第2章:日本の地熱発電の現状

日本はアメリカ、インドネシアに次いで世界第3位の地熱資源量(約2300万kW)を有している。しかし、全国の地熱発電所の発電設備容量は約54万kW(世界第8位)であり、世界全体(12,653MW)の約4%にとどまっている。また、2015年度末の国内認可出力合計約231GWに対して地熱発電の比率は0.2%であり、資源が十分に活かせていないことがわかる。

日本の地熱発電が十分に活用されていない大きな理由は以下の通りだ。
まずは国立公園の問題だ。
初期の規制では国立公園内の地熱発電は、自然環境保全の観点から厳格に制限されていた。特に国立公園の特別保護地区、第1種特別地域では原則として地熱開発は原則禁止されていた。しかし、2012年には“原則開発禁止”ではあるが第2種特別地域、第3種特別地域の条件付きでの垂直掘削が容認された。さらに2015年では特別保護地区、第1種特別保護地区の地表部での開発は禁止であるが、傾斜掘削であれば第一種特別保護地区への開発は条件付きで容認された。それに付け加え、第2・3種特別保護地区については“原則開発禁止”との文言が外されることとなった。このように国立公園の問題は少しずつではあるが規制が緩和され、以前と比べれば開発はしやすくなっているのではないかと言える。

次に地元住民との協力体制だ。
開発に成功した福島県の柳津西山の地熱開発では建設に移る際、住民が信頼を置いている町役場を仲介に温泉への影響が出た際の補償などを規定した協定書を事業者・温泉組合の三者で交わし、万が一のリスクに対して対策が事前に取られている。一方の開発を途中で断念した熊本県の小国町地熱開発計画では、開発事業者の「温泉に影響はない」といった主張に対し、噴気試験の際に近隣温泉で減衰が確認されたことから、一部の住民に不信感を与え計画は頓挫することになった。
以上のことから、地元住民の協力を得るためには話し合いはもちろんのこと、リスクに対して事前に対応策を用意しておくことの大切さがわかった。

最後に経済的課題だ。
地熱発電は初期投資が他の再生可能エネルギーと比べ高額であることが課題である。太陽光発電は約23.9万円/kW、陸上風力発電は34.7万円/kW、それに比べて地熱発電は170万円/kWと群を抜いて高額なことがわかる。
地下資源の調査や掘削には多額の費用がかかり、開発時期も長期化することがほとんどである。また、日本の地質特性として、活火山帯が多く、掘削リスクが他の国と比較して高い点も費用が高額になる原因だ。

次章ではこれらの課題を克服し、地熱発電を普及させるための具体的な施策について論じる。

 

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