書評「小売再生 リアル店舗はメディアになる」

本書は今、多種多様なデジタル技術が実店舗から次々に客を奪っていると言われている中で、今後小売業界はどのように変化していくのかについて述べられている。
第Ⅰ部「小売りはもう死んでいる」では現在ネット通販市場は急成長しており、アマゾンやアリババの後からも続々とベンチャーが誕生していると述べられている。アメリカでは全ショッピングモールの3分の1がまもなく破綻する見通しである。消費者はオンラインでの体験に慣れた結果、オフラインでの体験にもそれを求めるようになっていると述べている。
第Ⅱ部「メディアが店舗になった」ではメディアは最初の情報の伝達を担い、店は最後の商品配給の場という構図が上下反転してメディアが商品配給の場=店になりつつあると述べている。そして従来、店が担っていた役割をメディアが兼ねるだけでなく、店をはるかに上回るようになるだろうとも述べている。その例として、ダッシュ補充サービスやチャットボット、VR、3Dプリントについて説明している。
第Ⅲ部「店舗がメディアになる」では消費者はモノではなく体験を求めるようになっており、実店舗の目的はもはや商品を売ることではないと述べている。今後、ショッピング空間の目的と狙いは、商品に関わる「体験」を流通させることにあり、将来的にはフィジカルとデジタルの区別をしなくなり、両者を融合させたフィジタル体験を生み出せる小売業者こそが、最も優れた存在になるとも述べている。
第Ⅳ部「小売再生戦略」では未来の小売店をつくるには、小売が自ら変わる必要があると指摘している。何ら面白みがなく、いつ見ても変化のない実店舗は消え去る運命にあり、いつも変化に満ちていて魅力あふれる未来のショッピング空間が登場する。小売の全体的なビジネスモデルはつくり直しになり、仕入れ先であるメーカーが客になり、小売業者は熟練の体験メディア・エージェンシーになる。これが小売りの未来であると述べている。
小売が今後どのように変化していくのかを知るためにこの本を選んだ。今後、実店舗は棚に並んでいる商品を買うだけの場所から、実店舗でしかできない体験という価値を消費者に提供する場所になることが必要だとわかった。そうしたことから形態は違えど、実店舗がなくなることはないだろうと感じた。

ダグ・スティーブンス著 斎藤栄一郎訳 プレジデント社 2018年

カテゴリー: 新聞要約   パーマリンク

コメントを残す