書評『脱プラスチックへの挑戦』

本書はプラスチックをめぐる世界の状況やリサイクルビジネスをはじめとする世界の循環経済に向けた動きについて述べられたものである。

1章『海のプラスチックごみを回収する』では、ボイヤン・スラットという青年が海洋プラスチックごみを減らすために立ち上げたオーシャン・クリーンアッププロジェクトについて述べられている。

2章『一歩先を行く世界の取り組み』では、発泡プラスチック容器の禁止に踏み切ったニューヨークや使い捨てのレジ袋を禁止しているフランスなどを例に脱プラスチック化に向けた世界の取り組みを紹介している。国や企業が脱プラスチック化をビジネスとして活用していくことで新たな市場を獲得することができると説明している。

3章『プラスチックを検出する地質年代に生きて』では、このまま温暖化が進めば、リーマンショックや第二次世界大戦並みの経済被害を引き起こすと指摘している。そうならないためには、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5度未満に抑える必要があり、直ちに産業システムなどをパラダイムシフトしていく必要があると説明している。

4章『未来への提言』では、環境学者のヨハン・ロックストローム博士とニューヨークタイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏の温暖化に対する私見が述べられている。早ければ2030年にも気温が1.5度上昇する恐れがあり、これを食い止めるには2030年までに二酸化炭素の排出量を半減する必要があると指摘している。この10年が正念場であると訴えている。

5章『正念場の10年をどう生きるか』では、気温の1.5度上昇を避けるために残された時間は思っているよりずっと短いため、日本は直ちに行動を起こし、これから発展していくアジアでパラダイムシフトを起こすための協力やビジネスを率先して行うべきであると説明している。そしてそのためには、脱プラスチックや脱炭素の担い手となる人材育成を本気で進めていく必要があると述べられている。

脱プラスチックが世界で積極的に行われている背景を詳しく知りたいと思い本書を読んだ。プラスチックを減らすことで、海洋汚染を防ぐことだけでなく、温暖化防止にも繋がるということが分かった。日本は世界に比べてまだまだ十分な対策が取れていないため、この10年間でどれだけ進歩していけるかが問われていると感じた。今後は、脱プラスチックを積極的に行っている日本企業などを調べていきたいと思う。

堅達京子 著 山と渓谷社 202021日発行

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