書評 SHERE シェア <共有>からビジネスを生み出す新提案 

本書は主に環境と消費の問題を交えながら、シェアリングエコノミーを解説したものである。モノを消費し続ける「ハイパー消費社会」が行き詰まりを見せ、変わる人々の意識、そこにシェア経済という追い風が吹くことで、大量消費のサイクルにストップがかかると予測している。Part1、part2、part3から構成されている。
Part1「新しいシェアが生まれるまで」では、1950年代から急速に広まった「使い捨て生活」により、大量のごみをだす現代の消費システムを問題視している。
過剰な大量消費を助長したメーカーや小売の企業の力を解説している。モノを大量に持つことイコール幸福だという考え方を消費者に植え付けてきた。
現代人が消費の「トランス」状態から目覚めつつあるという。リソースは無限ではなく、「買ったもの」をより有効に活用しようという価値観に変化した。またモノを追い求め続けるよりも、友人や家族などコミュニティを再生したいという強い思いにつながっていったとし、シェアという発想が定着したと述べる。

Part2では、「グランズウェル」では、様々なシェアの形式を紹介する中で、共有と持続可能な社会を関連付けている。社会全体で資源を分け合うことで、環境保護になると述べる。例えば、音楽のストリーミングサービスによってCDと比べ、音楽流通に伴うエネルギーの消費と二酸化炭素の排出量を約4割から8割減らせるという。また、シェア経済によって企業は複数のユーザーが何度も使いまわせるような寿命の長い商品を作るようになるかつての計画的あるいは織り込み済みの陳腐化のコンセプトを根本から覆すことになる。脱所有へシフトする消費者は自分の行動で満足感が得られる。近い将来、所有というコンセプトは限られた、古臭いものになると指摘している。
Part3「なにが起こるか?」では、消費行動の未来について述べている。シェアリングはアンチ消費者でなく、人々はこれからも「買い物」をし、企業も何かを「売る」。しかし製品は一生モノといえるほどの耐久性を増していく。しかし、新しさと変化を求めるのが消費者だ。そこで継続的に改良・修理をすることを念頭に置いた「モジュール化」(分解、組み立てが簡単にできるような仕様)された商品が増えていくと筆者は予想する。私たちが心から欲しいと思うものでなければ、モノは売れず、サステナビリティは進まないという結論にいたる。
 この本を読んで、現代の消費サイクルがいかに環境にとって負担となっているかが改めて分かった。流通する全製品の8割はリサイクルされず、モノに含まれる原材料の九十九パーセントは6週間以内に廃棄物になるという話があった。世界ではプラスチックごみを減らそうという動きがあるが、それ以前に製品の「使い捨て」文化が大きな問題であると感じた。シェアリングエコノミーにはサステナビリティという大きなメリットがあるとわかった。(レイチェル・ボッツマン/ルー・ロジャース 著 NHK出版 2010年)

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