書評『シニアよ、インターネットでつながろう!』

 本書は「すべてのシニアをインターネットにつなぐ」という理念で「一般社団法人アイオーシニアズジャパン」を立ち上げた筆者が、「高齢化社会と情報化社会の融合」をテーマに、シニアへ向けてインターネットの重要性と楽しさを伝える一冊となっている。全10章で構成されている。
 
 第1章「シニアにこそインターネットが役立ちます」では、年齢とともに狭くなっていくシニアの世界を広げるために、世代や空間を超えた交流ができるインターネットはとても有効なツールであると述べている。また本章ではIT技術に弱いシニア「デジタルデバイデッドシニア」が生まれる要因についても考察しており、先入観・最初のとっかかりがつかめないこと・途中の挫折・身内の言葉の4つをその要因として挙げている。
 第2章「もうシニアたちはつながって楽しんでいます」では、シニアがインターネットを使うことの最大の効果は「孤立」と「孤独」からの脱却であるとし、実際にFacebook等のSNSやポケモンGOなどのソーシャルゲームを通じて交友関係を広げるITシニアたちの事例を紹介している。
 第3章「ITやインターネットは認知症にも役立ちます」では、情報技術の発展によって、認知症の人もインターネットを活用することができるようになったと述べている。認知症には医学的な治療が重要だが、日常生活上のサポートも効果的であり、iPad・iPhoneのメモアプリなどは「記憶に頼らず記録に頼る」生活を実現し、認知症患者の「失われた機能」を補うものだと筆者は説明している。
 第4章~第6章では、シニアが混同しやすいOSの違いやSiriをはじめとするAIアシスタントの使い方などITに関する初歩的な解説をした上で、シニアが活用するべきアプリやインターネットサイトについて幅広く紹介している。また、リタイア後に第2の人生を歩むシニアにとって大切なことは「時間を有効活用すること」と「自分に何ができるかを考え、それを必要としている人にどうやって提供できるかを考えること」であり、それをサポートしてくれるのがインターネットであると筆者は述べている。
 第7章・第8章では、シニアがインターネットを使う際のセキュリティ対策について触れ、インターネット上の写真や仮想通貨といった「デジタル資産」を保管する際の注意点についても解説している。
 第9章「これからシニアの生きる世界はどうなる?」では、人生100年時代となった今、日本のみならず世界各国で高齢化が進行しており、生活の質を低下させることなく社会参加を続けながら年を重ねていく「アクティブエイジング」の活動が世界中で広がっていると説明している。また日本人が長寿な理由として「ソーシャル・キャピタル」という「助け合い」や「お互いさま」といった連帯意識の存在を挙げており、高齢者がそのような他者とのつながりを作るためにもインターネットなどのIT(ICT)が役立つと述べている。
 第10章「一般社団法人アイオーシニアズジャパンとその活動」では、「IoS(Internet of Seniors)」の理念のもと、新しいシニア社会の構築を目指し活動を続けるアイオーシニアズジャパンの主な事業を紹介している。
 
 IT技術が高齢者にどのような恩恵をもたらすか知りたくこの本を読んだが、筆者をはじめ意外にも多くの高齢者がすでにITやインターネットを活用し、交流を深めていること、そしてリタイア後も社会参加を続けていることが分かった。「社会から支えられるシニア」から「社会を支えるシニア」になっていかなければならないという筆者の主張どおり、これからはシニアが持つ多くの知見や技術を貴重な社会的財産として活かすべきだと思うので、今後はその手助けとなるようなIT技術について具体的に考察していきたい。

牧壮 著 ブレインワークス社 2019年12月10日発行

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