ゲーム前後での変化

この論文では、携帯ゲーム機(PSP)を使って、短い時間のゲームプレイが人間の生理面や心理面にどんな影響を与えるかを、ゲームの習熟(慣れ)やプレイ内容に踏み込んで実験・検証している。実験では大学・大学院生10名を対象に、心理指標として気分を測定する「POMS」という調査を行い、生理指標としてはリラックスや緊張状態を測る「皮膚電位」や、ストレス状態を反映する唾液中の「アミラーゼ分泌」を測定している。使用されたゲームは5種類。
実験の結果、非常に面白いデータがいくつか得られている。まず、パズルゲームの実験では、ゲームに慣れる(習熟する)前はプレイ後にストレス指標であるアミラーゼ活性値が上がってしまっていたのに対し、ゲームに慣れた後ではプレイ終了3分後にその数値が大きく減少することが分かった。また、気分プロフィールの調査でも、ゲームに慣れた後のほうが抑鬱・怒り・疲労といったネガティブな気分が減少し、代わりに活気が上昇するという、ポジティブな気分の変化がより顕著に現れることが示されている。
さらに、個別の被験者の皮膚電位のデータを見ると、ゲームの腕前(スコア)が非常に良く、より集中してプレイできた状態(ゲームに慣れた後)では、脳の覚醒水準が高く保たれる一方で、イライラなどの情動反応の出現頻度は低くなることが確認された。一方で、操作性が非常に悪いと感じてしまったゲームのプレイにおいては、逆に抑鬱・怒り・疲労・混乱が上昇し、アミラーゼ活性値も上がってしまうという結果も出ている。ただし、このゲームであっても、操作に慣れてゲームに対して愛着を持った被験者に限っては、アミラーゼの上昇(ストレス反応)は見られなかった。
これらの結果から、この研究ではテレビゲームは生体の生理・心理的な変化を促す影響源になりうること、その変化の方向性はゲームソフトの種類やプレイヤーの嗜好・プレイ内容に左右されること、ゲームに慣れる(習熟する)ことで、気分の変化がより積極的でポジティブなものになることなどを結論づけている。今後は、こうした気分の変化を「ゲームの効能」として捉え、気分や体調に合わせたゲームの評価方法へと応用していくことを目指している。

「テレビゲームの与える生理・心理的影響」
加藤 亮, 河合 隆史, 二瓶 健次, 佐藤 正, 山形 仁, 山崎 隆
2006 年 42 巻 Supplement 号 p. 204-205

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