書評 『事例でわかる 新・小売革命』

 本書は、より高効率な小売「ニューリテール」について述べられたものである。
 第1章『ビジネス新時代を勝ち抜くニューリテールの本質』では、小売とは、「人」と「物」をつなぐ「場所」であり、これらの効率を上げるためにはどのように新テクノロジーを利用すればよいのだろうかという問題提起を行っている。
 第2章『オンラインとオフラインを融合させるニューリテール』では、「場所」は金流、物流、情報流の多種多様な組み合わせであり、「場所」を担うオンラインとオフラインにはそれぞれ長所があると説明されている。そこで、ビッグデータの力の付与によりオフラインとオンラインを融合することこそが、ニューリテールであると述べられている。
 第3章『売場効率の限界を突破するニューリテール』では、すべての小売形態は、売上高=人流量×成約率×客単価×リピート率という公式が成り立つと解説している。「人」は小売にとっての起点であるため、人が集まる先に場所を構えて人を捕らえ、一度入った人に物を買わせるよう各変数を向上させることで、効率を上げられると説明されている。
 第4章『中間の不要なプロセスをカットして効率を上げるニューリテール』では、「物」の効率を上げるためには、物が人に届くまでの不要なプロセスをカットする「短絡経済」が有用であるとしている。短絡経済には、メーカーと小売企業の間のサプライチェーンを省くものと、オーダーメイドなどにより商品サプライチェーンを逆行するものの主に2種類があると述べられている。
 第5章『ニューリテールは今、この瞬間も進化している』では、今後、ますます多くの小売企業が企業側に立って企業のために商品を販売するのではなく、ユーザー側に立ってより良いサービスを提供する動向になるとし、未来のニューリテールを作るのは想像力次第であると締めくくっている。
 小売の実店舗にITが取り入れられている実例を知りたいと思い、この本を選んだ。本書を読み、小売が様々な要素の組み合わせで成り立っているということがわかった。ただ単に最新の技術を取り入れればよい訳ではなく、コストを考えつつオンラインとオフラインの特性を活かし、小売の各要素を効率的にする必要があると学んだ。この本は中国の小売を中心に書かれたものであったため、今後は日本の実情を調べ、可能であれば実際に「ニューリテール」を体験してみたいと思う。
劉潤 著 中信出版日本株式会社  2019年4月1日発行

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