書評 『シェアリングエコノミーがよ~くわかる本』

近年、ビジネス界の中で“従来の経済構造とは全く異なる新しいビジネスモデル”として、シェアリングエコノミー(共有経済)への関心が高まっている。本書は日本で提供されているシェア事業会社25の事例を紹介し、シェア経済への理解を広め活性化させようとして書かれたものである。以下の7章で構成されている。
第1章「シェアリングエコノミーの時代」では、シェアリングエコノミーの定義からその仕組み、市場規模など、基本的な情報を簡潔に述べている。
第2章~第5章では、実際のシェア事業会社を空間、スキル、モノ、移動といったジャンルごとに分けて紹介している。単なるモノを売る通常の企業とは異なり、多様化した新サービスが多くみられることから、シェアリングエコノミーの市場が成長拡大傾向にあることがわかる。
第6章「その他のシェアリング」では、金融、ファッション、情報を扱う事業会社が紹介され、シェアリングビジネスのさらなる多様な広がり方の解説をしている。従来のビジネス手法と根本的な違いがそれを可能にしているとし、その先進性が強調されている。
第7章「シェアリングビジネスの今後と将来性」では、シェアリングエコノミーのビジネスが、従来の既存企業とどのようにつながっていくのか、その将来性について述べられている。
25の事業例を知ることで、読者はビジネスモデルにいくつかの共通点があると気付く。それはわかりやすさ、明確な収益モデルの確立、現場のニーズを把握するスピード対応など。それがビジネス成功の鍵だと著者は結論づけている。
シェアリングビジネスとは人と人とのつながりを最優先するイノベーションビジネスであり、相互の信頼関係の上で成り立つことが改めて分かった。かつてのモノを売るだけの商売にはとどまらない今の時代に、個人の力を発揮しようとする風潮がマッチングしている。今後も消費者のニーズの多様化は加速し、新たなシェアリングビジネスが生まれると確信した。シェアリングエコノミーの基礎から学びたいと思い、この本を選んだが、新しい経済モデルの誕生の背景に、消費者意識、環境意識、社会意識が大きく変わったことの関係も学ぶことができた。日本は先進国に比べ、シェアリングビジネスの普及が遅れている。今後は海外の事業例などに目を向けていきたい。
上妻英夫 著 秀和システム 発行(2018)

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