P58〜70 要約

・知識処理と第二次AIブーム

1980年代、しばらく低迷していた人工知能の研究が息を吹き返し、第二次の人工知能ブームが起きた。

第一次の人工知能ブームのキーワードが「論理」だったのに対し、第二次のキーワードは「知識」であった。人間は問題を解決し意思決定を行う時、たしかに筋道を立てて論理的に考えようとするが、それはあくまで過去の社会的経験に基づく知識を踏まえたものである。つまり、「論理」だけでなく、「論理プラス知識」が必要であるという発想が出て来たのである。

また、1980年代には集積回路の規模と密度が向上し、かなり大きな記憶装置と強力な処理装置をそなえた汎用大型コンピュータが登場していた。これを活用して「論理プラス知識」の人工知能を実現しようという試みが第二次人工知能ブームとして開花し、これは「知識工学」という名前で呼ばれた。

しかし、人間の知識の大半は絶対的な正確さを持っているわけではない。とすれば、曖昧さの残る知識に基づいてコンピュータで厳密な演繹推論をしても、下手をすれば「風が吹くと桶屋が儲かる」といった珍妙な結論を導いてしまう恐れがあるのだ。コンピュータで知識と論理を組み合わせればどんな問題も解決する、といった発想は安易すぎると言えるだろう。

・第五世代コンピュータ開発プロジェクト

1980年代、当時の通産省のリードのもと、第五世代コンピュータ開発プロジェクトが実行された。これは「人間の言葉を理解し、人間とコミュニケートしながら問題を解決するコンピュータ」の実現を目指したものだった。しかし結果として、第五世代コンピュータ開発プロジェクトは大失敗だと位置付けられてしまう。

それはなぜか。ここでの難問は、人工知能には文脈がつかめず、問題の論理的なフレームが明確にできないという点である。にもかかわらず、当時の関係者、特にリーダーたちは知識や論理、そして言語コミュニケーションというものに対する洞察を欠いていた。そしてひたすらに、推論の効率向上のための、並列推論マシンの実現というコンピュータ工学的な技術課題に取り組んでしまった。このように明後日の方向にスタートを切ってしまったことから、第五世代コンピュータ開発は失敗であったと位置付けられたのである。

 

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