卒論 第三章

第三章 アニメクリエイターの労働環境

製作委員会方式によりアニメが作りやすくなり、アニメ業界は一層発展し続けている一方で、「アニメクリエイターの労働環境の過酷さ」について問題視されている。この章ではアニメクリエイターの現在の労働環境、労働環境が過酷な理由について説明していく。

一般社団法人日本アニメーター・演出協会(JaniCA)が2019年に発表した「アニメーション制作者実態調査報告書2019」によると、アニメ制作職給与平均が440万円であり、民間平均給与平均の432万を超えた。一見するとアニメ制作職は給与が高いと思われるが、職種別にみるとランキング下位の動画や第二原画は平均年収が130万円程度と非常に低い給与水準となっている。さらにアニメーターの中でも格差が生れており、腕のあるアニメーターには制作会社が出来高とは別に一定額を上乗せして確保する拘束料という上乗せ金額が月20~30万円支払われ、ベテランや中堅のアニメーターは給与が上がっている一方、動画や第二原画を担当する若手アニメーターには拘束料は支払われないため、若手アニメーターは現在も生活が厳しい状態である。
また、働く時間に関してだが、1日あたりの平均作業時間は9.66時間、1カ月あたりの平均作業時間は230時間、1カ月当たりの平均休日は5.4日であり、アニメ制作職の忙しさが伺える。
このようなデータに加え、仕事上の問題についてのアンケートでは「仕事のスケジュールの調整が難しい」、「時間的な余裕がない中での仕事を強いられる」、「報酬その他についての交渉力が低い」という問題が上位に挙がっていたり、安心して仕事に取り組むために必要なことについてのアンケートでは「報酬額が増えること」、「より質の高い仕事をするために適切な時間やスケジュールが管理されること」が上位に挙がっていたりすることから現在のアニメクリエイターの労働環境は報酬の面とスケジュールの面が過酷な環境となってしまっている。

ここまでアニメクリエイターの過酷な労働環境について紹介してきたが、次にこのような環境に至った経緯について説明する。

昭和38年、日本の国産連続TVアニメ第1号となる手塚治虫原作の『鉄腕アトム』が手塚が創立した虫プロダクションという制作会社で製作され、1963年1月1日からフジテレビ系列で25分放映された。その際の制作費は155万円程で当時の子供向けの実写番組の制作費を参考に設定したようだ。しかし、アニメは実写の何倍も手間がかかるため、その価格での製作は厳しい。実際、同時期に東映動画(現・東映アニメーション)は長編アニメ『わんぱく王子の大蛇退治』を製作しており、85分で製作費は7000万円だった。1分あたり82万円であるため、実際に必要であった制作費は『鉄腕アトム』は82万✕25分で、2050万円であった。その後、1963年秋からTCJ(現・エイケン)の『鉄人28号』『エイトマン』、東映動画の『狼少年ケン』が放映されたが、この2社も虫プロダクション同様、非常に安い価格で制作を受注したり、低予算で制作を押し付けられたりし、アニメ制作費が極端に少ないという状態になった。
そして、今日、業界では新作アニメが年間を通じて休みなく放送され、昔に比べ、作品本数も格段に増えていっている。一見、アニメ産業が成長していることを示しているように思えるが、実際はクリエイターにかなりの負担が生じており、業界全体の人手不足という問題とも合わさり、非常に過密なスケジュールになってしまっている。さらに、年々、要求されるアニメのクオリティも高くなっており、益々制作現場はスケジュールコントロールが難しくなっている。そこに製作委員会方式による厳しい納品日設定によってクリエイターの余裕はほとんどなくなってしまっている状況である。スクリーンショット 2023-11-19 233629スクリーンショット 2023-11-19 232914スクリーンショット 2023-11-19 232958スクリーンショット 2023-11-19 233036スクリーンショット 2023-11-19 233125※引用

http://www.janica.jp/survey/survey2019Report.pdf

https://animedetabetai.com/anime-creator-fact-finding-report-2019-02/

 

カテゴリー: 新聞要約   パーマリンク

コメントを残す