3章 遺伝子組み換え食品

狂牛病に続いて食の安全を脅かしたのは遺伝子組み換え食品である。遺伝子組み換えとは、DNAレベルで生物の品種改良を行う技術である。遺伝子組み換え食品は、その遺伝子組み換え技術を利用した作物や商品の事であり、利点として以下の3点があげられる。

1.栄養に優れた作物や日持ちのする作物など消費者のニーズにあったものができる。

2.低温・乾燥・塩害などの不良環境や病虫害に強い農作を作ることで食糧問題解決に繋がる。

3.病虫害抵抗性を付与することによる農薬使用量の減少で環境破壊を防げる。

一方で、長期的な安全が確認されていない不安要素が問題点としてある。しかし、短期的な安全は確認されている。

例として、健康食品として販売されていた必須アミノ酸の一つである「L-トリプトファン」を食べた人が、「好酸球増加筋肉痛症候群」という症状を起こしました。1988-89年にかけて判っているだけでも米国を中心にして約1600人の被害者を出し、そのうち38人が死亡するということがありました。その「L-トリプトファン」製剤は、日本の企業が遺伝子組み換えをした細菌に作らせて製品化したものでした。予想外のタンパク質が生成され、それがある体質の人に作用したという事があった。

他にも、企業による種子市場の独占や遺伝子組み換え作物は環境に良くないといった問題点がある。種子の独占が起これば、1つの企業による種子市場の価格コントロールや単一作物に世界が頼ることになります。

上記の不安から、日本では遺伝子組み換えが安全か危険かは消費者が決めるべきであるという考えが生まれます。選択権として2001年4月から表示義務と安全審査を行っています。日本では、遺伝子組み換えである、遺伝子組み換えでない、遺伝子組み換え不分別の3パターンがあり、遺伝子組み換えでないと表示されても混入率が5パーセント未満なら表示可能である。EUでは0.9パーセントであり、人の口には直接入らない家畜の餌にまで表示義務がある。遺伝子組み換えでないは、表示するかは自由ですので、5パーセント未満なら、どの企業も表示すると思われるし、EUに比べて徹底されていない。

また、表示義務の対象外というものもある。遺伝子が食品になる段階で壊されていて検証不能なものが当てはまります。遺伝子組換え技術を用いて生産された作物のうち、日本で食品としての流通が認められているのは、大豆(枝豆、大豆もやし含む)、とうもろこし、じゃがいも、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜の7種類である。こうしたものも、しっかり表示しなければフェアでないと思います。

アメリカでは科学的に遺伝子組み換え作物が全く含まれないというデータを集めないと「遺伝子組み換えでない」と表記できないことになっている。なぜなら、「遺伝子組み換えでない」と表示された製品が必ず安全であると誤解を生んでしまうからです。

TPPが日本で可決されれば世界のさまざまな基準の食品が日本に入ってきます。その中で、食の安全を守っていくには、国同士で統一されたEU並みの厳しい規制が必要だと思います。

参考文献

遺伝子組み換え食品の「リスク」 三瀬 勝利   日本放送出版協会 2001年3月

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