書評『キャッシュレス覇権戦争』

本書では、地方でキャッシュレス決済サービスを導入していく動きと、キャッシュレス化が進みすぎた社会の脅威について述べられている。
序章では、2018年のペイペイ祭りについて触れ、QRコード決済の初期コストや手数料の低さから中小商店が導入しやすいものとして紹介している。第1章では、ペイペイ以外のQRコード決済やその他のキャッシュレス決済のサービスについて取り上げ、キャッシュレス化が日本で着々と進められていることを述べている。また、あまりキャッシュレス化の進んでいない地方だからこそ開拓の余地がありQRコード決済により一気に地方からキャッシュレス化が進む可能性があるということも述べている。第2章では、キャッシュレス社会が最初に始まったアメリカを取り上げ、クレジットカードの起源と、キャッシュレス決済中心となった結果、現在のアメリカが信用格差社会になっていることについて述べている。第3章では、キャッシュレス先進国に躍り出た中国を取り上げ、もともとクレジットカードは普及しておらず、デビットカードでのキャッシュレス決済中心だった中国がQRコード決済中心になるまでの過程が述べられている。また、中国でも信用格差社会が始まっていることについて述べられている。第4章ではキャッシュレス化が進むに連れて個人のお金の使い方に基づいて点数化される「信用スコア」が日本でも導入されつつあるということと、大手携帯キャリア会社などがその中心となる信用情報機関になり得ることについて述べられている。そして第5章、終章では、データ監視社会の脅威といかにして身を守るかということについて述べられている。
本書を通じて様々なキャッシュレス決済サービスの比較ができ、地方で導入するならQRコード決済が最も手軽なものであるこというがわかった。しかし、QRコードサービスを提供しているのは信用情報機関であり、使いすぎると個人情報が筒抜けになるだけではなく、お金の使い方によって個人の信用スコアが決められてしまう信用格差社会に発展する恐れもあるということを外国の例を用いて述べられていた。キャッシュレス決済についての詳しい実態と企業の思惑が知れた1冊であった。
岩田昭男 NHK出版 2019年

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