書評2025年、人は「買い物」をしなくなる

著者は東証1部の経営コンサルティング会社を経て、いつも.を共同創業。同社はEコマースビジネスのコンサルティングファームとして、数多くの企業に戦略とマーケティング支援を提供している。デジタル消費トレンドの第一人者として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、ブランド企業に対するデジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。

第1章では買い物の体験の変化を過去の変遷と現代の事例をもとに解説している。買い物のプロセスが省略されることで買い物に使う時間が極限まで短縮されるということを指している。また顧客が買い物に求める価値が変わってきて体験価値を提供できない店舗は消えていくと予想されている。

第2章では日本のショッピングの歴史を事例をもとに解説している。買い物時間は買い物の時間が従来の百貨店やスーパーなど時間を多く使うものからインターネットショッピングに移ることで短縮されている。これはスマートフォンがもたらした情報へ直接つながることができることの影響がある。つまり商品棚が手元にきたのだ。ショッピング史は棚の奪い合いだった。そこに現在の潮流である自分で選択することを減らすことへのシフトが相まってデジタルでの買い物がどんどんシェアを拡大していると述べられている。

第3章ではリーディング・カンパニーが時代にどのように対応するべきかが書かれている。現代人は忙しい。だからこそ時間を生み出すことは非常に価値が高いものとなった。時代は商品棚の奪い合いから時間の奪い合いへと移っていった。そしてより「消費者の時間を作る」商品が好まれることになっていくだろうとされている。

第4章ではデジタルシェルフについて詳しく解説されている。商品棚はデジタル上に存在しリアル店舗よりもオンライン上の一等地に並んでいることが重要になった。また今後はデータドリブンによって無意識の買い物が始まると予想している。

第5章では買い物時間が0秒になった世界について書かれている。買い物は自分で選ぶものではなく人かAIが薦めたものを選ぶようになる。起きてから寝るまで最適なサービスが提供され続けていつでもバーチャルコンシェルジュが帯同しているような状態になるとされている。そして人は選択をしなくなり、決済のみを買い物の際には判断するだけでいい世界が日本でもできるかもしれないと論じている。

ショッピングの構造自体が変化していることが本書でわかった。その根底にはライフスタイルの変化があり、デジタル化が遅れているという日本でも避けられないと感じた。これからの時代は個人情報が筒抜けになるリスクを受け入れる代わりに革新的でよりパーソナライズ化されたサービスを受けざるを得ない時代になっていくと考える。中国の信用スコアに基づいた世界が当たり前になるかもしれない。良くも悪くも新しい当たり前が作られていくなかで10年後を見据えて行動していく大切さを本書から学んだ。

2025年、人は「買い物」をしなくなる望月智之 著 2019年11月15日 クロスメディアパブリッシング

 

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