【書評】アパレル素材の基本

この本はファッション関係の専門学校生やアパレル産業で仕事をしている人、しようと考えている人のためにアパレル素材の基本的な知識をまとめたものである。

衣服(アパレル)を構成する主要材料は繊維である。衣服は繊維から糸を作り、生地、染色・仕上げ、縫製と多くの加工を積み重ねることによって生み出される。繊維は天然の状態ですでに繊維の形態をしている天然繊維と、科学的な手段によって人工的に作り出した化学繊維の二つに大別される。天然繊維は、採取の源によって主成分がセルロースである植物繊維(綿、麻など)と、主成分がたんぱく質である動物繊維(羊毛、絹など)に区分される。一方、化学繊維は人工的に作り出した繊維であり、用いる科学手段の違いによって再生繊維、半合成繊維、合成繊維の三つに分けられる。合成繊維は加熱による変形が可能で、冷却(常温放置)するとその形のまま固定する。この性質を熱可塑性という。これを利用して合成繊維のスカートのひだ付け(プリーツ加工)やエンボス加工などが行われている。また繊維などに一定の変形(伸びなど)を与えるのに、どれだけの力を加えなければならないかを示す量としてヤング率(伸び弾性率)が用いられる。繊維では硬さや柔らかさなど柔軟性を示す数値として重要で、「伸ばしにくさ」を表す量として示される。麻はヤング率が大きく剛直で腰が強く変形しにくいので、通風量が大きく夏の衣料に適する。また、ナイロンや羊毛はヤング率が小さく、柔らかくて変形しやすいので、靴下などのニット分野に多く用いられている。ほとんどの繊維は、放置すると空気中の水分や汗などをある程度吸収する(このような性質を吸湿性という)。動物繊維は吸湿性が大きいため染色性に富む。

今回は衣服で使われる繊維について学ぶためにこの本を読んだ。前回読んだ繊維全般について書かれた本と重複する部分は多い分、理解が深まった。また化学繊維は人工的に作られた繊維であり、天然繊維に比較すると欠点を持つがそれを改良・改質してより快適な繊維が数多く生み出さていることがわかった。今まで化学繊維は天然繊維に学び模倣してきたが、天然繊維の性質を超えたもの、また天然繊維にない機能や性質を作れるようになった。
繊研新聞社2004年出版 鈴木美和子・窪田英男・徳武正人

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