書評「店は生き残れるか」

本書はECの急拡大の中で、どうすれば既存の店舗販売が生き残れるのかについて書かれている。

第一章「ECの拡大が招く閉店ラッシュ」ではECの拡大はこれからが本番で、店舗のショールーム化や閉店ラッシュは加速すると述べている。
第二章「オムニチャネル戦略は反撃の決定打となるのか」ではそうした中で、小売店舗側が「オムニチャネル戦略」に転じ、店舗からECに誘導する「ショールーミング」と、ECから店舗に誘導する「ウェブルーミング」は対立的に捉える必要がなくなったと述べている。この「オムニチャネル戦略」では、在庫と顧客管理の一元化が要であり、在庫が分散し顧客情報も得られないECモール依存を脱して自社EC体制を確立すべきと述べている。
第三章「ECを支えるプラットフォーマー」ではECを支えるプラットフォーマーとしてアマゾンとウォルマート、ファッションECモール「ZOZOTOWN」の説明がされている。
第四章「ラストワンマイルの担い手」ではラストワンマイルの担い手である宅配業界(ヤマト運輸・佐川急便)とアマゾンの関係、クリック&コレクト拠点として中身を確認したり試着してから購入や返品ができる受け取り拠点、「TBPP(Try Buy Pickup Point)」を提案している。
第五章「販物一体が店舗販売を自滅させる」では販物一体流通の欠陥やチェーンストアのECを阻む5つの壁について説明している。
第六章「ポストECのニューリテール革命」ではECが急速に高コスト化し、ECはもはや店舗販売より低コストとは言えなくなってきたと述べ、ポストECのニューリテールとしてハイテク装備の無人店舗とオムニチャネルなショールームストアの二つの方向を示している。そして前者について無人店舗の実態は無人精算店舗に過ぎず、搬入・棚入れ陳列・補充整理などの店内マテハン作業は人手に頼るままで、運営コストの大幅な圧縮は望み難いと述べている。
第七章「省在庫・無在庫のショールームストア革命」では店舗販売、EC共に負担となっているものの多くは在庫にともなうロスとコストと労働であると述べている。その突破口として、在庫を省くビジネスモデルであるショールームストアと受注先行のD2Cについて説明している。

消費者からすればECは便利であり今後も拡大していくだろうが、そのECも高コスト化していることを知った。そのため今後は実店舗がショールーム化するなど新たな形態となり、オムニチャネル戦略を進めることが大事だと感じた。

小島健輔 著 商業界 2018年発行

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