書評「アメリカの大楽観時代が始まる~中国とイランは既に敗れた~」

本書は在米ジャーナリストの著者がトランプ大統領の強気な政策によってアメリカの経済が拡大し続けている事実と、それによってアメリカ全体に広がっている楽観について述べたものである。

一章「楽観論がアメリカの株を買う」
アメリカ国民は民主党を叩き潰し、中国を捻じ伏せたように見えるトランプ大統領の「戦う姿勢」に共感し、本来小康状態に落ち着くと予想されていたアメリカ経済を常識外れの政策によって彼が引っ張っていると感じている。実際、数字の上では世界と比べアメリカ経済は突出しているため「今日よりも明日良くなる」という楽観がアメリカ国民を株や住宅の購入に走らせアメリカに新たな繁栄をもたらしている。

二章「アメリカは中国に勝った」
関税をめぐる中国との争いで強気の姿勢を曲げなかったトランプ政権に、中国に追い越されるのではないかと感じていたアメリカ国民は不安を緩和された。また、この争いを足掛かりにアメリカは中国の国そのものに攻撃をしかけており資金を減らされた今中国政権は揺らいでいる。

三章「イランの崩壊が始まる」
トランプ政権によるソレイマニ司令官殺害をはじめとした軍事的牽制、経済制裁でイランは窮地に立たされている、そして、技術の発達によって簡単に石油や天然ガスが採掘でくるようになったことで中東に依存していたエネルギー事情が変わりつつあることで世界の強国は産油国の保護をしようとしなくなる。その結果、中東は自らの身を守るため核を保有しようとしているのである。

四章「トランプは韓国を見捨てる口実が欲しい」
トランプ氏は韓国に軍を駐在させていることについて「何の見返りもないのにアメリカは韓国に騙されて守らされている」として引き揚げさせたいと思っている。その口実として北朝鮮の核保有問題を解決しようと中東と比べ妥協的な姿勢で交渉に臨んでいるが朝鮮半島は信用ならないので失敗する公算は高い。

五章「強いアメリカの世界が広がる」
現在のアメリカはすでに述べてきたように大楽観時代に入り、政治的にはタガが外れたような状態になている。しかも社会をまとめてきたマスコミ、政治を密かに動かしてきたCIAが機能しなくなっているため、中国との戦いに勝ちながら、国内政治が混乱している。逆に言えば冷戦に勝ち経済でも一人勝ちのアメリカは、それらの力が無くとも国家は機能し、国民は楽観主義に浸ることができる。

六章「トランプ再選で世界が変わる」
前例のない好景気の後押しを受けトランプ氏が再選するのは確実のように思える。また、米政権が貿易交渉において中国から妥協を引き出したことで習近平氏は政権維持が難しくなっている。それらの結果としてトランプ大統領の「強いアメリカを再建する」とりう政策は確実に成功しつつあり、中国は今やアメリカと敵対することは到底できない。「アメリカ第一主義」はアメリカの世界を広げ、強いアメリカが行動する世界が果てしなく広がり始めている。

トランプ大統領に批判的な書籍が多い中で、好意的な観点として本書を選んだ。アメリカ在住と言う立場故か、中国や朝鮮半島への侮りが透けて見える文章が多く、またアメリカの悪い部分を全てオバマ元大統領にの責任として押し付けようとする傾向にが散見されたが、自分と全く違う意見として興味深かった。次回はもう少し個別の事件について細かい意見が述べられた書籍を調べてみるのも面白いかと思う。

日高義樹 徳間書店 2020年2月29日発行

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