第五章 日本の革新的な施策

第五章 日本の革新的な施策

前章まで世界と比較しながら、様々な日本に関する問題点に関して記述してきたが、近年その問題点に対して政府がそれに対する施策を多く打ち出してきた。本章ではその施策に関して記述していく。

まずは博士学生の経済的な負担に対する政府の新たな施策を3つ紹介する。

初めは次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)である。この制度は博士学生が研究に専念するための経済的な支援と産業界含め幅広く活躍するためのキャリアパス整備を行う意欲のある大学を支援するもので、2021年度より国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が行っている。個人で申請する特別研究員制度とは異なり、各大学により選抜された博士学生に対し、生活費相当額及び研究費の支給や、キャリア開発・育成コンテンツをはじめとする様々な支援が提供される。支給額は290万円/年を上限としており、支援対象学生はSPRING全体で最大6,000人となっている。

次に科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業である。同じくJSTが行っているこの制度は、内容的にはほとんどSPRINGと同じであるが研究分野に関して多少異なる点があり、本フェローシップでは、将来を担う博士人材を戦略的に育成していくため、各大学が将来のイノベーション創出などを見据えてボトムアップで提案するボトムアップ型と、国がトップダウンで分野を指定する分野指定型の2タイプが存在している。SPRINGは学生が研究分野を自身で自由に選択できるため大きな違いが存在する。

支給額は生活費相当額である180万円に研究費を足したものに2/3を掛けたものであり、総支援人数は2,000人となっている。(当初は1,000人で始まったが、次年度に2,000人に拡充した。)

最後に創発的研究支援事業である。これは上記二つと同じくJSTが始めた施策であり、約800人分のRA支援経費を新たに措置することで、RAとしての労働対価を年間総額最大240万円支給する。また大学におけるRAなどの雇用・謝金にかかるガイドラインの策定によって国内のRAにおける待遇の改善を目指している。

以上2021年に新たに始まった三つの施策により、もともと博士学生の中の10%程度であった生活費相当額受給者を2021年度は2倍である20%程度に増加させることに成功した。また政府は2025年までにこの割合を30%まで引き上げることを目標にしており、これは修士課程から進学した学生の70%が生活費相当額を受給していることとなる。

次に日本におけるポストドクターに関する問題を解消するために、政府により新たに決定された方針に関して記述する。それは研究力強化・若手研究者支援総合パッケージである。この方針は、前章で述べたポストドクターの高齢化と状況などのネクストキャリアへのステップアップ率の悪さを解消するために設定されたものである。具体的な達成目標としては「将来的に日本の大学本務教員に占める40歳未満の教員が3割以上になることを目指し(2018年時点で23.5%)、2025年度までに40歳未満の大学本務教員を約1割増やす」や「産業界による理工系博士号取得者の採用者数を約65%(約1,000名)増加」などであり、その目標に向けて様々な施策が行われている。いかに記述されているのがその施策である。

・各国立大学の「中長期的な人事計画」の策定を促し、若手研究者のポスト確保に取り組む大学に運営費交付金を傾斜配分。

・年間数百件程度の若手研究員を中心とした挑戦的研究に足し、短期的な成果にとらわれず、研究に専念できる環境を確保しつつ最長10年間支援する仕組みを創設

・若手研究者への重点支援と、研究成果の切れ目ない創出に向けた、各資金配分機関のミッションに応じた競争的研究費の一体的見直し。

・国立大学等におけるポスドク・大学院生などの育成支援にかかる個人寄付の税額控除の追加。

・企業と大学による優秀な若手研究者のマッチングの仕組みの創設により、企業での採用を促進。

・国が率先して博士人材の待遇改善を検討

以上の施策群は我が国の博士人材やポストドクターの数や研究の能率を向上させるうえで革命的なものである。しかし、2022年のデータによると博士課程の進学者の増加という目に見えるデータは見られなかった。これからは新たに始まったこの制度たちの周知と継続に力を注いで、よりよい若手研究者の環境を整えていくべきである。

 

カテゴリー: 新聞要約   パーマリンク

コメントを残す