書評「マッキンゼーが解き明かす生き残るためのDX」

本書では変化を好まない日本企業が生き残るためにDXが必要であることを主張しており、日本企業の課題とDXを成功させるために必要なことについて書かれている。著者はマッキンゼー・デジタルパートナーの日本人4名である。マッキンゼー・デジタルはデジタルテクノロジーの力を使い、クライアントのビジネスモデルを変革させるチームである。第1章「産業構造の大きな変化」では、製造業におけるデジタル変革は海外企業で成功例が多いとし、フォルクスワーゲンやロールスロイスの例、また日本での代表的なケースとしてコマツの例も挙げられている。日本の製造業でデジタル変革が遅れている理由としては消極的なIT投資、強固すぎるサプライチェーン、組織のサイロ化だとし、国内でのデジタル動向についてまとめられている。第2章「DXで何を目指すのか」ではDXは従来型の業務改善とは異なるとし、企業変革に何が必要かについて述べられている。1200社以上の調査からわかったDXの成功を阻害する要因について解説した上で企業戦略の再定義について触れられ、後半では前半と同じように学ぶべき事例としてニトリとゑびやの例がまとめられている。第3章「日本企業の足枷と挑戦」ではデジタル化で後れをとっている日本の現状と課題について書かれている。デジタルの重要性を理解はしているものの、経営陣の間でデジタル変革が明確に言語化されていないことが多く、デジタル人材を集めることもデジタル投資を行うことも困難な状況にあることが多いと指摘している。またDXが仮に実行できたとしても日本企業には2025年の壁(レガシーシステム、ブラックボックス化など)が立ちはだかるとし、老朽化したシステムが自社のDXを阻害していると実際に感じている割合は7割にものぼると言われている。企業文化が変わらなければこの状況は打開できないため、組織トップの強いコミットメントが欠かせないことを強く主張している。第4章「DXを成功させるために必要なこと」ではデジタイゼーションとDXの違いについて触れ、DXの成功要因についてまとめている。レガシー脱却とDXを融合させ、経営幹部が主導権をもって進めることが重要だと主張している。また組織文化の変革を行う際に大事なこととして伝統的な大企業においてはマインドセット、スキル、プロセスを変えることの3点があるとしている。企業変革に必要な現状分析をした上で変革の必要性を実感をした上で変革のストーリーを描くことが必要としている。第5章「あなたは、何をすべきなのか」では企業変革を今すぐにでも始めることの重要性を主張している。マッキンゼーではリーマンショック後の20年間の企業パフォーマンスについて比較分析を行い、企業価値が高い企業は共通してDXに継続投資し、人材育成に力を入れていたことが分かった。これを踏まえて後半では具体的に何をすべきかを洗い出している。本書を読み、日本のDXではIT化が目的となってしまっていることがよく分かった。DXの本質を知り、古くなった自社の常識を破壊することで自社の企業価値が高まると感じた。今後は今ある日本の中小企業が生き残る為に具体的にどのようにDXを進めていくべきかを検討していきたい。

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