本書では経済アナリストである作者が静かなる危機と形容されている日本の人口減少と、これから更に発展するAIがもたらす問題について考え、それに対する解決策が書かれている。
第1章「人口減少という静かなる危機」ではタイトル通り、現在の日本で静かなる危機と言われている人口減少について書かれている。作者は少子化の要因を生き方の多様化、高学歴化、経済的な制約、子育て環境の未整備、子育て費用の拡大、若い世代の東京への一極集中の6つを挙げており、中でも東京への一極集中が大きな要因ではないかと見ている。第2章「私たちの社会はどう激変するのか」では社会保障費が膨らむ2025年問題と2042年問題の解説から始まる日本の社会保障費の赤字について書かれている。作者はこの問題を解決するためには定年を引き上げ、消費税を上げる事が必要と見ている。第3章「破壊的イノベーションは何をもたらすか」ではAmazonの台頭によって小売店が激減しているという文から始まり、AIが如何にして雇用を奪うのかを解説している。深層学習により発展したAIを生物が眼を持ち始めたカンブリア大爆発と喩え、AIのさらなる発展により多くの仕事は奪われるだろうとしている。その奪われる仕事の中には銀行員、弁護士や公認会計士といった士(さむらい)業、更には医者もAIに取って代わられる日が来ると述べている。続く第4章「私たちの仕事はどう激変するのか」ではこの技術革新により2020年の東京オリンピック後には失業者は激増するのではと書いている。第5章「人口減少に打ち勝つ方法はあるのか」では企業、自治体が行なっている少子化対策の具体例を挙げている。第6章「AI社会とどう向き合うべきか」では来たるAI社会で大切な事は人間にしか出来ない複雑さを身に付け、AIと闘うのではなく、共生すべきであるとし、本書は終わっている。
本書では人口減少とAIが社会に与える影響、特に雇用について書かれており、人口減少は自身の研究の対象外ではあるものの大変興味深い問題と感じた。また、AIの発展と雇用の問題は密接に結びついている事を改めて感じさせられた。これからは雇用以外の影響について調べていきたい。
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