書評 ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実

本書は日本の移民文化や移民事情を伝えるウェブマガジンの編集長を務める筆者が、「日本にも移民が存在し、取り組むべき移民問題が存在する」として問題提起したものである。第一章から第六章で構成されている。

第一章「「ナショナル」と「グローバル」の狭間」では、国家が移民を受け入れる政策に、経済の力学、民族の力学、人権の力学という3つの力学が作用するとし、現在の日本では経済がもっとも強く働いていると述べている。

第二章「「遅れてきた移民国家」の実像」では、日本が国際人口移動転換を1980年代後半に迎えてからの在日外国人の変化を、政府が公表している様々なデータを取り上げ分析している。

第三章「「いわゆる単純労働者」たち」では、在留外国人の6割を占める労働者としての外国人に焦点をあて、問題提起をしている。日本政府は、外国人労働者を「いわゆる単純労働者」と「専門的・技術的分野の外国人」に二分し、後者のみを受け入れるスタンスを取っているが、実際は前者を多く受け入れ外国人労働者の中核を担っており、矛盾が生じている。この矛盾により外国人が社会の中で「見えない存在」として扱われ、抱えている問題も見えないまま放置されていると述べている。

第四章「技能実習生はなぜ「失踪」するのか」では、技能実習生や留学生のアルバイトで発生している問題について述べている。留学生が来日する際の構造は、技能実習における受け入れの構造と似ており、そのため、労働者としての留学生が陥る問題と実習生の問題にも類似性があると指摘している。

第五章「非正規滞在者と「外国人の権利」」では、入管施設に収容されている外国人の状況を取り上げ、外国人を管理しようとするには限界があると述べている。

第六章「「特定技能」と新たな矛盾」では、入管法改正案の成立により、新たな在留資格となった「特定技能」について説明している。特定技能は技能実習の存在を前提としており、技能実習を実質的に延長するものである側面が強いため、技能実習の構造的な問題を引き継ぐ可能性があると指摘している。

外国人材について知りたいと思いこの本を読んだ。技能実習生や外国人の非正規雇用の問題などが詳しく書かれており、日本で外国人が働くにはまだ課題が多く残されていると思った。在留外国人についていままで学んでこなかったので、とても参考になった。

望月優大著 株式会社講談社 2019年3月20日発行

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