書評 amazon「帝国」との共存

本書はアマゾンの戦略について、様々な事例とともに紹介されており、そしてライバル企業たちが今後アマゾンに飲み込まれることなくビジネスを展開するためのヒントが記されている。

第1章「アマゾンの世界」ではアマゾンがオンライン書店から世界最大の公開会社の1つに成長したことを説明し、そして今、実店舗とオンラインストアの統合を加速させていると述べている。第2章「なぜアマゾンは別格なのか?」ではアマゾンの3本柱であるマーケットプレイス、アマゾン・プライム、AWSなどについて説明し、アマゾンがそもそも小売業者にあらず、他社と一線を画して当然だと述べている。第3章「アマゾンの最高傑作プライムの脅威」ではプライムが現在サービスの幅を広げ、「アマゾンへの最高のゲートウェイ」としての役割を担っていることを説明している。第4章「小売はアマゾンによって駆逐されるのか?」eコマースの成長が一部の実店舗型チェーンを犠牲にしている事実は否めないとしながらも、そのすべてがアマゾンのせいか?という問いを否定している。小売市場は成熟期を迎え、店舗の過密化が進んでおり、加えて人々の支出傾向は物品よりも体験へと傾き始めたと述べている。第5章「EC専業企業の生き残りへの道」では買い物習慣の変化により実店舗の閉店が今後加速することを述べつつも、全世界の小売総売上の90%が実店舗で起こっていることからそのビジネス自体が末期を迎えているわけではないと説明している。むしろオンラインとオフラインのバリアをテクノロジーが解消するにつれ、脆弱さを増していくのはEC専業小売だと述べている。「オンラインからオフラインへ(O2O)」という動きはトレンドとして広く認知されるようになり、その例としてアマゾンのアマゾン・ブックスや実店舗のアマゾン専用返品窓口などについて説明している。第6章「いまだ果たされない生鮮食品への野望」では食品小売業はアマゾンにとって、高頻度購買の領域へ足を踏み入れるために欠くことのできない要素としている。そして生鮮食品の配送サービスであるアマゾン・フレッシュや即日配送サービスプライム・ナウについて説明している。第7章「ホールフーズ買収によるリアル店舗新時代へ」ではアマゾンがホールフーズ買収にいたった根拠と背景について説明している。第8章「圧倒的に有利なプライベートブランドの破壊力」ではアマゾンのプライベートブランド戦略について説明している。第9章「テクノロジーが変える私たちの消費行動」ではアマゾンのAWSや1‐クリックなどについて説明し今後もテクノロジーによって買い物のプロセスをより速く、直感的なものにするため、これからも邁進を続けるだろうと述べている。第10章「AIと音声が見せる小売りの新たなフロンティア」ではアレクサを例にあげ、AIと音声が今後消費者に機能性と同時に娯楽性もショッピングにもたらすため重要だとしている。第11章「未来のストアのデジタルとフィジカル」では店舗ベースの小売の多くが売り上げの伸び悩みやスペースの過密といった問題に直面する一方で、デジタル主導型の事業者は、物理的スペースを確保する重要性を認識していると述べられている。第12章「経験を売る未来のストアが生き残る」では店舗はもはや商品を購入するためだけの場所ではないと述べられており、食事の場、仕事の場、娯楽の場などを例に説明している。第13章「ラストワンマイルで顧客を勝ち獲る闘い」では今後の店舗の役割はオンラインのフルフィルメント拠点であると述べている。第14章「アマゾンはピークを迎えたか」では提供するすべてのサービスにおいて顧客を中心に据えるアマゾンは顧客にあらゆるものを提供する企業になったと述べている。そしてこのデジタル時代を生き抜くのは、このアマゾン時代でレリバンシーを確実に保ち、顧客のニーズを常に把握し、それを満たすことができる小売業者であると述べている。

アマゾンがどんな戦略をとって現在にいたったのか、そして今後ネット通販とリアル店舗がどのように変化していくのか、そのヒントを得たいと思いこの本を読んだ。現在はスマートフォンなどテクノロジーの発展により小売業が変革を迎えていることが分かった。消費者の支出傾向が物品から体験へと移行していることから、今後はネット通販のリアル店舗、互いが協力するすることが重要だと感じた。

ナタリー・バーグ/ミヤ・ナイツ著 フォレスト出版 2019年

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