卒論 第一章

第一章 「アニメ業界の構造とお金の流れ」
この章では、アニメはどのように作られているのかアニメ業界のビジネスモデルやアニメ製作の全体像を確認していく。

その前に今後、何度も出てくるアニメーションビジネスにおいての「製作」と「制作」の違いについて説明する。製作と制作では仕事の領域が違い、アニメを「商品」として見る立場であり、作品の企画から資金集め、制作の手配、資金回収を行うのが「製作」、アニメを「作品」として見る立場であり、作品を直接作る実作業を行うのが「制作」である。また、作品の権利を取得できるのが「製作」であり、権利の運用を行う製作委員会がこれに値する。このように「製作」とはアニメを作らせること+作品の責任を取ることであり、「制作」はアニメを実際に作ることである。

前提である「製作」と「制作」の違いを確認したところで、本題であるアニメ業界の構造について説明する。
日本のテレビアニメは現在、製作委員会方式というビジネスモデルが主流であるが、この方式が主流になる以前は「広告収入方式」が一般的であった。
広告収入方式とは一般のバラエティ番組などと同じ番組製作の方式であり、スポンサーが広告代理店を通じてテレビ局にお金を払い、テレビ局がアニメ制作会社に制作費を支払う形の製作方法である。広告代理店は取引手数料、テレビ局は電波料を取り、残ったスポンサー料がアニメの制作費となる。そして制作会社にはアニメの制作費に加えて著作権を有することができるため、ライセンスを基に二次利用を行うことができる。この方式は「みんながアニメを観ていた時代」である1990年代に成立しやすかったモデルであり、代表例として「ONE PIECE」や「ドラえもん」などがある。

次に現在、主流となっている「製作委員会方式」について説明する。
製作委員会方式では、パッケージ会社やグッズ会社、テレビ局などの複数の会社がお金を出し合って製作委員会という組合を組成し、その委員会が制作会社に対して作品の発注を行う形の製作方法である。
製作委員会方式は簡単に説明すると以下のような仕組みである。
①製作委員会を組成し、幹事会社はメンバーから出資を集める。②製作委員会は、テレビ局に対して番組提供料(テレビ放映を行う時間帯の枠代)を支払う。③製作委員会は、制作会社に作品づくりを委託し、制作費を支払う。④制作会社は作品を制作する。⑤製作委員会は著作権を有するとともに、各メンバー企業がそれぞれの分野で役割(窓口権という)を有し、それぞれのビジネスを行う。
現在のテレビアニメは1クール3億前後かかるのが普通であり、おおよそ3億程度の費用がかかる。主なコストは「制作費」と「提供料」、「宣伝費」だ。
「制作費」は1話1500万円前後なので12話合計で1億8000万前後アニメスタジオに支払われる。アニメ制作会社には「元請け」と「下請け」があり、製作委員会から直接発注を受ける「元請け」は1話まるごとや一部パートを美術やCGの「下請け」に1話あたり600万円で受注する。
そして、出来上がったアニメを放映してもらうためにかかる費用が「提供料」だ。キー局であれば、深夜の枠でどんなに安くても1クール3000万以上で高額である。しかし、提供費用の対価としてCMが放送することができるため、製作委員会に参加している会社の商品のPRを行うことができる。
最後に、その放映するアニメを多くの人に見てもらうために必要なのが「宣伝費」であり、現在の30分の深夜アニメでは約1000万円~約2000万円かけている。
次に収入の面を説明する。製作委員会の出資各社はそれぞれ違うビジネスを行う会社が集まっているため、出資した会社が共同で作品の著作権を持ち、パッケージ会社であればDVD、グッズ会社であればグッズなど、それぞれが得意とするビジネスの利用窓口権(独占的な制作、販売権)を取得し、それを使いビジネスを行い、その売上から委員会に手数料を戻す。例えば、5社で2000万円ずつ出資し、1億円の委員会を作ったものとする。その中でパッケージ会社のA社は2000円のDVDを1万本売り、2000万円の売り上げを得た。売上のうち 45~50%は問屋と小売り店舗、20%は委員会手数料として控除されるため、2000万円の売上は問屋と小売り店舗の1000万円、委員会手数料の400万円を引いた600万円が窓口の収益になる。加えて、400万円の委員会手数料は出資比率に応じて5社で割られるため、1社あたり80万円分配されるため、最終的にA社は680万円の収益となる。それ以外にもA社以外の会社の手数料の分配もプラスされる。ちなみに委員会手数料は出資比率で割る前に原作者印税や放送印税など作品ごと、委員会ごとに様々な印税が引かれていく場合がある。

アニメ映画の収益モデルについても紹介する。
劇場版のアニメはアニメの時間が変わることを除くと、製作フローはテレビアニメの製作委員会方式とそれほど変わらない。ただし、テレビアニメとの違いとして「興行収入」が主な利益となる。「興行収入」とはお客さんが買ったチケットの枚数×単価である。興行収益はまず50%、映画を放映している映画館の売上として引かれる。その後、映画の宣伝や映画館の選定などを行う配給会社に20%~30%、3億円程度の広告費、諸経費を引かれたものを製作委員会の各会社の出資比率で割り、利益となる。
興行収入以外にもビデオグラムの収入、テレビ放映、グッズ販売、配信など二次利用で収入を得ている。

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