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カテゴリー別アーカイブ: 新聞要約
為替、理想と実際の差が縮小
主要企業経営者の理想とする為替水準と実際の相場との差が縮まっている。安定的にビジネスを続けるうえで理想の為替水準を社長100人アンケートで聞いたところ、1ドル=135円(中央値)だった。国内金利上昇などを受け足元の為替水準は1ドル=140円前後で推移しており、理想と現実との差が縮小している。同様の質問を定期的にに実施した2023年3月の調査以来、最小だ。 2024年9月24日 日本経済新聞 日刊
原油、方向感探る展開
今週の原油相場は方向感を探る展開になりそうだ。前週の原油は上昇傾向で推移した。FRBの利下げ決定を受けたリスク資産買いの動きのほか、レバノンの新イラン民兵組織、ヒズボラとイスラエルの対立激化に伴う中東情勢の悪化懸念が原油相場を押し上げた。今週は23日に9月米欧のPMI速報値が公表され、景気動向を改めて確認する材料となる。改善を示す結果になれば、原油需要の増加期待が高まり相場の押し上げに働く。 2024年9月23日 日本経済新聞 日刊
コインランドリーの店舗数が増加
コインランドリーの利用が増加し、自宅の洗濯機やクリーニング店に並ぶ選択肢として広がっている。共働き世帯の増加や水洗いできるスーツの普及により利用者が増加し、店舗数は10年で4割増加した。また、花粉や黄砂などの影響で外干しを避ける人の増加も市場の拡大を促す。シェアハウスに住むなど、洗濯機そのものを持たない若者も増えている。洗濯機を一家に1台持った時代とは異なり、コインランドリーの増加は令和の変化してきた生活スタイルを反映している。 2024/09/22 日本経済新聞 朝刊 1ページ
三井不動産などが低温物流網に大型投資
三井不動産や日本GLPなどが、2030年までに冷凍・冷蔵物流網に5000億円以上を投資する計画を発表した。人手不足が深刻な外食業などで冷凍食品の利用が増加していることや、トラック運転手の残業規制により長距離輸送の中間地点に倉庫が必要になっていることが影響する。日本ではコールドチェーンが小売や食品産業の競争力の鍵となっており、各社が倉庫の新設や省人化を進めている。 2024/09/18 日本経済新聞 朝刊 1ページ
文科省、図書館と書店の連携支援
文部科学省は読書推進と地域活性化を図るため、図書館と書店の連携支援に取り組む予定だ。具体的には、2025年度予算に4100万円を計上し、6自治体を公募で選定し、モデル事業を全国に普及させる方針である。背景には、読書離れや書店数の減少があり、既に各地で図書館と書店の連携事例がある。鳥取県立図書館では、地元の書店で購入した本の貸し出しを行っている。活動拡大のために、文科省は事例調査、課題分析を進める。 2024,9,24 日本経済新聞 社会
自民党総裁候補者ら、東京一極集中の是正を議論
自民党総裁選の候補者らは22日、NHK番組内で東京一極集中の是正について議論した。小泉氏、河野氏、高市氏らは大学進学などを機とした地方からの若年人口の流出を問題視し、中央省庁や国立大学の移転などの提案を行った。一方で、地方の人口を増やす施策案も出た。加藤氏は地方にかかわる「関係人口」を増加させる必要性を強調した。林氏の代理で番組に出演した田村氏は、地方移住にふれ、移住前の地方住民との交流が重要だとした。 2024、9,23 日本経済新聞 総合・政治
書評 2040年全ビジネスモデル崩壊
1971年に日本にやってきたマクドナルド、1983年に日本にやってきたディズニーランド。今ではどちらも日本人にとって馴染み深いものだろう。しかし、実はマクドナルドが業績低迷に苦しむ一方で、ディズニーは業績を伸ばし続けるというような時期があった。それは正に、両社のビジネスモデルの違いがもたらした結果と言える。とはいえ本書は、そんなマクドナルドとディズニーの経営分析を細かく行うものではない。不動産業界まで話の風呂敷を広げつつ、日本社会の価値観が一体どういうふうに推移してきたのか、これからはどうなっていくのか、ということについてを考え、記しているものである。 第一章では、日本上陸当初のマクドナルドが顧客の「量的充足」を目指し、どのように日本社会へとアプローチしていったのか、結果日本社会の中でどのようなポジショニングとなったのか、というのを骨子として話が展開されていく。当時の日本社会の雰囲気や人々の様子などにも触れられている。当時はまだ高度経済成長期で、「頑張れば成長出来る」という成功の未来を誰しもが思い描き、未知のアメリカ文化にも、明るい未来や豊かな生活を夢見ていたという。また、この頃にはニュータウンが誕生し、都市に流入する人々の為に多くの宅地も造成されたようだ。一方、マクドナルドはと言えば、日本上陸から10年足らずで現在のマクドナルドとほぼ同じような知名度と信頼を得て、日本の外食産業にしっかりとした根を張っていた。少なくともこの1970年代には、より多くの店舗を用意し、より多くの顧客にハンバーガーを届けるという「量的充足」を目指すビジネスモデルは成功していた訳である。時が進み、バブルが崩壊して不動産価格も暴落したりする中でも、マクドナルドはデフレすら低価格戦略の1つとして取り込み、この時代を乗り切るが、その先の日本はさらに不安定な時代へと突入する。 第二章では、アメリカのディズニーランドがどのように日本へやってきたのか、ディズニーランドがお客さんを惹き付け、現実の世界を忘れさせるという点において、いかに当時のレジャー施設とは一線を画すものだったのかということが語られている。当時先進国の後追いに過ぎず、あまり良い印象の持たれなかった日本にディズニーを誘致する苦労から、ディズニーの予想外とも言える成功のストーリーが、そこには示されている。その背景として、ある程度のゆとりが出来た国民が海外に目を向け始め、また物ばかりを求める「量的充足」ではなく、いわゆる「コト消費」と称されるような「質的充足」を求め始めたことなどにも触れており、ディズニーはそうした「質的充足」を追い求めたカンパニーとして紹介される。その一方で、マクドナルドや不動産業界は尚も、国民の生活を量的に満たすことに心血を注いでいたようだ。デフレ社会から抜け出せなくなり、言わば「失われた時代」が始まる1996年には、マクドナルドとディズニーは明らかに異なる道を辿り始めるのだという。 第三章ではマクドナルドはなぜ行き詰ったのか、というタイトルから、まずは1996年前後の日本に立ち込めた暗雲の数々を、日本社会の大転換点として紹介している。阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件といった天災や大事件の勃発、生産年齢人口(いわゆる働き手の人口)の減少が始まったり、超円高に突入して国内企業が呻き声を上げたり、不動産業界ではバブル時代の不良債権(6.4兆円相当)が明るみになったり、はたまた「金融危機」が到来したりといった感じだ。これらがバブル崩壊後の人々にどれだけの不安を振り撒き、その意識を萎縮させたかは想像に難くない。各経済指標から見てみても、1996年前後は国力が衰退した時期として紹介されており、人々のライフスタイルや不動産事情なんかも大きな転換を迎えたそうだ。例えば、専業主婦世帯と共働き世帯数の逆転、大都市法が改正された結果、超高層マンションが多く建設されたことによる、都市部への人口回帰現象などである。そんな中、これまで成功の一途を辿っていたマクドナルドは、創業以来初の赤字に転落する。その理由は、当時の社長がデフレを一過性のものとして捉え、問題を正しく理解していなかったからだ。商品価格を下げ続けて尚、当時は買ってくれる人がいなかったのである。1996年前後に国民の間で流れる雰囲気が、前までの何処か明るげなものではなく、悲観的なものにシフトし、人々が生活防衛にまわり始めたというのが、その要因として挙げることが出来よう。その証拠、という訳ではないが、1992年には『清貧の思想』という本が大ベストセラーになっている。華美ではなく、常に清貧であることを説いた本である。この時期の日本の人々は、それに倣うように常に倹約し、次に訪れる何かに備えて暮らすようになった。そうして、身をすくめて不安定な時代を乗り切ろうとする日本人にとって、マクドナルドの明るい店舗で提供される、アメリカ資本主義の象徴であったハンバーガーは、何とも場違いなものに成り果てていたのだ。著者は、清貧の思想がマクドナルドを駆逐したとさえ語る。その後、マクドナルドは経営者が交代し、フランチャイズを増やしたり、それに伴い直営店を売却したりして、一時業績回復に成功する。しかしそれは、あくまで一時的なものに過ぎず、その後急速なコモディティ化に苦しむことになり、だからこそ、さらなる量的な拡大を続けた。やがて、マクドナルド=チープというイメージを払拭する為の改革も始めるマクドナルドだったが、アメリカ本部から求められる方針とは反りが合わず、結局は中途半端なものに終わる。その後も、量的充足を求めた元来のスタンスが限界を迎えたのを機に、顧客の趣味嗜好を考えるなど、初めて日本マクドナルドは質的充足に向き合うこととなるが、これをきっかけにターゲットとする顧客層が拡散し、事業コンセプトが曖昧になるなど、迷走の時代が始まった。その後のマクドナルドの施策について、ある種的外れなものであったと著者は評価している。 第4章は、ディズニーランドはなぜ3年連続で値上げ出来るのか、というタイトルから始まる。デフレにひたすら値下げすることで適応しようとしたマクドナルドとは対照的に、ディズニーランドはデフレ下であろうと3年連続の値上げを行った。これはいかなる時でも自らが提供する価値を高めることに余念がなかったのと、そうした姿勢から来る自信があってこそのものだった。デフレ社会になっているのをわかった上で、「最高のものをお届けしますから是非見に来てください」と堂々と宣言していた訳である。ここでマクドナルドハンバーガーの価格とディズニーの入園料(一日フリーパス)の推移を指数化して比べてみると、ディズニーが全く値下がりせず、値上げ続きなのに対して、マクドナルドのハンバーガーは1度下落した所から中々上がってこないことが分かる。ここに、両社が採った戦略の違いが、業績に「明暗」をもたらしたことを読み取ることができる。ここで著者は、日本人の誰に聞いてもマクドナルドについては批判的なコメントが多いが、ディズニーについては期待感のあるコメントが多いということも記している。続いて、マクドナルドが顧客に媚びようとして迷走しだしたことに対比させて、ディズニーは一切顧客に媚びることはないということにも触れている。何にせよ、ディズニーは価値創造ビジネスを通じて、安定した信頼や顧客を得続けたという訳だ。そんなディズニーは、現代においては馴染み深いコンテンツビジネスの草分けだと、著者は語る。例えば、ゲームによって展開される世界は、リアルから逃れ、自分だけが幸せになれる「質的充足」だが、ディズニーはその世界を1940年代から提供してきたのだ。今後、リアルの世界がどんどん厳しいものになるにつれ、仮想の世界(VR)に遊ぼうとする。そんな世界においては、ディズニーランドが提供する「夢と魔法の国」ビジネスは、今後のビジネスの「本命」になるかもしれないという。 第5章では、マクドナルド型ビジネスモデルから、今後の価値下落について考えていく。始めに触れられるのは、マクドナルドと同じく量的に規模を拡大していった不動産のコモディティ化についてである。大都市圏ですら人口が減り始める昨今では、新たな顧客は見込めず、また多くの人に行き渡り、あって当たり前になってしまったことから「マクドナルド型不動産」はその価値を急速に失い始めているという訳だ。空き家の増加などがその象徴だという。また、相続対策アパートや投資目的のワンルームマンション、郊外戸建てなどの不動産の未来についても触れられ、いずれも、不動産という、昔は確かに財産であったものが、今では消費財に近しいものとして捉えられ、利用が難しく維持費ばかりかかるものについては、負債にすらなり得るようだ。不動産業界でも、「量的充足」から「質的充足」への価値軸の転換が起こっているのである。かつての、ハコさえあれば誰かが入居したりテナントとして利用したりということは少なくなり、今では皆が中身を吟味して不動産を選ぶようになった。不動産が中々気軽に撤退できないものという性質から、著者は都心部の中古不動産の放出が始まるということや、中小ビルマーケットの大崩壊が起こるということを予想している。最後に、著者はこれからのビジネスで問われるのは「ハコの中身」だとし、時代はハンバーガーを手にするだけで幸せを享受できていた時代から、ディズニーランドというハコの中で毎日行われている、「生き物」が演じるステージに人は集まり感動する時代へ移り変っているのだと締めくくる。 第6章では、一転してディズニー型ビジネスモデルによる価値創造という視点から話が始まる。例えば、ホテルなどのオペレーショナルアセットと呼ばれる不動産(自ら建物を用意し、その中で商売をする)であるとか、価値を演出する不動産がこれからは勝ち組になるだとか、逆に「形にすること」を最優先として失敗した豊洲新市場はマクドナルド型ビジネスモデルの遺物であるとか、時代の移り変わりを踏まえた不動産評価が、ここでは逐一なされている。その上で、「体験、ライブ、共感」がキーワードなのだと著者は語っている。日本では最近、若者の物欲がなくなっただのなんだの言うが、一方で他人との絆や共感、刹那の喜びや感動をこれまで以上に求める傾向があるようだ。それはディズニーが常々訴えかけてきた「その場限り」のライブによる満足の提供であるという。それに付随するような形で、著者は統合型リゾートこそが究極の不動産であると述べ、これからは超高級リゾート時代というのが到来するだろうと予期している。一部の金持ちが夢を演出し、一般庶民はその夢に酔いしれる。そんなビジネスモデルが莫大な収益を生み出し、またこれからの世の中を支配していくという。それはいつまで続くのか、果たして夢が覚めることはないのだろうか、という問いかけから、著者はこの先の見通し難い未来へと目を向ける。 第7章は、ディズニーの夢から醒めた時、というタイトルで始まる。この世界で現実と夢が占める割合というのは、やはり前者の方が圧倒的に多い。そして現状、日本にはあまり良い現実が広がっているとは言えない。だからこそ、夢と魔法で現実を忘れさせることにも、いずれ現実が苦境に陥ることで限界が来るのではないかと著者は予想する。不動産についても、前述のリゾート施設のように富裕層を相手するものか、あるいはコモディティ化が進み暴落するものかで二極化していくものと予想している。2040年の日本について、著者は移民社会が日本を壊すのだということや、超高齢社会が進みながらも、ある程度高齢者がいなくなることで、平均年齢的には回復する地方が出てきたりという予想を立てている。 2040年全ビジネスモデル(文春新書)2016
卒論アウトライン
世界的に化石燃料から脱却し、地球温暖化を抑止するために再生可能エネルギーの利用が進められている。 日本でも同様に再生可能エネルギーの利用を促進している。 しかし、他の主要国と再エネ比率を比較すると、日本は16%で最も高いカナダとは50%近く離れている状態である。 この様な現状を改善するためには、地熱の発電量を増やすべきだと考える。 日本は世界第3位の地熱資源量を持っていて地熱発電のポテンシャルも十分に秘めているにもかかわらず、発電所を建設するには問題点が多くあり、地熱の発電量は再生可能エネルギーの中でもかなり低く、日本の地熱発電の割合は0.25%であり、地熱発電の設備容量が資源量に対してかなり少ない。 そこで、世界の成功した地熱発電を参考にして、日本の地熱発電における課題を解決し、地熱発電量を増やし、再エネ比率を高くすることが重要である。 調査の方向性 日本が直面している地熱発電の課題点の確認と建設できている地域とそうでない地域を比較。その後、世界の地熱発電と比較し、どの様にその課題点を克服したのか、もしくは失敗したのかを調査する。そこから日本が地熱発電で発展するための方法を考察。
書評 「生成AIスキルとしての言語学」
書評 「生成AIスキルとしての言語学」 本書の著者である佐野大樹はオーストラリアで言語学の博士号を取得したのち、国立国語研究所という日本語や社会における言葉の実態を科学的・総合的に研究する機関に、言語学者として所属していた。現在は機械と人のコミュニケーションのスペシャリストとして、生成AIの開発に従事している。本書では、著者が専門としている言語学という視点から生成AIをとらえ、その能力を自分の目的に合わせて引き出し、生成AIとの対話を広く、深くするための一手段として、「生成AIスキルとしての言語学」が紹介されている。 第一章 生成AIとは何か。人同士の対話と生成AIと人との対話の相違点は何か。 第一章では、そもそも生成AIとはどのようなものなのか、生成AIとのやり取りは人同士の対話とどこが異なるのかについて取り上げている。 人工知能の歴史が1950年代に始まって以来、レントゲン写真やMRI画像、Siriといったさまざまシステムが人工知能を利用して開発されてきた。しかし、人と同じようなレベルでテキストや画像を生成できたものはこれまでなかった。さらに、これまでの人工知能は専門知識やプログラミングスキル、データなしでは自分の目的に応じた活動を人工知能に実行させることができなかったのに対し、生成AIとのコミュニケーションではそれらが必要とされることがなく、我々人間が日常生活で使っている自然言語を使用する。生成AIの特徴の一つは、専門的な知識がなくとも、自然言語を使って、情報を処理したり、アイディアを表現したりとさまざまな用途に活用できることである。 生成AI は、入力されたテキストを深く理解し、それに基づいた新しいテキストを生成する能力を持つ。このシステムはトランスフォーマーと呼ばれ、それを根幹として大量のデータから言葉の使われ方を学習し、回答を生成している。 人が対話の目的として言葉を選択している一方で、生成AIはデータから学んだパターンに基づいて会話を生成しているという違いがある。それに加え、人とのコミュニケーションでは頻出する個人間で共有されている経験によって特別な意味を持つような表現が、生成AIとのやり取りには存在しない。 第二章 言語学とは。なぜ言語学が生成AIと対話するのに活用できるのか。 第二章では言語学がどのようなものか、そして言語学が生成AIとの対話に生かすことができる理由について触れられている。 言語学では元来、人と人とのコミュニケーション手段として言葉についての研究を行ってきた。言葉の機能、構造、意味、語彙、文法、語用、習得過程などさまざまな側面から、言葉の本質について思考するのが言語学という分野である。言語学が生成AIとの対話に活用できるのは、第一章でも触れられていたように、生成AIとのコミュニケーションが形式言語でなく自然言語で行われるから、また、どのように指示や質問を表現するかによって、生成AIの知識やスキルをどこまで生かせるかが変わってくるからである。 主にイギリスやオーストラリアを中心に発展してきた言語理論であるSFLでは、言葉の機能には、経験を解釈する機能、対人関係を築く機能、情報・考えを整理して会話や文章として形成する機能の三つがあるとされている。この考え方が、指示や質問を生成AIに伝えるうえでの言語機能、生成AIが作成した回答を解釈する上での言語機能、生成AIと共同作業で作成したものを人に伝えるうえでの言語機能、これらを考慮するのに利用できると述べている。 第三章 生成AIとの対話の目的。プロンプトの構造。 第三章では生成AIとの対話の目的と、生成AIに指示や質問をする場合、プロンプトはどのような構造をしているのかが説明されている。 生成AIとの対話の目的には、大きく分けて、情報やアイディアを理解する、情報やアイディアを表現する、考えを分析・整理するといったものがある。 指示や質問を生成AIにする場合、プロンプトに含める必須の要素が指示や質問の説明である。また、対話の目的に応じて指示や質問以外にも、状況設定や様式の選択、例の提示をプロンプトの構成要素として選択する。 第四章 状況設定。 第四章では、第三章で挙げられたプロントの構成要素のうち、状況設定に焦点を当て、状況設定をプロンプトに入れ込むことで、生成AIの知識やスキルをどのように引き出すことができるかが概説されている。 状況設定は言語学でコンテクストとして扱われる。コンテクストを説明する概念の一つに、状況のコンテクストと呼ばれるアプローチがあり、このアプローチでは、会話や文章に影響を与えるコンテクストの要素として、フィールド、テナー、モードの三つがある。 一つ目のフィールドは、コンテクストで何が起こっているのか。どのような出来事が起き、どんな人・物が出来事に関与しているかを表す要素。フィールドを説明することで、生成AIとの対話の内容を、より自分の目的に合致したものにすることができる。二つ目のテナーは、コンテクストにおいて、だれがどのような立場・役割を持っているか、立場・役割は当該のコンテクストに限定されるものか、それとも、それ以外でも役立つ役割かを表す要素。テナーを説明することで、生成AIとの対話の専門性、視点などをコントロールすることができる。三つ目のモードは、コンテクストにおいて、言葉がどのような役割を果たすのか。役割に応じて、どのような言葉が形成されるのかを表す要素。モードを説明することで、生成AIに目的に合ったかたちで回答を構成させることができる。 第五章 指示/質問の説明 第五章では、指示/質問の説明は、生成AIがどのように回答を生成するかを誘導するうえで重要になるということを、発話機能と論理‐意味関係という知見を使って説明している。 指示や質問は、言語学では発話機能の種類として扱われる。発話機能の知見に基づくと、指示は「物・サービスを要求する発話」、質問は「情報を要求するための発話」と定義できる。自らが求める回答を生成AIに導き出してもらうために、指示・質問の説明が重要になってくるわけだが、そこで活用できる考え方が論理‐意味関係である。論理‐意味関係は、指示や質問の一文だけからなるものではなく、指示や質問を主部として、それを補足する従属部との関連性を分析することに利用できる。論理‐意味関係には、主部と従属部の関係として、大きく分けて詳細化、増補、拡張の三つがあると考えられている。 詳細化の関係は、従属部が主部の指示や質問を言い換えたり、明確化したりするときに成り立つ。詳細化によって指示や質問を補足することで、生成AIが回答を作成する際に具体的に何を実行するかを誘導できる。 増補の関係は、従属部が主語に表された指示や質問を行う手段、条件、原因、時間や場所などを提示する場合に成り立つ。増補によって指示や質問を補足することで、生成AIがどのように、もしくは、どのような条件を考慮して回答を生成できるかを誘導できる。 拡張の関係は、主部の指示や質問に対して、従属部が何か追加したり代替案を提示したりするときに成り立つ。拡張によって指示や質問を補足することで、生成AIが回答を生成する際に、指示や質問をどのような手順で実行するかを誘導できる。 第六章 様式の選択。例の提示。複数のやり取りからなる生成AIとの対話。 第六章では、プロンプトの構成要素である「様式の選択」と「例の提示」が生成AIの回答にどう影響を与えるのか。また、生成AIとの対話を、一度のやり取りだけでなく、複数回続けることによる効果が記されている。 文体、会話や文章の形式、媒体、ジャンルといった様式の選択肢を生成AIに伝えることで、生成AIの表現、構成能力を引き出すことができる。例えば、ある料理のレシピを生成AIに質問する場合、食材や分量などを表形式で記してもらった方が、一つなぎの文章よりも見やすく、必要なものがすぐにわかるようになる。 また、例の提示をすることで、生成AIに状況設定や指示/質問の説明の内容をどう回答に反映したら良いかを伝えられる。例を一つだけ見しても回答が変わらない場合や、生成AIにさまざまなバリエーションを作成させたい場合は、複数の例を提示するなどの工夫によって違った回答を引き出すことができる。 しかし、指示や質問の説明や補足を行っても満足のいく回答を得られないときがある。そういった場合には、追加のプロンプトを送って、回答をより詳細化、増補、もしくは、拡張することが効果的である。 第七章 アプレイザル理論。言い換え。 第七章では、これまで紹介されてきた知見を組み合わせて、生成AIの使い方をさらに広げ、深めるような、少し発展的な用途が二つ紹介されていた。 一つは、評価をほかの人に伝える前に、自分の評価の表し方を見直すという用法である。ここでは、言語学で機能言語主義的立場から提案されたアプレイザル理論の考え方が用いられる。アプレイザル理論では、評価について特に次の四つを考える。①どの表現が肯定的な評価、もしくは、否定的な評価を表すか。②何を対象とした評価か。③直接的な表現を使っているか、間接的な表現か。④どのような評価基準を示す表現が使われているか。この分析方法を活用して、聞き手・読み手に自分の評価を伝える前に、自分の評価の表し方を生成AIと一度整理することで、伝えたいことをちゃんと表すことができているのか、相手にどう伝わる可能性があるのか、他により効果的な評価の表し方はないかなど、第三者の立場で見直すことができる。 もう一つは、自分の評価の表し方を見直すのとは逆に、評価やフィードバックを誰かから自分が受け取る場合に、生成AIを活用する用法である。評価やフィードバックの中には、現状を改善していくために有用なものもあれば、逆に否定的な批判のみで、モチベーションを下げてしまうようなものもある。そこで、生成AIを使って、否定的な批判を建設的なフィードバックに言い換えてしまう方法が紹介されている。言語学で言い換えを扱うとき、含意という概念を使って考える場合がある。含意という考え方の便利なところは、与えられた文章や発話から、言外の意味まで推測できるようになることである。例えば、自分が提出した企画書に対し上司から否定的な批判を受けたとき、直接的に伝えられたことだけを解釈した場合、ネガティブな気持ちになってしまうことが予測される。そこで、生成AIにこの批判を「建設的なアドバイスに言い換えて」と伝えることで、未来志向なものに言い換えてくれる。 このように、生成AIとの対話を介して、自分が評価するときには、評価の表し方を見直し、評価を受け取るときには、建設的なフィードバックに言い換えることで、対人関係を良好なものにしたり、改善したり、モチベーションを取り戻したり、高めたりするのに活用できる。 本書を通して、言語学的知見を活用して生成AIと対話することで、生成AIの知識やスキルを引き出し、自分の目的に合った回答を引き出すテクニックについて学ぶことができた。また、身近な言葉を使って、日常的な場面から教育的な場面、ビジネスの場面など幅広い分野で、さまざま使い方ができるのが生成AIのすばらしい部分だと感じた。しかし、生成AIを使用する上で気を付けなければいけないことも多数あると思った。一つは、生成AIが作成する回答は、常に正確だとは限らないこと。もう一つは、生成AIに入力したデータがどのように利用されるのか確認すること。これらは人と人の対話にも当てはまることである。生成AIが何でも知っていると過信することなく、生成AIはあくまで我々のサポートをしてくれるパートナーであり、我々が対話における主導者であるという認識を持つ必要があると感じた。パートナーといっても、生成AIは、対話者の背景や目的を自ら察してくれるわけではないため、質問や指示の仕方を工夫する必要があり、その具体的な用法が本書では紹介されていた。私は、それではせっかく人工知能を利用しているのに逆に大変なのではないかという感想を最初は持った。しかし、生成AIと複雑なタスクを一緒に行う際、質問や指示をどう構成するのがよいかをプロンプトとして表現することも、自分の考えや目的を整理し、それを生成AIと一緒に達成する上で、重要なプロセスだと気づくことができた。生成AIを扱うときは生成AIの特徴や危うさを理解し、今回新たに得た言語学的知見を活かして、自らの目的に合致した対話をしたいと思う。
書評 「生成aiで世界はこう変わる」
著者である今井翔太氏は、東京大学松尾研究室に所属し、AI、特に生成AIのコア技術である強化学習を専門に研究しています。本書では、これまでの研究によって得られた知見を基に、研究者としての著者が生成AIの登場初期からその発展を追ってきた視点を加え、生成AI革命において知っておくべき技術、影響、未来について説明しています。 第一章では、生成AIとは一体何か、生成AIで何ができるのか、生成AI革命をもたらしたChatGPTなどについて説明しています。さらに、第一章では著者が本書の目的を、生成AI時代における生き方を読者に提供することだと述べています。また、著者が強調したい点として、生成AIが単なる便利なツールではなく、初めて登場した人間と同等、またはそれ以上の知的存在であることが挙げられます。 第二章では、現代の主要な生成AI技術について説明しています。 ChatGPTのような言語モデルを「大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)」と呼びます。言語モデルを一言で説明すると、「生成される単語や文章に確率を割り当てるモデル」です。また、人間が英語や国語のドリルで行っていたような文章の「穴埋め問題」をAIに解かせることで、高性能なAIを実現できることを説明しています。このような単純な学習法でも、高度な文書生成AIを作ることができるのです。 第三章では、生成AIが仕事や我々の暮らしにどのように影響を与えるかについて説明しています。 過去とは逆に、現在では「高学歴で高いスキルを身につけている者が就くような高賃金の仕事ほど、コンピュータ/AIによる自動化の影響を受ける可能性が高い」とされています。研究者の間でも意見が分かれますが、生成AIは労働の置換ではなく、労働の補完を目指す技術とされ、既存の労働をより生産的で快適なものにするという意見が多いです。ただし、現在の雇用が完全に維持されるという楽観的な見解は少ないです。 第四章では、生成AIにおける創作の文化と芸術的価値について話しています。著者は生成AIが単なる創作ツールに過ぎないのか、それとも創作者であるのかについて問いかけます。特に、AIが作成した作品に価値があるのかというテーマについて議論します。ある実験では、人間とAIが作成した画像を比較し評価してもらいましたが、人間が作成したとラベル付けされた画像の方が、すべての項目でAIより高く評価されました。これは、人間がコンテンツを鑑賞する際に、その作品に付与される背景情報に大きな影響を受けているためです。将来、ai画像の不自然な部分を克服し、aiと人間の画像の見分けがつかないレベルになっても、「人間が生み出したものに高い評価を与えたい」というある種の本能的な価値観がある限り、評価は変わらない思われます。 第五章では、長期的な視点から生成AIの未来について話しています。この話題に関しては、AI研究者の間でも意見が分かれていますが、著者の予想する未来について述べています。未来には、Google検索や現在のChatGPTが強化され、AIに聞けば何でも解決できる世界が来ると考えられます。言語生成AIなどを日常業務に組み込むことで、今まで人間が行っていた多くのことが自動化され、より短時間で処理できるようになります。本来は人間が行っていた作業がなくなり、人間は別の活動に時間を割けるようになります。業務であれば、ルーチン的な事務作業や資料作成ではなく、根本的な事業改革のアイデアを生み出したり、社会や人類の未来にどのように貢献すべきかを再考することなどの変化が訪れると予想されます。 2024 今井翔太 生成aiで世界はこう変わる