研究目的
韓国の統合型リゾート(IR)産業の現状と、それを支える観光教育カリキュラムを分析し、日本(特に大阪IR)の将来的な人材不足への対応策を示唆する。
主な内容
① 韓国のIR産業の状況
- 現在、韓国には18のカジノが存在し、そのうち17は外国人専用。
- 唯一、韓国人も入場できるKangwon Landは公的資本が大半を占め、雇用・経済振興の役割を担う。
- Inspire Resort(2024年開業)など大規模IRの登場で、労働力不足が深刻化。
② 労働力と観光人材育成のギャップ
- 韓国では毎年観光学科から約1万人が卒業するが、業界が吸収できるのは35%未満。
- COVID-19による観光客激減と人材流出で、接客の質低下→観光客減少→業績悪化という悪循環が発生。
③ 教育制度の課題
- ホテル・カジノ分野の教育機関は大学1校、大学院1校、専門学校6校と極めて少ない。
- 実務力を育む産学連携・インターン機会の整備も不十分。
結論
- 韓国のIR産業は成長しているが、それを支える人材育成のインフラが不足。
- 同様の課題が予測される日本(大阪IR)では、早期に観光・IR分野の教育カリキュラム整備が急務。
- 産業界と教育界の連携によって、専門人材の確保・育成が求められている。
自分の意見
金志善氏の論文では、韓国IR産業が拡大する一方で、深刻な人材不足に直面しており、その対策として観光人材育成の必要性が指摘されていた。
この議論は、日本におけるIR導入においても、制度的整備や経済波及効果だけでなく、“誰がIRを担うのか”という視点の重要性を改めて浮き彫りにしている。
私は卒業論文で「IRと既存ギャンブル市場の共存戦略」をテーマにしているが、本論文を読んで、共存を実現するには制度や立地の問題だけでなく、IR自体の構造をどう設計するかという観点も不可欠だと感じた。
例えば、現在地方では、パチンコ店がリノベーションされ、直売所や飲食施設、地域交流スペースとして再活用されている事例が見られる。
これは単なる再活用ではなく、既存ギャンブル施設が“稼ぐ力”と“地域機能”を併せ持つ空間へと進化している兆候とも捉えられる。
こうした空間に観光・宿泊・飲食・イベントなどの要素を組み込めば、小規模ながらIR的な複合施設のモデルになり得る。
このように、IRのハードウェア的側面(施設規模や立地)だけでなく、ソフトウェア的側面(担い手の多様性、地域への組み込み方)を柔軟に設計することが、既存ギャンブル市場との共存の鍵になると考える。
また、金氏が指摘するような専門人材育成も重要だが、日本におけるIR構想が本当に地方創生を目指すなら、“すでに地域にいる人”を育て活かす仕組みのほうが、持続可能性の観点では現実的である。
卒業論文では、IRと既存ギャンブルの制度的・空間的共存に加え、その共存を可能にする“構造の柔軟性”と“地域主導の運営モデル”の必要性についても考察を深めていきたい。
参考文献
長崎県立大学国際交流研究センター『国際研究評論』創刊号
A Study on the Status of Korea’s Integrated Resorts (IR) and
Educational Curricula on Tourism
Jeeseon KIM・2025