書評 「生成aiで世界はこう変わる」

著者である今井翔太氏は、東京大学松尾研究室に所属し、AI、特に生成AIのコア技術である強化学習を専門に研究しています。本書では、これまでの研究によって得られた知見を基に、研究者としての著者が生成AIの登場初期からその発展を追ってきた視点を加え、生成AI革命において知っておくべき技術、影響、未来について説明しています。

第一章では、生成AIとは一体何か、生成AIで何ができるのか、生成AI革命をもたらしたChatGPTなどについて説明しています。さらに、第一章では著者が本書の目的を、生成AI時代における生き方を読者に提供することだと述べています。また、著者が強調したい点として、生成AIが単なる便利なツールではなく、初めて登場した人間と同等、またはそれ以上の知的存在であることが挙げられます。

第二章では、現代の主要な生成AI技術について説明しています。 ChatGPTのような言語モデルを「大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)」と呼びます。言語モデルを一言で説明すると、「生成される単語や文章に確率を割り当てるモデル」です。また、人間が英語や国語のドリルで行っていたような文章の「穴埋め問題」をAIに解かせることで、高性能なAIを実現できることを説明しています。このような単純な学習法でも、高度な文書生成AIを作ることができるのです。

第三章では、生成AIが仕事や我々の暮らしにどのように影響を与えるかについて説明しています。 過去とは逆に、現在では「高学歴で高いスキルを身につけている者が就くような高賃金の仕事ほど、コンピュータ/AIによる自動化の影響を受ける可能性が高い」とされています。研究者の間でも意見が分かれますが、生成AIは労働の置換ではなく、労働の補完を目指す技術とされ、既存の労働をより生産的で快適なものにするという意見が多いです。ただし、現在の雇用が完全に維持されるという楽観的な見解は少ないです。

第四章では、生成AIにおける創作の文化と芸術的価値について話しています。著者は生成AIが単なる創作ツールに過ぎないのか、それとも創作者であるのかについて問いかけます。特に、AIが作成した作品に価値があるのかというテーマについて議論します。ある実験では、人間とAIが作成した画像を比較し評価してもらいましたが、人間が作成したとラベル付けされた画像の方が、すべての項目でAIより高く評価されました。これは、人間がコンテンツを鑑賞する際に、その作品に付与される背景情報に大きな影響を受けているためです。将来、ai画像の不自然な部分を克服し、aiと人間の画像の見分けがつかないレベルになっても、「人間が生み出したものに高い評価を与えたい」というある種の本能的な価値観がある限り、評価は変わらない思われます。

第五章では、長期的な視点から生成AIの未来について話しています。この話題に関しては、AI研究者の間でも意見が分かれていますが、著者の予想する未来について述べています。未来には、Google検索や現在のChatGPTが強化され、AIに聞けば何でも解決できる世界が来ると考えられます。言語生成AIなどを日常業務に組み込むことで、今まで人間が行っていた多くのことが自動化され、より短時間で処理できるようになります。本来は人間が行っていた作業がなくなり、人間は別の活動に時間を割けるようになります。業務であれば、ルーチン的な事務作業や資料作成ではなく、根本的な事業改革のアイデアを生み出したり、社会や人類の未来にどのように貢献すべきかを再考することなどの変化が訪れると予想されます。

2024 今井翔太 生成aiで世界はこう変わる

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