【書評】フードバンクという挑戦 貧困と飽食のあいだで

本書は日本のフードバンクのシステムがどのように作られたかを、日本で初めて本格的なフードバンク活動を行ったといわれるチャールズ・E・マクジルトンの生い立ちから現在に至るまでを通じて述べている。
フードバンクの原理はいたってシンプルなもので、まだ十分食べられるのに、売り物にならないとされてしまい捨てられてしまう食品を預かり、児童保護施設など、経済的に難があり、食料の補給に苦労している企業、個人に分け与える活動を行っている。もともとはアメリカ発祥のもので、40年ほど前にジョン・ヴァンヘルゲンが、スーパーのごみ箱をあさっている主婦を見つけて考え始めた。年々協力者が増えてきて、現在アメリカではボランティアといえばフードバンクと思いつくぐらいに主流なものとなっているという。チャールズ・E・マクジルトンはそんな中でアメリカの裕福ではない家庭に生まれ、一日食べるものがないような生活を営んでいた。そしてマクジルトンは成人し、日本で会社員として働いていたが、その中でボランティア活動に巡り合い、2000年にフードバンク設立を志す。そして2002年に日本で初めてフードバンクが作られ、日本では現在20以上のフードバンクができた。現在企業と連携した動きもあり、ニチレイでは毎朝決まって冷凍食品を乗せたトラックが150台ほど関東圏の問屋に運ばれるが、その中でも5、6ケースはフードバンクに送られている。企業としても、廃棄コスト節約、コストをかけずに社会貢献ができる、消費者に対するアピールとしてやくだつなどのメリットもあり、提携する企業も年々増えている。デメリットとしては、ボランティアとしての活動なので、給料が出るわけでもなく、むしろ寄付金を募っている中で、フードバンクは栄えていくのかという問題も抱えている。
食品ロスに対しての一例として読んだが、改めて改善が難しい問題だと感じた。フードバンク自体のボランティアとしての活動の限界など、根本的にどうしようもない問題もあり、改めてフードバンクというシステムも見直す必要があるのではないかと感じた。また、企業が食品の安全性をかなり重視していることもわかり、食品ロスを企業が減らすのも現実的に難しいことも感じた。全体を通して、安全性を重視する日本の特色を改めて考えさせられた。

著者大原悦子
岩波書店 2008年出版

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