卒論8

CSゲーム、PCゲーム、モバイルゲームとそれぞれのプラットフォームを見てきたが、特にモバイルゲーム市場においては、プラットフォーマーと開発者の問題が顕在化している。

要因の1つとして、現在の市場規模が考えられるだろう。
モバイルゲームは世界のゲーム市場において大きな割合を占めている。
2021年の世界のゲーム市場においては約52%(約12兆円)、日本国内で見ると市場の約70%(約1.4兆円)となっており、今やゲーム市場の根幹を担う存在だ。
他のゲームコンテンツよりも圧倒的に大きな市場規模は、ビジネスの上で強力なマーケットであり、各ソフト開発会社が目を向けるのは当然である。
だからこそ、ビジネスをする上で障壁となる手数料などの条件・制限が疎ましく思えるのだろうと考える。

ビジネスという面でモバイルゲーム市場は規模や参入の容易性という面で非常に魅力的であるからこそ、多くの開発会社・個人開発者が参入してきている。
そういった意味で、モバイルゲーム市場は声が集まりやすい、また声が上げやすい環境であり問題が顕在化しやすいこともあるだろう。
モバイルゲーム市場におけるプラットフォーム、たとえばApp StoreやGoogle Playはある種ゲーム専門のプラットフォームではなく、ゲーム以外のモバイル端末向けアプリケーションも取り扱われており、多角的な分野からその責任を追及される。

そして、これからの成長への期待も要因であると考える。
前述した通り、イギリスの市場調査会社大手のGlobal Data社2027年には市場規模は2倍になると予想されており、プラットフォーマー側の設定に不満を持つことはその期待感からの警鐘とも表現できる。

また、ゲーム業界の30%の手数料が適切ではなくなってきていることも要因だと考える。
先のプラットフォームについてで紹介した、手数料課金モデルを採用しているプラットフォームが採用する手数料割合は10%や8%などがほとんどであり、ゲームプラットフォームの『30%』という手数料が業界に浸透しているのは稀な例で、同様の手数料を強いているのはYouTubeやTwitchの投げ銭の手数料など、これらもゲームに関連するものだ。
これに対して、特にApp StoreやGoogle Playはプラットフォーム上にゲーム開発者以外のアプリケーション開発者も参入しており、それぞれの業界では無かった一律30%という数値に違和感を覚えるのだろう。実際、Epic GamesとApp Storeの一件には、NetflixやSpotifyもEpic Games側の意見に賛同し、この動きを指示している。
つまり、ゲーム以外の開発者にとって今までのゲーム業界における『30%』の手数料が他分野他業界では普通ではないのである。

以上の要因から現状ではモバイルゲーム市場でプラットフォーマー側と開発者側との対立が顕在化していると考える。

敷衍して考えると、私はこれがモバイルゲーム市場だけの問題ではないと考えている。

最大の争点としてあるのは、やはり手数料問題だ。現状では、PCゲーム、CSゲームにおけるプラットフォームにおいても30%という手数料が設定されている。
これからゲーム市場全体の拡大に伴い、これらの市場も成長する、参入者が増えることを考えるとこの一律の手数料が必ずしも適切ではなくなり、むしろ阻害の要因となると考えている。

開発にかけた5年のうち、その3年を開発者2名体制で作られ、PCやCS機向けに発売されたゲーム、『天穂のサクナヒメ』(2020年11月12日発売)が発売から約半年後の2021年6月24日には世界累計販売本数100万本を突破したことで、昨今個人のゲーム開発者や、インディー団体としてのゲーム開発の話題に脚光を浴びることになった。
これらモバイルゲーム以外を制作する小規模開発者にとって、売上がたってもその3割をプラットフォーム側に徴収されるということは、続編や新規のタイトルの作成における資金の面で阻害要因となる可能性は非常に高い。つまり、30%という手数料が圧力になるのは、モバイルゲーム開発者だけではない。
開発者だけでなく、VRゲーム等に代表されるゲームにおける新しい分野についても今後これらのプラットフォームで取引が生じることとなると、折角の新技術が資金の面で苦戦を強いられることになりかねないと考えている。

現在、ゲーム業界だけでなくあらゆる分野でプラットフォーマーとその利用者の対立は生じているが、世界的に解決には至っていない。

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