書評 通貨の日本史

本書では、日本で使用されてきた通貨・貨幣の用途、種類、政策の変遷について、以下の4章から構成されている。

第1章「銭の登場」では通貨・貨幣の定義の話から始まり、古代〜中世の日本で通貨として使われたものの紹介そして外国銭の輸入について述べられている。
第2章「三貨制度形成」では、戦国〜江戸前期にかけて金貨・銀貨・銭の三貨を政府が法で定義したことや、支配者が頻繁に変わるこの時代だが通貨政策は部分的に引き継がれることが多く少しずつ改革を加えながらバラバラだった通貨の交換基準を統一していく過程が説明されている。
第3章「江戸の財政再建と通貨政策」では、江戸中期〜後期に起こった通貨のデフレとそれに悪戦苦闘する改革政治家らの政策が述べられている。
第4章「円の時代へ」では、幕末維新〜現代にまで使用されている「円」の登場や外国との通貨取引による金の流出とそれを食い止めようする政府のしたたかな通貨交渉、そして世界大戦中の通貨ついて述べられている。

筆者は、モノそのものに実用性がなく通貨以外に使えないという点で電子マネーや仮想通貨はかつての金・銀と似ていると記述している。また、通貨は最初から政府が独占して発行していたわけではなく、1899年に紙幣が日本銀行券に統一されるまでは民間の模造銭が大量に出回っていたり、外国の通貨を輸入したものを国産の通貨と併用していたりしていた。そのため電子マネーや仮想通貨は、技術面では新しくなったが民間が独自に通貨を開発することは歴史上しばしばあったので、決して通貨史上の革新というわけではないと指摘している。そして、将来また新たなスタイルの通貨が登場するかもしれないし、歴史を知ることは「現在の通貨が唯一正しい」という思い込みから私たちを解放してくれると締めくくっている。

私が本書を選んだのは、電子マネーなどの現代の通貨だけではなく古代から現代までの日本の通貨の歩みについて知りかったからだ。電子マネーや仮想通貨は革新的なものであると考えていたが、本書を読み、歴史の積み重ねの結果であることを知ることができた。また、歴史を通して政府の通貨政策は基本的には似通ったものであったことも興味深かった。本書は、電子マネーに対する考え方を改めることができ、卒業論文に向け準備をしていく中で非常に刺激を与えてくれた一冊であった。

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