルが変わりつつある。これらの検討は、教育経営や学校経営の特殊解につながるだろう。
『一般経営学と教育経営 ー企業経営からみた教育経営・学校経営の課題ー』浅野良一,2008