「ゲーム脳の恐怖」は本当か。

安藤玲子書評『ゲーム脳の恐怖』(森昭雄 著)の論文要約
本書は、テレビゲームが子どもの脳(前頭前野)に及ぼす悪影響や将来的なダメージについて警告を鳴らした一冊。世間の関心は高かったものの、Amazonなどの読者レビューでは批判的な評価が約8割を占めた。先行する川島隆太の研究(2001)と同様に「ゲーム中の前頭前野の不活性化」を議論しているが、森の研究は自己開発の脳波計を用いており、被験者層やゲームジャンルがより幅広い点などに独自性がある。
第1章では、ゲーム中の脳波は痴呆患者のものと類似し、前頭前野の機能低下(「ゲーム脳」)が子どもの脳にダメージを与えると警告。第2章では、脳構造と自己開発脳波計の説明。beta波が低下しalpha波と同レベルになると重度の痴呆状態と判定。第3章では脳の活動タイプを4分類(ノーマル脳、ビジュアル脳、半ゲーム脳、ゲーム脳)。「ゲーム脳」になるとゲームをしていない時も痴呆患者と同じ脳波状態になると主張。第4章〜第5章ではホラー系RPGではbeta波が上昇(緊張状態によるストレス)、リズムアクションゲームでは終了後に前頭前野が活性化(運動が脳の活性に効果的)と記述。第6章〜第7章では前頭前野の機能低下がキレやすい脳をつくる可能性を示唆。スキンシップや自然とのふれあい、昔ながらの遊びや食生活の重要性を訴える。
主な批判点(なぜ世間や研究者から批判されたのか)の
1つ目は、データの信頼性・説明不足。自己開発装置の信頼性や、被験者属性・脳波データの詳細が開示されておらず、著者の主張に都合の良いデータのみが提示されている印象を与える。2つ目は解釈の客観性の欠如で、ゲーム中の「前頭前野の低下」を悪とする一方で、ホラーゲームで前頭前野が活性化すると「緊張しすぎて不健康」と批判するなど一貫性に欠ける。作業中の活性低下と作業後の増加という挙動に対し、ゲームでは「作業中の低下」のみに着目し、運動では「作業後の増加」に着目するなど、解釈が恣意的であるということ。

安藤 玲子, 『ゲーム脳の恐怖』森 昭雄(著)(2002年 NHK出版), シミュレーション&ゲーミング, 2003, 13 巻, 1 号, p. 70-71, 公開日 2020/11/02, Online ISSN 2434-0472, Print ISSN 1345-1499, https://doi.org/10.32165/jasag.13.1_70, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasag/13/1/13_70/_article/-char/ja

 

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