第三章 日本のEV化の動き(修正版)

日本のEV化の動きを考えるの前に、日本の自動車産業における二酸化炭素を減らす取り組みがどのように始まったのかを考える。

1977年に採択された京都議定書で、日本は2008年から2012年の間に1990年の二酸化炭素排出量を平均6%削減することを約束した。その後、2005年2月の議定書発行を受け、政府は同年4月に京都議定書目標達成計画を策定し、産業・民生・運輸部門といった部門ごとに排出量の削減目標と対策が掲げられた。二酸化酸素の約2割は運輸部門から 排出され、そのうち約9割が自動車から排出されていることから、自動車業界及び各自動車メーカーは車両の燃費向上やクリーンエネルギー車の開発を進め、トヨタ自動車は特に1997年から生産しているハイブリッド車の開発・販売を積極的に取り組んだ。その結果として1997年の初代プリウスの発売に始まる約10年間でのハイブリッド車世界販売総数は、累計100万台を超え、発売以来累積で約350万 t の排出制御効果があったと試算している。

このように自動車産業において二酸化炭素削減に取り組んできた中、2020年10月に菅義偉総理が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラルの実現」を国家目標に掲げ、脱炭素政策の目玉として、自動車産業においては電動化を推進し、2030年代半ばまでに新車販売で「すべての乗用車が電動車(EV)またはプラグインハイブリッド車(PHEV)」であることを目指すと宣言した。

政府は2023年に総額900億円の予算をあて、電気自動車購入時のCEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)の支給を始め、2023年3月23日に申請受付を開始した。

CEV補助金の主なポイントとして4つ挙げる。

1つ目は補助金の対象となる車両は、EV、軽EV、PHEV、FCVなどで、ハイブリッド車は補助金の対象とならないことである。

2つ目は補助金の上乗せ制度があることである。外部給電機能(車載コンセントAC100V/1500Wを装備していることを指す)を備えている車両や、省エネトップランナー制度(対象機器でエネルギー消費効率がもっとも優れたものを「トップランナー」とし、それを省エネの目標基準に定めてエネルギー消費効率の向上を促す制度)の2030年度燃費基準の対象となる車両が上乗せさせる。具体例としてEVの補助金の上限額はベースで65万円だが、条件付きで85万円になる。また軽EVやPHEVはベースが45万円だが、条件付きで55万円になる。条件に合えば上乗せで補助金がもらえるようになっている。

3つ目は高額なEVに対する補助金の減額があることである。2023年度から新たに、税抜き価格が840万円以上の高額なEV・PHEVについて、算定された補助金額が8割に減額されることになる。具体例として高額車両とされるEVの補助金の上限額はベースで52万円だが、条件付きで68万円になる。また軽EVやPHEVはベースが36万円だが、条件付きで44万円になる。

4つ目は補助金の申請が予算額(900億円)に達した時点で、CEV補助金の受付は終了となることである。

交付条件は、一定期間内に新車を購入し、購入したEV等の一定期間保有(原則4年間)を条件としている。

販売台数は2022年において3万1592台で、日本の自動車販売台数(約222万台)のうちわずか1.42%となっている。

このようにEVの導入が遅れている理由は2つ挙げられる。

1つ目はトヨタのハイブリッド車の成功である。トヨタ自動車がハイブリッド車(例:プリウス)のパイオニアであり、日本国内市場では長らくハイブリッド車が主流であった。2022年時点でハイブリッド車が49%とガソリン車の42%を上回っており、日本国内市場では主流であるといえる。そしてトヨタの成功により、日本国内の自動車市場においてハイブリッド車が優勢であったため、電気自動車へのシフトが遅れてしまった。

2つ目は充電インフラの不足である。日本では一部の都市や地域では充電ステーションの設置が進んでおり、特に都市部においては需要が高く、設置が比較的容易であるため、充電インフラが整備されている。しかし、一部の地方地域や遠隔地では需要が低く、設置コストが高いため、充電ステーションが不足しており、これがEVの普及を妨げる要因となっている。

日本は自動車産業において、欧州、中国、米国と比べ早い時期からハイブリッド車の積極的な導入をし、二酸化炭素を減らす取り組みを行っている。日本は欧州などから影響を受け、EVの導入を推進し、充電インフラや法整備を進めるようになったが、依然として電動車に占めるHEVの割合が大きく、そしてEVの販売台数は世界で見ても少なく、日本の自動車市場においても全体のわずか1%とまだ少ないことが分かった。前章からこの章までEV化の動きについて述べてきたが、EV導入が必ずしもメリットだけがあるとは考えていない。そのため次章はカーボンニュートラルの観点からEVの問題点について考える。

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