「書評:格差をなくせば子どもの学力は伸びる」

本書は、国際学力調査でトップクラスの成績を修めるフィンランドの教育について、筆者が実際に現地の小中学校で取材した様子が記されたものである。
2003年に行われたPISA(国際学力調査)のフィンランドの成績を見ると、高得点であるとともに、他国より国内の学力格差が低いことが分かる。この結果は高学力と教育における平等が両立しているといえる。その成功の裏にはフィンランドの教育の特徴である、「平等」と「個性」にあるという。フィンランドは他のOECD諸国と比べ、社会的背景が教育に及ぼす影響が少なく、教育制度が全ての生徒に平等に機会を与えることに成功しているといえる。また、「個性」においては、一つひとつの授業が早急に答えを求めるのではなく子どもたちの思考過程を大切にする教育法に表れている。それを可能にしているのは教育の権限のほぼ全てが、国ではなく現場にあることである。教育の分権化が子どもたちの個性を伸ばす授業へと繋がっているのである。最終章では翻って、知識詰め込み型の教育が日本に根付いた歴史が記され、それを批判している。
実際の学校の授業風景を写真付きで細かく書かれていて、フィンランドの自由な教育というものがよりイメージしやすかった。ガムを噛んでウォークマンを聞いているカップルがいても、他人の妨害をせず授業を聞いているので、教師は批難しないという個人を認める教育法の許容範囲の広さには驚いたが、こういったある種のゆとりのある教育は日本も参考になるのではないかと感じた。

「格差をなくせば子どもの学力は伸びる」
福田誠治 著
2007年7月22日 亜紀書房

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