【書評2】奇跡の3年2019・2020・2021ゴールデン・スポーツイヤーズが地方を変える

2019年にはラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック・パラリンピック、2021年には関西でワールドマスターズゲームズが開催されることが決まっている。本書では、このことをゴールデン・スポーツイヤーズとして捉え、地方都市が抱える積年の課題を解決するための好機として活用していくためのアイデアについて、様々な角度から国内外のとりくみじれいを紹介し、これからの地方が行うべき取り組みを提言していくため、以下の8章で構成されている。
第1章 「ゴールデン・スポーツイヤーズで地方が目覚める」では、まず各メガスポーツイベントの意義を説明し、健康寿命延伸、スポーツを通じた親日国作り、スポーツを通じた地方創生などの地方への波及効果について論じている。第2章「ゴールデン・スポーツイヤーズとしてのレガシー」では、消費拡大などのインパクト思考から、”次の世代への贈り物”となるレガシー思考へと価値観が移ってきていることに注目し、過去の五輪の事例をもとに正と負の側面があることを説明し、第3章「ビッグ・スポーツイベントを活かした地域づくり」では、地方の地域活性化への取り組みとしてキャンプの誘致と文化プログラムを挙げ、ポイントを説明している。第4章「取り組みが始まっている、スポーツによる地域づくり」では、様々な事例を通して、民間と提携したスポーツ活用による地域づくりの取り組みを紹介した。第5章「海外との関係強化を推進する地域」では、観光立国を実現するために重要となる大会観戦客への対応や、未来へのショーケースとしてのPRの取り組みについて論じ、第6章「ビッグ・スポーツイベントで成長する人」ではスポーツイベントを通じた人材育成や教育への活用、アスリートのセカンドキャリア問題にも言及した。第7章「ビッグ・スポーツイベントをきっかけに進む全員活躍社会」では地方の課題の一つである、アクティブシニアの創出や多様な価値観を認め個人が排除されない社会をつくるインクルージョンの実現に向けた取り組みに対するスポーツイベントの関わりについて論じ、第8章「”ゴールデン・スポーツイヤーズ”の地方活性化への活かし方」では総括として今そこにある危機として地方の真の課題は何かを”人””富””心”の3点から示し、自治体がゴールデン・スポーツイヤーズを活用して持続可能で長期的な視点から取り組んでいくことの重要性を論じている。
スポーツを通して地方活性化を進める上で、大きな好機である東京五輪の開催を中心とした、国際的なスポーツイベントとスポーツツーリズムとの関係性を知るためにこの本を読んだ。様々な事例を示しながら論が進められているため、具体的なイメージを思い浮かべながら読み進めることができ、産官学民それぞれが当事者意識を持つことや長期的で持続可能な取り組みをしていくことが大切だと感じた。卒業論文のテーマを具体化する上で大きな影響を与える一冊となった。

2015年12月刊行 間野義之 著 徳間書店

カテゴリー: 新聞要約   パーマリンク

コメントを残す