歴史の説明は因果関係の説明でもなければ、ありのままの記述でもなく、むしろ物語である。なぜなら、歴史の説明はよくできた物語と同じようにドラマ性を強調し、筋が通っていて、複雑、偶然、曖昧よりも単純明快な決定論を重視しやすいからである。研究や実験によると、よくできた物語の特質をもった説明は正しい、と人々は自信を持ちやすいことが分かっている。また、歴史は一度しかおこりえないので、実験が事実上行えず、真の因果関係を推論するのに必要な証拠が排除されてしまう。
こういった状況の中、何かの原因を調べるときわれわれは未来に応用できそうな洞察を求めている。つまり過去について学ぼうとするとき、われわれは同時に過去から学ぼうとしている。この物語から理論への切り替えはそれぞれが目的も証拠の基準も異なることを見落としている。だから物語としての出来に基づいて選ばれた説明が未来の予測に役立たなくてもおかしくない。