卒論 2章

第2章 海外における行政DXの成功事例

2-1 韓国における行政DXの取り組み

韓国は、行政サービスのデジタル化を長期的に進めてきた国の一つである。行政手続きのオンライン化に加え、国民が行政サービスを利用しやすくするための取り組みが進められている。韓国では長年にわたる政策的な取り組みやデジタル分野への投資を背景に、行政のデジタル化が進展してきた。

具体的な事例として、住民登録証のデジタル化が挙げられる。韓国では、2025年3月からモバイル住民登録証を全国で取得できるようになった。この証明書は、従来のプラスチック製の住民登録証と同じ法的効力を持ち、行政機関だけでなく、金融機関や医療機関などでも利用できる。スマートフォンを通じて本人確認ができるため、物理的なカードを持ち歩く必要性を減らし、身分証明に関する利便性を高める仕組みとなっている。

さらに、韓国では行政サービスをまとめて利用できる仕組みの整備も進められている。例えば、政府のオンラインポータルである「GOV24」では、さまざまな行政サービスへのアクセスや申請などを一元的に行えるようにしている。こうした取り組みは、国民が手続きごとに異なる窓口を訪問したり、複数のウェブサイトを利用したりする負担を軽減することにつながる。

韓国の行政DXの特徴は、個々の行政手続きをデジタル化するだけでなく、政府全体でサービスを連携させようとしている点にある。OECDは、韓国の行政DXを支える要因として、政府による継続的な政策推進、中央政府による調整、行政機関間の連携などを挙げている。一方で、個人情報を含むデータの共有には法的な制約もあり、データの有効活用とプライバシー保護を両立させることが課題となっている。

2-2 エストニアにおける行政DXの取り組み

エストニアは、電子政府の先進事例として知られている。同国では、行政サービスの効率化を目指し、デジタル技術を活用した行政の仕組みが整備されてきた。エストニアの電子政府は、1990年代以降の情報政策を基盤として発展し、電子IDや行政機関間のデータ連携を支える仕組みが重要な役割を果たしている。

エストニアの特徴の一つは、電子IDを活用した本人確認の仕組みである。電子IDは、インターネット上で本人であることを証明するために利用され、行政サービスへのログインや電子署名などに活用されている。そのため、国民は行政機関の窓口に直接出向かなくても、オンライン上でさまざまな手続きを進めることができる。

もう一つの重要な仕組みが、行政機関などの情報システムを接続する「X-Road」である。一般的に、行政機関がそれぞれ独立した情報システムを運用している場合、機関同士で情報を共有することが難しくなり、国民が同じ情報を何度も提出しなければならないことがある。これに対してX-Roadは、各機関が保有するデータを必要に応じて安全にやり取りできるようにする仕組みである。

エストニアでは、情報を一つの場所に集約するのではなく、各機関がデータを管理したまま連携する方式が採用されている。また、行政機関がすでに保有している情報を、国民に繰り返し提出させないという考え方も重視されている。この仕組みによって、行政機関間の情報共有を進めながら、国民や企業の手続きにかかる負担を軽減することが目指されている。

エストニアの行政DXは、個別の手続きをオンライン化するだけではなく、電子IDとデータ連携基盤を組み合わせることで、行政サービス全体を利用しやすくしている点に特徴がある。行政機関ごとにシステムが異なっていても、それらを接続する仕組みを整えることで、政府全体として一体的なサービスを提供できるようにしているのである。

2-2 韓国とエストニアの事例から見る行政DXの特徴

韓国とエストニアは、いずれも行政サービスのデジタル化を進めてきた国であるが、その取り組みには共通点が見られる。

第一に、行政サービスの利便性向上を目指し、国民がオンラインで手続きを行える環境を整備している点である。韓国では、モバイル住民登録証や行政サービスをまとめて利用できるポータル、エストニアでは、電子IDや電子署名を活用し、行政手続きをオンラインで完結できる環境を整えている。

第二に、個別のサービスのデジタル化にとどまらず、行政機関全体で情報やサービスを連携させている点である。韓国では、政府による調整のもとで行政サービスの統合が進められている。エストニアでは、X-Roadによって異なる行政機関の情報システムを接続し、共有する仕組みが構築されている。

第三に、国全体で継続的に行政DXを推進している点である。両国の事例からは、デジタル技術を導入するだけでなく、行政制度や組織の仕組みを整備し、継続的に改善していくことの重要性がうかがえる。

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