【書評】スポーツツーリズム・ハンドブック

まず、「スポーツツーリズム」とは、スポーツと観光との融合により人を動かす仕組みづくりのことである。本書は、新しい概念であるスポーツツーリズムの日本における知識体系の教科書化を目的とし、スポーツツーリズムを学ぶ学生や社会人の入門書として書かれた本である。
第1章「スポーツツーリズムとはなにか」では、スポーツツーリズムという言葉が日本で広がってきた過程、現状や、数年後に立て続けて国際規模のスポーツイベントの開催を控え、興行団体と自治体とを繋ぐインターフェースの役割を果たすスポーツコミッションの設立が各自治体で進められてることが説明されている。第2章「スポーツツーリズムには誰が関係しているのか」では、スポーツツーリズムの基本的構造について論じられ、スポーツツーリスト、輸送機関、スポーツアトラクション、旅行業、サービス業など様々な立場の人や産業が混合することにより成立していることが説明されている。その中で、ツーリストのニーズを掴むことが重要となり、マーケティングの発想をもってターゲットを明確にし戦略的な取り組みをしていくことが求められている。第3章「スポーツツーリストはどのように行き先を決めているのか」ではツーリストの視点にたって、ネットの発展などにより行動モデルが変化してきたことや、経験価値の重要性を指摘している。第4章「スポーツイベントのマネジメント」・第5章「スポーツイベントツアーのマネジメント」では、運営する側の視点でイベントやツアーを企画していく手順について論じられており、統率役としてのプロデューサーの必要性や、産業間に跨ったコンテンツ手法であること、イベントの開催は目的ではなく手段であることなどが説明されている。第6章「地域活性化とスポーツツーリズム」では、全体のまとめとして、スポーツツーリズムの地域的効果やマイナスの側面、活性化の核となるスポーツコミッションの役割、地域ブランディングの重要性について改めて論じられている。
スポーツツーリズムについての知識を深め、活用事例を知るためにこの本を読んだ。入門書として書かれた本であるため、昨年読んだ本と被る部分もあり、より理解を深めることができる一冊となった。昨年読んだ本を含めた2冊を通じて、メガスポーツイベントである東京五輪の開催がスポーツツーリズムを語る上で大事な契機となっていると感じたため、次は五輪と地方活性化の関わりについての本を読むこととする。

2015年8月刊行 日本スポーツツーリズム推進機構 編 学芸出版社

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