書評 ネットフリックスの時代

本書はネットフリックスに代表される月額固定料金による見放題型の映像配信、通称SVODを切り口に、スマホの普及によるライフスタイルの変化が我々の生活にもたらす影響について述べているものであり、以下の6章から構成されている。

第1章「ネットフリックスの衝撃」では、ネットフリックスが『宅配ビデオレンタル』から『定額制ネット配信』へビジネスモデルを移行させていった動きについて述べ、また、マルチデバイス戦略や『ハウス・オブ・カード』に代表されるオリジナルコンテンツの配信により、現在においてネットフリックスは世界最大のVOD業者だということを解説している。第2章「迎え撃つ日本のSVOD」ではネットフリックスの上陸でSVODへ注目が集まるようになった中、日本での同種のサービスの広がりについて『dtv』や『Hulu』を中心に述べている。第3章「テレビを見ない時代とイッキ見」では、最も身近なメディアがスマートフォンとなった今、テレビの視聴率が下がっており、その理由としてテレビ番組を楽しむには毎週同じ時間そこにいなくてはならない習慣性が必要であること、逆にスマートフォンによる配信では見逃し配信や常にイッキ見が可能であることを述べている。第4章「音楽でなにが起こったか」では、音楽業界ではCDからダウンロード、ストリーミング・ミュージックへと需要が変化していると述べ、映像と同じくテクノロジーの進化による視聴行動の変化が、大きくビジネスモデルを揺さぶることになると指摘している。第5章「データがテレビを変える」では、ネット配信によりコンテンツを見つけてもらうのが困難な中で、レコメンド機能が大事であるとともに、そこで必要とされるあらゆるデータというものがおおよその利益や費用を決定づけ、コンテンツの中身へも影響を及ぼしていると述べている。第6章「イッキ見と放題で変わるコンテンツ」ではネット配信ではコンテンツが見放題になるので、作品の在庫リスクというものが極めて小さく、後に発掘される可能性も高まるのでコンテンツの寿命が伸びると述べている。また、オリジナルコンテンツ配信に合わせたイッキ見の活用も新たな施策として有効なものであると付け加えている。さらに、多様化に伴うコンテンツへの触れ方の変化が今起きている事の本質であり、販売方法などを考える時期に来ているが、コンテンツの中身がよくなければヒットしないという原則は変わらないとの指摘もしている。最後に、SVODによりディスクは死ぬのかという疑問に対して筆者は、人々はさまざまな条件によってメディアを使い分けるものであり、SVODはあくまで生活の中で静かに離れていく顧客を引き止めるもの、新しい消費スタイルを生み出すが、何かを破壊するものではないと結論づけている。

配信というものが進んできている今、自分には未だ身近であるCD.DVDというものはどうなっていくのかという疑問からこの本を選んだ。ネット配信が広がるまでの流れや、それに対しての企業の選択、また、当初の疑問であったCD.DVDの行く末についても理解できる一冊だった。

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