第一章 外国から原子力発電が入ってきた経緯
なぜ日本は原子力発電を導入することになったのかをみていきたい。そこにはアメリカとの外交が大きく関わっている。アメリカは当時冷戦下で、ソ連との核開発競争に危惧の念を抱き国連総会で原子力平和利用を提唱した。そこでターゲットとなったのは日本だった。建前としては日本にはエネルギー源がなく原子力発電による電気供給がその問題を大きく解消すると。しかし本音の部分では冷戦下でアメリカは日本が共産化することを恐れ、アメリカの資本主義陣営に入れることだった。
ここで原子力の平和利用で核軍縮を提唱したアメリカだったが、実際のところ水爆実験を行っていた。そしてその実験の被害を受け、日本漁船の船員が死亡することになる。第五福竜丸事件である。これにより反米意識が高まる日本に対し、アメリカは日本テレビと読売新聞の取締役社長である正力松太郎と接触を図った。そしてアメリカはそのメディアを利用し原子力の平和キャンペーンを行った。この「毒をもって毒を制す」と謳われたキャンペーンにより国民の意向は原子力発電に傾き、原子力発電推進の正力松太郎が衆院選挙当選を果たすことで原子力発電導入に至ることとなった。
<参考文献>
・NHK現代史スクープドキュメント『原発導入のシナリオ~冷戦下の対日原子力戦略~』(1994年3月16日放映)
・『原子力戦争』 田原総一郎 筑摩書房1976