書評「AIにできること、できないこと」

本書では現在のAI技術では何ができて何ができないのかを実際にAIをビジネスで活用している事例とともに解説している。全5章で構成されている。

第一章「そもそもAIとは何か」では、AIの過去の歴史と今活躍するAIを解説している。AIの歴史では、AIの思考の向上にアプローチした第一次AIブーム、AIに専門家の知識を入れようと力を入れた第二次AIブーム、大量のデータとそれを高速に処理することで知能を向上させた第三次AIブームとして、各時代でできることできないことを説明している。今活躍するAIでは、石油の場所を調べ費用の効率化をはかる「予測系AI」、ペッパーのような人間とコンピュータの情報交換を可能とした「言語系AI」、自動運転や監視カメラなどの画像情報を扱う「画像系AI」、チェスや将棋などのAIの情報処理能力の高さを証明する「ゲーム系AI」といった4つのAIの種類とともに説明している。

第二章「AIの実態」では、著者が、AIが人間よりできること、できないことを解説している。今のAIが人間よりできることは、チェスや将棋で証明された正解へ導く力であると著者は述べる。反対に人間よりできないことは、解決する課題を探す力、何が正解かの判断能力、計画を立てる能力だと言っている。このことから、AIが人間よりできることのほうが少ないと述べている。

第三章「AIの中身」では、近年の主要技術であるディープラーニングと一章で触れた様々なAIについて説明している。ディープラーニングは判断の理由が人間には理解できない、学習に膨大な時間がかかるという課題があげられた。一章で触れた様々なAIでは、AI設計者が正しくプログラミングしないと、AIが仕事をサボったり暴走したりする危険性を述べている。

第四章「AIのビジネスの活用」では、「AIは人間の仕事を奪えるのか」ということに焦点を当てAIのビジネスの活用法について述べている。著者は「AIに仕事を奪われる」という研究結果は9つの技能(手先の器用さ、手先の素早さ、不安定な環境下での作業実施能力、独創力、芸術的能力、 他者に対する洞察力、交渉力、説得力、他者へのサポート能力)の観点からAIに置き換えられやすいということであり、本当に人間の仕事がAIに奪われるかを評価してないと言う。また、このことから、著者は、芸術家のような正解が無い職業が存在する中でAIが人間の仕事を完全に奪うことはないという意見を述べている。

第五章「未来」では、新たな分野から集められた知見が今後のAIの進化を加速させるとし、それによりAIがどんな進化を遂げるかを解説している。脳科学では人間の脳をそのままロボットに繋げる方法が実現されている。また、量子コンピュータという分野では今までのコンピュータにはできなかった複数の選択肢を同時に調べることが可能になり、近いうちにそれがAIにもできるようになると述べる。このことから、著者はAIが人間の仕事を完全に奪うような要素はまだなさそうだが、これから技術発展していく中で人間にとって代わる範囲を広げていくことに間違いはないと述べている。また、あくまでAIは人間を助けるために生まれたため、AIの長所と短所をよく理解し、共同作業していくことが大事だと述べる。

人間にできてAIにできないこと、AIにできて人間にできないことを知りたいと思いこの本を選んだ。AIを正しく理解し、人々が安心できる使い方をすることがAIとの向き合い方だと改めて感じた。AIは悪い方向にも良い方向にも使えるので使い方を間違わないようにしなければいけないと思った。

藤本浩司 著 日本評論社 2019年2月25日発行

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